ネット上の悪質な書き込みを削除したいのですが、どうすればいいのでしょう?

2021.03.15

現代はインターネット技術が発達し、誰でも気軽に情報を発信できるようになりました。普段関わることのないような人たちとSNSなどで出会い、交流できるのはとても意義のあることですが……。その一方で、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることも事実。警察庁が発表した資料「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、同年のサイバー犯罪に関する相談は12万6815件。そのうち、名誉毀損・誹謗中傷に関する相談は1万1406件ありました。つまり、警察が相談を受けた事案だけで、1万人以上がインターネットで誹謗中傷の被害にあっているわけです。

では、こうした状況の中で、自分がインターネットで誹謗中傷の被害に遭ってしまったら、一体どうすればいいのでしょう。

まず、知っておいて欲しいのは、ネットの書き込みは適切な手順を踏めば削除できる可能性があるということです。この手続きは、プロバイダ責任制限法のガイドラインにも定められており、「削除依頼」あるいは「送信防止措置依頼」と呼ばれます。以下では、削除依頼を行うための要件や方法、流れなどを説明していきましょう。

 

書き込みを放置すると、どんな弊害がある?


SNSや各種掲示板にネガティブな書き込みをされると、それぞれのメディアの利用者が閲覧するだけでなく、書き込まれた内容がGoogleやYahoo!などの検索エンジンにも表示されてしまいます。加えて、書き込まれた内容はインターネット環境のある場所なら、いつ、どこからでも閲覧可能に。つまり、不特定多数の人に短時間で情報が伝わってしまうため、誹謗中傷を投稿されてしまうと、次のような悪影響が出る可能性が高くなります。

法人の場合】
・ブランドイメージの低下
・消費者や取引先へのイメージダウン(売り上げの損失)
・採用活動への悪影響
など

個人の場合】
・社会的信用の低下
・仕事への悪影響(社内外における評価の低下)
・精神的なダメージ
など

 

削除依頼って何?


ネガティブな書き込みを行った人に削除を求めようとしても、「誰が書き込んだのかわからない」というケースは数多くあります。また、仮に書き込んだ人がわかっていても、その人が素直に削除してくれるとも限りません。しかし、書き込んだ人がわからない場合でも、サイト管理者やサーバ会社(ホスティングプロバイダ)などに削除を求めることで、書き込みを削除できる可能性はあります。そして、その際に必要になるのが、「削除依頼」(あるいは「送信防止措置依頼」)と呼ばれる手続きです。

ただし、削除依頼によって対処できるのは、書き込みを削除することまで。書き込んだ人物を特定し、損害賠償請求などを行う場合には、別途「発信者情報開示請求」という手続きが必要です。

発信者情報開示請求に関する記事こちらから

 

削除できるのは、どのような書き込み?


削除依頼の対象となるのは、サイトの「利用規約」に違反している場合と、具体的な権利侵害がある場合です。下に、「権利侵害があると認められる可能性がある行為」の一例を示しておくので、参考にしてください。

 

権利

権利侵害があると認められる可能性がある行為

名誉権

社会的な信用・評価を下げるような書き込み。【例】○○は不倫している、○○は前科持ちだ など

プライバシー権

個人情報や私生活の情報を暴露する書き込み。
【例】本名や住所の公開、日常の秘密の公開 など※なお、会社などの法人にはプライバシー権が認められないのが一般的です。

肖像権

撮影や公開を許可していない写真や動画の公開。【例】隠し撮り写真の公開、無断撮影された写真の公開 など

 

 

削除依頼をするための具体的な方法は?


インターネット上で誹謗中傷やプライバシー権を侵害する書き込みが行われ、その書き込みに対して削除依頼を行う場合、主な対応パターンは次の3つとなります。

 

    1. お問い合わせフォームなどからの削除依頼

サイト上に掲載されているお問い合わせフォームやメールフォームなどから削除依頼をすることができます。

こうした削除依頼は、誹謗中傷を受けた本人でも行うことができますが、書き込みを削除するかどうかの最終的な判断は、サイトの管理者に委ねられています。そして、「どの投稿が問題なのか」だけでなく、「どういった権利が侵害されているのか」や「権利が侵害されたとする理由」「それによってどういった被害を被ったのか」などの根拠を具体的に伝えないと、依頼に応じてもらえない可能性もあります。それを考えると、お問い合わせフォームなどから削除依頼をする場合でも、弁護士に代理人として対応してもらうほうが得策といえます。法的根拠を示しながら削除依頼ができる分、問題解決の確度はもちろん、早期解決の可能性も高まるでしょう。費用の目安は、1〜10万円だとお考えください。

 

    1. テレコムサービス協会の書式による削除依頼

テレコムサービス協会とは、情報通信に関わるアクセスプロバイダ、ケーブルテレビ会社、回線事業者、コンテンツプロバイダ、ホスティングプロバイダなどの幅広い事業者が会員となっている一般社団法人です。活動の一つとして、プロバイダ責任制限法関係のガイドラインの作成・公表を行っており、そのガイドラインに従ってサイトの管理者やプロバイダに削除依頼(送信防止措置依頼)をする方法もあります。その際の手順は次の通りです。

①「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」という書類を作成し、本人確認書類とともにサイト管理者やホスティングプロバイダに郵送する

※必要な本人確認書類はサイトによって異なりますので、サイトを確認してください。一般的には、個人の場合は身分証の写し、法人の場合は印鑑証明書、登記現在事項証明書の提出を求められるケースが多いようです。

 

②受け取った側が、「本当に本人からの依頼か?」を確認した後、書き込みをした人物(発
信者)に対して書き込みの削除の可否を尋ねる

③7日間以内に反論がなければ、書き込みが削除される場合がある

なお、発信者から削除に同意しないという反論があった場合には、「利用規約違反があるかどうか」「権利侵害があるかどうか」をサイトの管理者やプロバイダが判断し、「ある」といえれば削除する、という扱いになっています。

 

    1. 裁判(仮処分)での削除命令

削除依頼をしても削除に応じてもらえないときには、削除仮処分という裁判手続きを検討するのも一つの方法です。仮処分というのは裁判の一種ですが、通常の裁判よりも迅速な手続きで行われ、裁判所が申し立てにおおむね間違いがないと判断した場合は、一定額の担保金を供託することを条件に申し立てが認められます。なお、担保金が用意できなければ、決定が発令されることはなく、供託した担保金は一定の手続きを行うことで返還されます。

通常の裁判の場合、数カ月から1年以上の時間がかかるケースが多いのですが、この手続きでは一応こちらの主張が確からしいとなれば申立てが認められるので、1〜2カ月で結論が出ます。そして、裁判所から「削除せよ」という仮処分決定が出れば、多くのサイト管理者やプロバイダは削除に応じてくれます。ただし、裁判手続きである以上、法律に基づいた主張やそれを裏付ける証拠の提出も必要となるため、誰でも簡単にできるというわけではありません。仮処分での対応を検討している場合は、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。

 

削除仮処分までのおおまかな流れは?


削除の仮処分の申し立てが認められるには、次の2つの要件を満たす必要があります。

①インターネットの誹謗中傷によって、人格権(名誉権やプライバシー権など)や著作権に基づく権利侵害が起こっていること

②権利侵害が起こっていて、すぐにでも保全しないと権利の回復ができない状況にあること(すぐに消去させないと拡散の可能性があるなど)

では次に、手続きのおおまかな流れをご説明しましょう。削除の仮処分を申し立てるには、申立書を作成し、こちらの主張を裏付ける証拠とともに、管轄の裁判所に提出します。なお、削除に関する管轄は、相手方(債務者と呼びます)の住所地を管轄する地方裁判所か、自分・自社(債権者と呼びます)の住所を管轄する地方裁判所にあります。

申立書によって申し立てがなされると、裁判所で債権者と債務者の審尋が行われ、裁判官が相手方の言い分や証拠などを見ながら、申し立てを認めるかどうかを判断していきます。ここで債権者側の主張が認められれば、仮処分決定発令のために供託する担保金の金額を決定。債権者が担保金を支払ったことが確認できれば、裁判所から削除の仮処分命令が発令されます。

 

削除仮処分の申し立てにかかる期間と費用は?


仮処分での対応は法律の専門知識が求められるため、弁護士へ依頼するケースが一般的。ですので、以下では弁護士への依頼費用を含めた目安を紹介します。

  1. 期間の目安

実際に申立てを行って仮処分決定が出るまでの期間は、1〜2カ月が標準です。ただし、相手が海外法人の場合などには1~4カ月程度かかる場合もあります。

  1. 費用の目安

削除仮処分の申し立てには、裁判所の費用と担保金、弁護士への依頼費用などがかかります。金額は、裁判所の費用は印紙などの実費が5000円程度、担保金は30万円程度が必要です。弁護士への依頼費用は、弁護士によって、また量や対象によっても変わってくるためあくまで目安となりますが、25〜40万円程度とお考えください。

 

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Profile
清水陽平
法律事務所アルシエン代表
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などがある