投稿者「jonghyuk-yoon」のアーカイブ

2021.02.22

ネット中傷解決くん編集部が、相談のネット中傷トラブルの問題になりやすい事例を作成し、ネット中傷問題に詳しい弁護士に対処方法のインタビューを行い、記事にまとめました。

 

【事例】


<相談者>

ママ向けYouTubeチャンネルを運営するゆきぽんさん(22歳)は、ゲーム実況者として人気が高い「たかし」の妻であり、双子の母。子育てアイテムやおもちゃのレビュー、若いママ向けのメイクテクニックなどを紹介する「ゆきぽんのヤンママ☆ライフ」、家族のほほえましい日常をコミカルに紹介する「たか×ゆきのぴよぴよチャンネル」というYouTubeチャンネルを運営し、チャンネル登録者数は合計100万人を超えています。

先日、ゆきぽんさんは自身の動画のコメント欄で、「167」というアカウントから投稿された「ゆきぽんは、たかしがよくコラボしているYujinと不倫している」という事実無根のコメントを見つけました。

ゆきぽんさんはこれまでにも「ブス」「メイク下手」といった誹謗中傷のコメントをたくさん受けてきたため、このコメントも無視していたのですが……。167は、夫であるたかしさんのYoutubeチャンネルも含め、再生数の多い動画に次々と同様のコメントを投稿。そのため、5ちゃんねるやガールズちゃんねるなどでは、ゆきぽんさんやたかしさんについて、「クズ親すぎ」「双子の世話は実家に任せっきりでホスト通いだよ」「たかしも不倫しまくり」「動画だと仲良さそうなのにひどいね」など、噂に尾ひれがついた話題がたくさん飛び交うようになりました。

また、ゆきぽんさん夫婦は、おもちゃ会社や、子育て用品を販売する企業のPR動画を多数投稿していましたが、167によるコメント投稿が始まったころから、企業側からの依頼がほとんどこなくなり、PRに関わる収入も激減してしまいました。

167のコメント攻撃は依然続いているため、ゆきぽんさんは、イメージを損なったうえに、収入が減る原因にもなった167の身元を突き止め、法的措置をとりたいと考えています。もちろん、それが叶うのならお金や労力も惜しまない覚悟です。

 

【対処方法】


はじめに

このような相談を受けたときに、まず確認しなければならないのは、依頼者の最終目標です。ゆきぽんさんは「167の身元を突き止め、法的措置をとりたい」「お金や労力を惜しまない」というスタンスですが、登録者数100万人を超えるような有名YouTuberであるため、本件を「同様の荒らしの出現を抑止するための措置」だと考えるのも、非常に意義があることではないでしょうか。

したがって今回は、①名誉毀損行為による人格権の侵害を理由とした民事訴訟(収入減少に対する損害賠償請求も含む)および、②名誉毀損罪での刑事訴訟をゴールにしたいと考えます。

 

アカウントの所有者を特定する

167というアカウントの持ち主を特定するために、まずはYouTubeの親会社であるGoogle LLC(カリフォルニア州)に対して、情報の開示を求める手続きを行います。これには、日本の裁判所を通じて行う方法と、アメリカの裁判所を通じて行う方法があります。

 

<日本の裁判所を通じて行う場合>


Google LLCに対して、167(発信者)の直近のコメントに関するIPアドレスの開示を求める仮処分(裁判の一種。担保金を払うことで、通常の裁判よりも早く手続きができるのが特徴)をアメリカの裁判所に申し立てます。申し立てが認められて、IPアドレスが入手できれば、次はそのIPアドレスを所有するプロバイダに、アドレス所有者の契約情報開示を請求。場合によっては、ログを保存するための仮処分手続を別途行う必要があるケースもあります。。これにプロバイダ側が応じてくれれば、匿名だった発信者の身元が明らかになります。

ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたるものであり、通信の秘密に関するものでもあるため、プロバイダ側が任意に情報の開示に応じることはまずありません。そのため、裁判を通じて情報開示を求めるケースがほとんどになります。

裁判になった場合は、プロバイダ側がスムーズに要求に応じた場合でも3〜4カ月。スムーズにいかなかった場合は、年単位の時間がかかることも予想されます。ちなみに、アメリカの裁判所に仮処分の申し立てを行う場合は、●カ月ほどの期間が必要だとお考えください。

※赤字部分について、ご教示願います

 

<アメリカの裁判所を通じて行う場合>


アメリカの弁護士資格を持っている弁護士を介して、「ディスカバリー制度」を利用すれば、<日本の裁判所を通じて行う場合>よりも短期間で発信者の個人情報を入手できる可能性があります。

ディスカバリー制度というのは、アメリカの情報開示制度のことで「開示の必要性がアメリカの裁判所に認められれば、日本の裁判所を経由することなく、(訴訟を起こした先の)裁判所が管轄する企業に対して情報の開示を求められる」というもの。今回のケースでは、Google LLC本社がカリフォルニア州にあるため、カリフォルニア州の裁判所が相手となります。

 

日本では法令上、YouTubeアカウントを開設した際の個人情報を入手することはできないのですが(入手できるのはIPアドレスまで)、アメリカでは電話番号やメールアドレスも把握できるようになっているので、ディスカバリー制度を用いて、これらの情報の開示を要求するわけです。

開示の必要性が認められ、電話番号が判明したら、その後の発信者の特定にはさほど期間を要しません。弁護士会照会制度※1を活用し、弁護士会による審査が通れば、2〜3週間ほどで167というアカウントの所有者情報を入手することができます。なお、電話番号の登録がなかった場合は、メールアドレスのドメインを手がかりに、所有者の特定を行うことになります。

この方法のメリットとして挙げられるのは、まず個人特定までの時間を大きく短縮できること。そして、投稿から1年以上経つコメントでも、発信者が特定できることです。日本における発信者情報掲示請求では、プロバイダ側のログ保存期間の影響を受けるため、短い場合は3カ月でログが削除されてしまいますが、そうした縛りがなくなるわけです。

ただし、に相手がフリーアドレスを使っていたり、使い捨ての等のSIMカードを利用してアカウントを開設していたりする場合は特定が不可能なので、空振りに終わるリスクもあります。ですから、もし費用に余裕があるのなら、日本とアメリカ両方の手続きを並行して進めるやり方をおすすめします。

※1 弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた法律上の制度のこと。弁護士法第23条の2に定められています。

 

名誉毀損訴訟を起こす

発信者が特定できたら、名誉毀損について民事責任と刑事責任の両方から追求します。名誉毀損は親告罪であり、親告罪は被害者からの告訴がなければ検察は起訴できず、結果的に警察も捜査を進めることができません。その点だけ、頭に入れておいてください。

 

①民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたり、加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じての請求になります。その際、ゆきぽんさんは原告側の証人として証言台に立ち、尋問を受けることに。有名YouTuberの裁判ということで、傍聴席には一般の傍聴人やマスコミもやってくることも予想されます。そのため、心身の負担が相当なものになることは覚悟したほうがいいでしょう。

また、損害賠償は相手の支払い能力に大きく左右されるので、「求める金額が全額支払われるのが難しい場合がある」ということは頭に入れておいてください。とはいえ、「書き込みをした本人を突き止め、損害賠償命令を勝ち取った」という事実は、とても意義があること。誹謗中傷コメントの抑止としては効果的だと思います。

 

②刑事責任の追及

加害者に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などでの立件を目指します。刑事責任を追及するのは国なので、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

 

弁護士に相談する際、注意するべきこと

前述のように、プロバイダが保存するIPアドレスのログは、早くて3カ月ほどで削除されてしまいます。誹謗中傷の書き込みが見つかったら、1カ月以内を目安に弁護士に相談したほうがいいでしょう。

なお、YouTubeチャンネルに投稿されたコメントは、管理者の権限で削除することも可能ですが、削除してしまったコメントのログは取り戻せ可能性がありますませんので、絶対に削除はしないでください。法的に有利な誹謗中傷コメントを弁護士がピックアップする場合もあるので、訴訟を起こしたいアカウントの書き込み一覧などを準備してもらえると、やり取りがスムーズに進みます。

 

〈取材を終えて〉

YouTubeの大流行に伴い、グーグルに対する申し立て事例は、今後どんどん増えていくことが予想されます。中には、「アメリカの弁護士資格を持っている弁護士がまわりにいないと難しいのでは?」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の弁護士がアメリカで活動する弁護士を通じて、ディスカバリー制度を活用することも可能です。看過できない誹謗中傷にお悩みの方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

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Profile
福本哲也(ふくもと・てつや)
東京大学法学部、首都大学東京法科大学院を経て、2010年に弁護士登録。2012年より坂東総合法律事務所に入所。学生時代はサッカーに熱中。現在はゴルフとジム通いの日々を送っている。

 

 

Youtube誹謗中傷の法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決

2021.02.15

キャッシュレス決済が広く普及し、今やスマホ一つで何でも手に入る時代になりました。一方、スマホの中にはクレジットカードや銀行口座の情報など、多くの認証情報が保存されていることから、サイバー犯罪の標的となるケースが年々増加しています。中でも宅配業者や金融機関を名乗り、巧妙な手口でスマホ利用者を騙して不正アプリをインストールさせる事例が多発してます。今回は、不正アプリや偽サイトの見分け方と対策、被害にあってしまった時の対処法を解説します。

 

不正アプリとは?


スマホやタブレット型端末の中に入り込んで不正行為を働くアプリのことを指します。うっかりインストールしてしまうと、端末内に登録されている「電話番号」や「メールアドレス」「位置情報」などの情報を抜き取られたり、不正なサイトへ誘導されたりとさまざまな脅威にさらされます。

さらに不正アプリによる被害は、自分の個人情報だけでなく、家族や友人の情報漏えいにつながる可能性もあり、周囲の人まで危険に巻き込むことになります。

スマホに不正アプリが侵入してしまうケースの多くは、スマホ利用者が不正アプリだと気づが付かず、インストールしてしまうことが原因です。サイバー犯罪者は多種多様な手口で不正アプリをインストールさせます。その代表的な手口としては、以下のようなものがあげられます。

 

▼SMS(ショートメッセージ)を使った手口

「荷物をお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました。

再配達手続きはこちら http://」

などと言って宅配業者を装い偽サイトに誘導する事例が急増しています。SMS内のURLを開くと宅配業者の正規サイトそっくりの偽サイトが表示されます。うっかりクリックしてしまうと不正アプリがダウンロードされたり、電子決済サービスに必要なID、パスワードを入力させられたりします。

 

▼「偽警告」から誘導する手口

スマホ使用中、突然ポップアップが立ち上がり「ウイルスに感染しました」などの偽警告が表示されます。「ウイルスを除去するには、アプリのダウンロードが必要です」と言って不安を煽り、不正アプリのダウンロードを促してきます。アプリのダウンロードだけでなく、個人情報の入力を求めてくるタイプのものもあります。

 

▼非公式のアプリストア

有料アプリを無料で配布している非公式サイトも注意が必要です。このような非公式ストアでは、占いアプリや、ゲーム、便利ツールなど、人気コンテンツが無料で配布されています。これらのアプリを信用して誘導されるままに操作してしまうと不正アプリをダウンロードさせられ、または偽サイトに誘導される、などの手口で個人情報を騙し取られます。

 

 

不正アプリは公式サイトに紛れ込んでいることも!


不正アプリの被害にあわないためには、Google PlayやApp Storeなど、公式のアプリストアからダウンロードすることが第一ですが、ごくまれに厳しい審査をすり抜けた不正アプリが紛れ込んでいることも。実際に公式のアプリストアで、本物とそっくりな名称、アイコン、説明文が掲載され、本物と同じ金額で不正アプリが販売されていた例も報告されています。

そして不正アプリによる深刻な被害の一つにウイルスへの感染があります。感染すると個人情報だけでなく、ネットバンキングの認証情報やクレジットカード情報を騙し取られ、不正送金など甚大な被害にあう可能性も。身に覚えのない不審な取引があった場合には、速やかにクレジットカード会社や金融機関に連絡してください。

 

こんな症状があれば要注意!


・スマホの動作が遅くなる

・バッテリーの減りが異常に早く、充電に時間がかかる

・スマホ使用中に勝手に電源が切れる、再起動する

・使った記憶がないのにデータ通信量が増大する

・身に覚えのない発信履歴や、知らないアプリがインストールされている

このような症状が見られたら、ウイルスの感染を一度疑ってみることです。信頼できるウイルス対策アプリをインストールしておくことで、感染から守ることができます。感染が不安な方はときどきスマホをスキャンしてウイルスに感染しているかどうかを確認しておくとよいでしょう。

 

不正アプリの脅威から身を守るには


① インストール前にアプリの開発元の評判を確認する

② セキュリティアプリをインストールしておく

③ スマホのOSやアプリを最新の状態に保っておく

スマホにアプリを入れる際には、本当に信頼できるものか慎重に見極めた上でインストールしなくてはいけません。しかし、問題なく使用できているアプリでも、内部に不正なプログラムが隠されていて気づかないうちに被害にあってしまうこともあります。すでに個人情報を抜き取られ、課金サービスなどで悪用された場合、事態はさらに深刻です。

 

このような場合は警察、専門家へ相談を!


「身に覚えのない高額な通信料の請求」

「携帯電話のキャリア決済の不正利用」など

このように金銭的な被害が発生した時は、まず警察に被害届を提出しましょう。場合によっては事件として取り扱ってくれる可能性があります。相談する際は、サイバー犯罪を専用に扱っている相談窓口へ相談するのがよいでしょう。

都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口一覧

しかし、実際に警察が動いてくれる例は非常にまれだと言われています。さらに警察が事件として取り扱ったからといってお金が戻ってくる保証はありません。このような場合、頼りになるのがITの専門的な知識に習熟した弁護士です。「ネット中傷解決くん」には、ネットトラブルに強い弁護士が揃っています。詐欺や架空請求でお悩みの場合は一人で悩まず、まずは相談してみることをおすすめします。

 

さいごに


不正アプリの手口は年々、悪質かつ巧妙になっています。正直、素人目にはなかなか判断するのが難しく、誰もが被害にあう可能性があります。しかし、怪しいサイトは信用しない、セキュリティを強化するなど、個人でできる自衛手段も沢山あります。自分のお金や個人情報を守るためにも「自分は関係ない」なんて思わずしっかり対策しましょう。

 

不正アプリ関連のネットトラブル問題も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決

2021.02.08

インターネット上では、「匿名」で情報が公開されることも多いため、ネガティブな書き込みをされたときに、「発信者(書き込みをしている人物)がどこの誰なのか?」を知るのはとても困難です。しかし、だからといって発信者が特定できないままになれば、誹謗中傷を受けた被害者が、その責任を追求することができなくなってしまいます。

そのため、プロバイダ責任制限法では「発信者情報開示請求」という権利を定め、誹謗中傷の被害者に対して、加害者である発信者の特定を可能とする手段を規定しています。ここでは、発信者情報開示請求を行うための要件や方法、流れなどについて説明していきましょう。

 

発信者情報開示請求とは?


先に、「匿名」で発信された情報は、発信者を特定するのが難しいと書きましたが、それはユーザーの側から見た場合の話。サイト管理者やアクセスプロバイダ(インターネットへの接続サービスを提供している会社)の側には、発信者につながる情報が保管されています。そして、その情報を開示してもらえれば、発信者が誰なのかを特定できる可能性があります。このように、サイト管理者やアクセスプロバイダに対して、発信者情報の開示を請求することを「発信者情報開示請求」と呼び、その権利はプロバイダ責任制限法4条1項に規定されています。

なお、発信者情報開示請求は、発信者を特定する手続きであり、書き込みを削除するものではありません。「ネガティブな書き込みを削除したい」という場合は、別途「削除依頼」という手続きが必要になります。


削除依頼に関する記事はこちらから

 

発信者情報開示請求できるのは、どのような書き込み?


発信者情報開示請求の対象となるのは、権利侵害が明らかな場合です。下に、「権利侵害が明らかであると認められる場合」の一例を示しておくので、参考にしてください。

 

権利 権利侵害が明らかであると認められる例
名誉権 社会的な信用・評価を下げるような書き込みがなされ、なおかつ、その書き込みが下記の3つを疑わせる事情がないこと。

①公共の利害に関する事実に関わること
②もっぱら公益を図る目的であること
③書き込まれた事実が真実であること

プライバシー権 個人情報や私生活の情報を暴露する書き込みがなされ、なおかつ、その書き込みが下記の2つを疑わせる事情がないこと。

①私生活上の事実であること
②公開を正当化される事情がないこと

※なお、会社などの法人には、プライバシー権が認められないのが一般的です。

肖像権 撮影や公開を許可していない写真や動画が公開され、なおかつ、その公開が下記の2つを疑わせる事情がないこと。

①私生活上の事実であること
②公開を正当化される事情がないこと

発信者情報開示請求の手続きの流れは?


発信者情報開示請求の手続きをする際は、少なくとも、1.サイト管理者への情報開示請求、 2.アクセスプロバイダへの情報開示請求という2段階の手順を踏むことになります。

「最初からアクセスプロバイダに情報開示請求をしたほうが、話が早いのではないか?」と思われるかもしれませんが、インターネットの仕組み上、これは難しいといわざるをえません。たとえば、ある掲示板に誹謗中傷が書かれた場合、掲示板に書き込みをした人物(発信者)は、発信者が契約しているアクセスプロバイダに接続し、次に、掲示板が契約しているプロバイダに接続することで、掲示板への書き込みが可能となります。

アクセスプロバイダは通常、契約者の氏名や住所を把握していますが、掲示板に書き込んだ発信者がどのアクセスプロバイダと契約しているかは、ほかのユーザーにはわかりません。したがって、まずは掲示板のサイト管理者に対して発信者の情報(IPアドレスなど)を開示してもらう必要があります。結果として、まずはサイト管理者への情報開示請求、次にアクセスプロバイダへの情報開示請求という手順が必要となるのです。

 

  1. サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行う

前述の通り、最初に書き込みがあったサイトの管理者に、発信者の情報を開示してもらいます。ただし、サイト管理者が持っているのは、サーバにアクセスされた履歴やサイトを利用する際に登録したメールアドレス、パスワードだけなので、ここではサーバにアクセスされた履歴、つまりIPアドレスやタイムスタンプ(データを作成、更新した日時を証明するもの)などの情報の開示を求めることになります。

情報開示の請求方法には、裁判を使わない方法と裁判を使う方法があり、裁判を使わない方法では、一般的にテレコムサービス協会の「発信者情報開示請求書」という書式が使われます。この場合、書類をサイト管理者に送ることで開示請求がスタートします。

発信者情報開示請求書を受け取ったサイト管理者は、発信者に発信者情報開示請求書が届いたことを連絡し、開示に同意するか否かを2週間以内に聞き取らなくてはなりません。そして、発信者が同意すれば情報を開示、同意しなければ情報を開示しないとなります。

一方、裁判を使う方法では、仮処分という手続きを使います。仮処分というのは裁判の一種ですが、通常の裁判よりも迅速な手続きで行われ、裁判所が申し立てにおおむね間違いがないと判断した場合は、一定額の担保金を供託することを条件に申し立てが認められます(担保金が用意できなければ、決定が発令されることはなく、供託した担保金は一定の手続きを行うことで返還されます)。

通常の裁判の場合、数カ月から1年以上の時間がかかるケースが多いのですが、この手続きでは、一応こちらの主張が確からしいとなれば申立てが認められるので、1〜2カ月で結論が出るのが特徴です。

仮処分申立書を受け取ったサイト管理者は、発信者情報開示請求書と同様に、発信者に連絡を取り、開示に同意するか否かを2週間以内に聞き取らなくてはなりません。そして、発信者が同意すれば情報を開示、同意しなければ情報を開示しないとなります。しかしながら、裁判所から「仮に開示せよ」という仮処分決定が出れば、発信者の同意が得られなくても、多くのサイト管理者は開示に応じてくれます。

なお、発信者情報開示請求仮処分は、原則としてサイト管理者の所在地を管轄する地方裁判所のみが管轄裁判所となります。ただし、Twitter、Facebook、Googleなどに対して発信者情報開示請求を行う場合、相手方となるのは海外法人であるため(日本法人は日本におけるプロモーションを行っているだけで、サービスの提供主体は海外法人だからです)、最高裁判所規則により東京地方裁判所が管轄裁判所となります。

仮処分の申し立てが認められるには、次の2つの要件を満たす必要があります。

①インターネットの誹謗中傷によって、人格権(名誉権やプライバシー権など)や著作権に基づく権利侵害が明らかであること

②権利侵害が明らかであり、すぐにでも保全しないと権利の回復ができない状況にあること(すぐに消去させないと拡散の可能性があるなど)

 

  1. アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う

サイト管理者からIPアドレスなどの情報開示を受けると、アクセスプロバイダが特定できるため、次はアクセスプロバイダに対して情報の開示を求めます。アクセスプロバイダには、IPアドレスと結びついた契約者情報が保管されているため、ここで情報が開示されれば、匿名だった発信者の身元が明らかになるわけです。

ただし、アクセスプロバイダによっては、発信者情報開示請求の審議状況に関係なく、一定期間が経過するとログ(データ通信の履歴や情報の記録)を削除してしまうところもあります。そのため、この段階ではアクセスプロバイダに審議の結果が出るまでログを保存しておくように請求する必要があります。なお、アクセスプロバイダがログを保存している期間は、おおむね3~6カ月程度と考えてください。

ログの保存請求に関しては、多くのアクセスプロバイダが裁判を経なくても応じてくれるため、アクセスプロバイダに保存してもらいたい情報を指定し、そのログを保存するよう依頼するという流れが一般的です。書類の書式は任意でかまいません。

ログの保存ができた後は、発信者の情報開示請求を行います。情報開示請求の方法は、サイト管理者への開示請求と同様、裁判を使わない方法と裁判を使う方法があり、裁判を使わない方法では、テレコムサービス協会の「発信者情報開示請求書」を用います。ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたり、また通信の秘密に関するものでもあるため、この書式で請求しても、アクセスプロバイダが情報の開示に応じることはまずありません。そのため、アクセスプロバイダにプロバイダ契約者の情報を開示してもらう場合は、裁判所に発信者情報開示請求訴訟を行うケースがほとんどです。

ちなみに、アクセスプロバイダに対する開示請求が、仮処分ではなく通常の訴訟になるのは、ログ保全により投稿者の情報保全ができる以上、急いで開示を認める必要がないとみなされるからです。なお、この裁判の管轄は、原則としてアクセスプロバイダの所在地を管轄する地方裁判所のみとなります。

以上が、発信者情報開示請求のおおまかな流れとなりますが、下にここまでをまとめた図も掲載しておきますので、ぜひ参考にしてください。

 

発信者情報開示請求に必要なものは?


発信者情報開示請求をする場合は、どこにどのような書き込みがあるのかを示す必要があります。そのためには、問題の書き込みがされているサイトの保存が不可欠。もし、書き込みが消されてしまうと、内容の確認ができなくなるため開示請求が認められなくなってしまうからです。次の2点に注意しながら、証拠を保存しておくようにしましょう。

 

①問題のサイトのURLがスクリーンショット(キャプチャ)画像などから明確にわかること

②問題の書き込みがスクリーンショット(キャプチャ)画像などからきちんと確認できること

 

保存の方法は、PCで印刷するほか、スクリーンショット(キャプチャ)でも問題ありません。スクリーンショットの場合は、Windowsのパソコンであれば、Alt+PrtScr(Print Screenと表示されていることもあります)。Macであれば、Command+Shift+3で保存できるので、いずれの場合もURLが明確に表示されているようにしてください。スマートフォンにもスクリーンショット機能があるものが多いですが、スマートフォンのスクリーンショットではURLがうまく表示されない場合もあるので、注意しましょう。

 

発信者情報開示請求は自分でやれる?


発信者情報の開示請求を自分で行うことは可能です。ただ前述した通り、アクセスプロバイダが任意で情報を開示してくれることはほとんどなく、開示請求には裁判での対応が必要になります(サイト管理者が任意の開示請求に応じないこともよくあります)。また、アクセスプロバイダが保管しているログの保存期間は3~6カ月程度であるため、書き込みから時間が経ちすぎると、特定が難しくなってしまいます。

以上のことから、法律の専門知識がある弁護士に依頼して、できるだけスピーディに進めるのが得策でしょう。

 

発信者情報開示請求訴訟には、どのくらいの期間と費用がかかる?


裁判所に訴状を提出すると、訴状審査というものが行われますが、通常はこれに3〜7日かかります。訴状審査を通ると、被告(発信者)に対して訴状の送達が行われ、その時点から約1カ月後に第一回目の裁判が開かれます。その後は約1カ月ごとに裁判が開かれ、合計2〜3回行われるケースが一般的です。

費用は、弁護士によって、また量や対象によっても変わってくるためあくまで目安となりますが、25万〜40万円とお考えください。

 

発信者を特定できた後の法的手段は?


書き込みを行った人物を特定するのは「責任を追求するため」なので(中には、特定自体を目的とするケースもありますが)、発信者情報の開示を受けた後は、法的措置によって問題の解決を目指していきます。責任追及の方法は、大きくわけて2つ。民事責任の追及と刑事責任の追及です。

  1. 民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたります。損害賠償を請求する方法としては、内容証明郵便などによる裁判外の手続きと、損害賠償訴訟という裁判上の手続きがあります。

内容証明郵便とは、誰が、誰宛に、いつ、どのような形で手紙を出したのかを、日本郵便株式会社が公的に証明してくれる郵便のことで、記録が明確に残るため、何かを請求する際によく使われます。ただし、それ自体に強制力はなく、送っても無視される可能性があります。

請求を無視された場合は、相手方に対して、名誉毀損、プライバシー侵害などによる損害賠償請求訴訟を提起することになりますが、内容証明郵便は使わず、はじめから訴訟提起をしても問題ありません。訴訟を提起した後は、加害者が損害賠償の支払いに素直に応じれば示談、応じない場合は裁判を通じての請求になるでしょう。

賠償額は、おおむね100万円が上限という印象です。なお、相手の特定にかかった費用には、全額とは限らないものの相手の負担にできる場合も。たとえば、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行った場合、その弁護士費用が損害として認められます。とはいえ、相手が裁判で反論してくるケースもあれば、相手の金銭的な事情で払われないこともありますので、「必ず賠償してもらえるわけではない」ということも覚えておいてください。

  1. 刑事責任の追及

書き込んだ人物に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などで立件してもらうことを指します。刑事責任を追及するのは国の仕事であるため、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

刑事告訴をした場合、警察が自宅の捜索や取り調べといった捜査を行い、検察が起訴するかどうかを判断しますが、前科前歴がない限りは、よくて略式起訴、多くのケースでは起訴猶予(犯罪が成立しているだろうといえるものの諸般の事情を考慮して起訴をしないという判断)となることが多いでしょう。とはいえ、あくまで起訴が「猶予されているだけ」なので、同じ過ちを犯さないための抑止力にはなるはずです。

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Profile
清水陽平
法律事務所アルシエン代表
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などがある。