投稿者「島嵜直樹」のアーカイブ

2020.11.17

幼い頃からモデルや子役として活躍し、3歳からはブログを9歳からはTwitterをはじめた春名風花さん。大人顔負けのつぶやきが話題になり多くのフォロワーを獲得する一方で、ネットの世界で一躍知名度を上げた“春風ちゃん”には、多くのアンチから誹謗中傷の書き込みがされるようになる。そうしたネットの誹謗中傷を巡る春名さんの長い戦いが、今年の7月16日に異例ともいえる高額での示談という形で終結。子役時代から10年以上にわたる誹謗中傷との戦いについて、春名さんに語ってもらった。

 

警察では解決できない事件


−−春名さんは小学生の頃からSNSやネットでの誹謗中傷と戦ってこられました。そうした中で、裁判をしようと決めたことにはどのようなきっかけがあったのですか?

春名:たとえばネットの掲示板に晒されてしまった実家の住所を見て、実家や通っている小中学校の近くまで来る人がいたり。所属事務所やテレビ局、出演した劇場などにクレームの電話もたくさんあって、殺害予告や爆破予告までされたり。SNSでの誹謗中傷がどんどんエスカレートして、当時は私だけなく家族や友人、お仕事で私を起用してくれる人たちも巻き込んでしまうような、大きな実害が出ていました。もちろん母親と一緒に何度も警察に相談しましたが、「相手が特定できないので難しい」「事件になっていないので」などと言われてしまって。警察の力でも難しいんだったらどうすればいいのかと考えたときに、「弁護士さんに依頼すればいいのか」と思いついたんです。ちょうど高校生になっていじめや虐待に関する報道番組やイベントでお話する機会が増えていたときで、皆さんの前で「無料で相談に乗ってくれる弁護士さんもいますからね」と話している自分が、一度も弁護士さんに相談していないなと。そんな気づきもあって、弁護士さんを探し始めたんです。

 

−−実際に怖い思いをして警察に相談をしても解決できない。そうしたことが何度もあったのに、弁護士に相談するまでは何年もかかったわけですね。

春名:弁護士さんの存在は別世界のものでしたし、警察に行けば助けてもらえると思い込んでいました。だから警察でも解決できないと知ったときはとてもショックを受けたのを覚えています。小中学生の頃の爆破予告や殺害予告などは、本来なら事件化できるケースでもあったようですが、当時は警察の方がまだTwitterを知らなかったり、そもそもネット犯罪を扱った経験がまったくないような状態でしたから。警察のなかにはとても親身になってくれる方もいましたが、「芸能人なんてやっているからじゃない」というようなことを言われたこともありました。当時はもう警察に相談しても仕方がないという気持ちになっていましたが、そうはいっても弁護士さんに相談することへのハードルも高かった。お金もどれくらいかかるかわからないし、ネットの事件に強い弁護士さんがいるとも思っていませんでした。

 

頼りになる弁護士という存在


−−そうした状況のなかで、サイバーアーツ法律事務所の田中一哉弁護士に依頼された経緯は?

春名:当時はネット関係に強い弁護士さんの情報などが少なくて苦労しましたが、インターネットを使って自分で調べて田中先生に行き着きました。海外の企業であるTwitter社と法的に戦った実績があるうえ、それを請け負ってくれる弁護士さんは、当時は日本に数人しかおられなかったように思います。

 

−−実際に田中弁護士に相談をしてみてどうでしたか?

春名:最初はメールで連絡をさせてもらったのですが、法的に何ができて何ができないか、費用はどのくらい必要かなど、わかりやすく教えていただきました。誹謗中傷の書き込みも見てもらい、どの書き込みが侮辱罪や名誉毀損罪に該当するのかも教えてもらって。田中先生からは「裁判で勝訴しても相手に支払い能力なければ費用が無駄になることもあります。それでも進めていいですか」というお話もありましたが、「裁判をする」という強い決意と先生のお話を聞いての安心感もあり、実際に依頼することを決めました。

 

−−ネット誹謗中傷での裁判は日本ではまだ少なく、ましてや芸能人となると初めてのことだったのではないかと思います。裁判に至るまでの葛藤や、ご家族や仕事関係者など周囲の方々の反応について教えてください。

春名:もちろん葛藤はありました。仕事関係では「女優業をやりたいなら色がついてしまう裁判は避けた方がいい」とアドバイスをしてくださる方もいましたし、家族の中でも父は裁判をすることがとても心配していました。でも、被害の話をするたびにアンチの人たちから「自作自演」などと言われてくやしい思いもしてきましたし、すでにクレームの電話などで仕事にも悪い影響が出ているのだから、むしろ裁判をして被害を止める方が仕事もやりやすくなるんじゃないかなと。それに、芸能人だからって意見を言わないのが当たり前という芸能界の風潮が、やっぱりおかしいんじゃないかという気持ちもあったんです。

 

−−今回の裁判では春名さんのお母さんも原告になっておられますね。

春名:母は警察に相談するときもいつも一緒でしたし、誹謗中傷で悲しい思いをしたり、仕事のチャンスを失って悔しい思いをする私の気持ちをとてもよく理解してくれていました。裁判を起こすと言っても当時はまだ高校生でしたし、今回、訴えた人から受けていた誹謗中傷が母にも関係する内容だったこともあり、一緒に原告になってくれたんです。今回の裁判では、そんな母の後押しも大きかったですね。

社会的な意義のある示談


−−春名さんが田中先生に依頼された2018年10月から、示談が成立した2020年7月16日まで、2年近い年月がかかっています。その間に大変だったことなどはありますか?

春名:特にネット関係の訴訟はスピードが大事なこともあり、田中先生とは主にメールで打ち合わせをさせてもらいました。手続きなどもすべて先生にお任せしていたので、原告としてやることというと、同意書や陳述書などいくつかの書類を書くくらい。また、警察に相談していたときとは違い、今がどういう状況でどのように手続きや裁判が進んでいくのか、田中先生からは逐一報告もしてもらえたのでとても安心感がありました。一方で、今回の裁判では2018年の12月にTwitter社からIPアドレス等の開示を受け、それをもとに3つのプロバイダーに対して契約者情報の開示を求める訴えを起こしたのですが、その裁判にほぼ1年がかかりました。いつ終わるかわからない長い裁判の結果を、ずっと待っていなくちゃいけない。そうして過ぎていく時間については辛いものがありました。

 

−−今回の裁判では、一般的な誹謗中傷による名誉毀損の損害賠償額としては高額な315万4000円という金額での示談も話題になりました。春名さんが示談に応じられた経緯や理由について教えてください、

春名:プロバイダーから契約者情報をいただいた後、こちらからは名誉毀損と侮辱ということで、民事での損害賠償請求と刑事告訴を起こしました。実は示談の申し入れは2度あって、最初は情報開示の裁判の最中に、「お金は払いませんが住所と名前を教えるので示談にして欲しい」と。それでは反省にもなっていないしもちろんそこでは裁判を継続して。その後、刑事での裁判に進むタイミングで2度目の申し入れがあったんです。私自身としては、裁判できちんと罪を認めてもらったうえで他の被害への関与も追求したいという思いもあり、示談はしたくありませんでした。とはいえ、裁判で勝ったとしても、今の法律では名誉毀損罪(3年以下の懲役もしくは罰金50万円以下)でも侮辱罪(1日以上30日未満の勾留もしくは1000円以上1万円未満の金銭の支払い)でも相手に与えられる罰は軽く、しかも今回の相手は初犯なので不起訴になる可能性すら高かった。田中先生からも「高額な金銭という目に見える罰を与えることも大事。この示談には社会的な意味もあると思います」と言っていただき、最終的に示談に応じることを決めたんです。

 

−−確かに多くの報道がされましたし、今回の春名さんの裁判が社会的に与えた影響は大きかったと思います。春名さん自身は、周囲の人たちや社会の変化を感じていますか?

春名:今回の示談をたくさん報道してもらったことで、同じように誹謗中傷に悩むたくさんの方が、InstagramのDMなどで「勇気が出ました」といったメッセージを送ってきてくれました。私の裁判だけでなく、芸能界で悲しい事件が続いたこともあり、最近ではネットでの誹謗中傷にアクションを起こす芸能人の方も増えているように思います。一般人であろうが芸能人であろうが、誰かを誹謗中傷するのはよくないこと。「有名税」で許されるような社会が少しでも変わるきっかけをつくれたのなら、裁判をやって良かったなと思います。

 

誹謗中傷で傷ついている人へ


−−今回の春名さんのように誹謗中傷の当事者になってしまった場合、どのように対処するべきなのでしょうか。ご自身の経験を踏まえてアドバイスをいただけますか。

春名:ネットなどで誰かへの誹謗中傷を書き込んでいる人は、あまり何も考えていないのかもしれません。でも、書かれた方は本当に心を抉られるような思いをしていて、絶望的な気持ちにすらなってしまいます。今回の私の経験から言えるのは、やっぱり信頼できる弁護士さんに早めに相談した方がいいということ。解決できる可能性や道筋を示してもらうだけで安心もできますし、実際に戦うことにも大きな意味があると思うんです。今回、僕の裁判がニュースになって、多くの人に「勇気をもらった」と言ってもらったように、あなたの行動が社会を変えるきっかけになるかもしれない。おかしいと思うことにみんなが声を上げることで、法律が変わったり警察が捜査しやすくなったりということもあると思うので、ぜひ行動できる人は行動して欲しい。もちろんそうは言っても、「そんなの無理だよ」という人は「戦わない」という選択をしてもいいと思います。何よりも大切なのは、現実世界の人間関係を充実させること。私の場合は何があっても「大丈夫」と言ってくれる家族や友人、仕事仲間がいましたが、そうした存在がなければ、弁護士さんに相談する前に心が折れてしまっていたかもしれません。また、誹謗中傷を受けて自信や自己肯定感を失ってしまうと、精神的なダメージを一気に受けてしまいます。だから特に誹謗中傷などで傷ついている人は、何でもないような日常の中でも、できるだけ自分で自分のことを褒めてあげて欲しいなとも思います。

 

−−方で、ネットなどで誹謗中傷を行う側の人たちに向けてメッセージはありますか?

春名:たとえばTwitterを見ていて腹が立ったとか、誹謗中傷を書く人は反射的に書き込んでいるのだと思います。でもその向こうにいる相手は人間で、その言葉はしっかりと届いてしまう。たとえば相手が有名な人であれば、あなただけではなくて何十人、何百人という人から辛辣な言葉が届くかもしれない。そうすると実際に自ら命を断ってしまう人もいるし、逆に誹謗中傷されている側が戦おうと思えば、数百の誹謗中傷を代表する一人として訴えられることもあるわけです。だから軽い気持ちで書き込んで欲しくないし、目の前の人に言えないような言葉はSNS上でも使って欲しくないと思いますね。

 

−−最近はブログやnote、YouTubeなどを中心に情報を発信されていますが、春名さんのネットやSNSとの付き合い方はどのように変化していますか?

春名:大学進学を機にTwitterの更新を止めてみて思ったのが、これまで「かなり誤解されていたんだな」ということでした。特にYouTubeでの発信を始めてからは、これまでに持たれていた尖ったイメージとのギャップもあって、みなさん優しい目で見てくださっている気がします。Twitterは発信力や人を集める力は強いけれど、その分だけ誤解が生まれて広がっていく可能性も高くなるのかもしれません。今後は色々と変わっていくかもしれませんが、今はブログやnoteのような長い文章で伝えられるツールやYouTubeを使って、自分の活動を伝えていきたいと思っています。

 

−−最後に、今後の女優としての活動について抱負などをお聞かせいただけますか。

春名:いまは大学に通いながら、学校側に届けを出して許可を受けながら芸能活動をしています。新型コロナウイルスの影響で延期されてしまったのですが、舞台への出演も決まっていますし、今後も女優として頑張っていきたいと思っています。これまでに色々とあったことは女優人生を考えるとハンディになるかもしれませんが、海外では女優さんも当たり前のように自分の意見を口にしますし、個人の意見と作品は別物とみんなが捉えています。日本もそうなればいいなと思いますし、そのために僕の経験や行動が少しでも影響を与えられると良いなとも思います。

 

ネット中傷解決くん」で弁護士を探す。

2020.11.13

ネット中傷への対処方法にはどんなものがある?


一昔前までは、「ネットに書かれたことは消せない、無視するしかない」と言われることが多くありましたが、それは正しくありません。ネットの書き込みは適切な手順を踏めば削除できる可能性があります。また、ネットには「匿名性」があるともいわれますが、プロバイダ責任制限法と呼ばれる法律を活用すれば、誹謗中傷を書き込んだ人物を特定することも不可能ではありません。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか? まずは、書き込みを消すための「削除依頼」と、書き込みした人物を特定するための「開示請求」について、説明しましょう。

  • 書き込みを消す「削除依頼」

インターネット上に自身の権利を侵害するような情報(プライバシー侵害、名誉毀損など)があった場合には、本人もしくは代理人からサイト管理者やホスティングプロバイダ(データを保管している会社)などに対して削除の依頼をすることが可能です。この手続きは、プロバイダ責任制限法のガイドラインにも定められており、「削除依頼」あるいは「送信防止措置依頼」と呼ばれます。ちなみに、削除依頼の主な対応パターンは次の3つとなります。

 

    1. オンラインフォームなどからの削除依頼

サイトの中には、オンラインフォーム、メールフォームを準備していたり、クリックするとメールソフトが立ち上がるようになっていたりするものがありますが、その場合はオンラインフォーム、メールフォームなどから削除依頼をすることができます。

 

    1. テレコムサービス協会の書式による削除依頼

テレコムサービス協会とは、情報通信に関わるインターネットサービスプロバイダ、ケーブルテレビ会社、回線事業者、コンテンツプロバイダ、ホスティングプロバイダなどの幅広い事業者が会員となっている一般社団法人です。活動の一つとして、プロバイダ責任制限法関係のガイドラインの作成・公表を行っており、そのガイドラインに従ってサイトの管理者やプロバイダに削除依頼(送信防止措置依頼)をする方法もあります。サイトの管理者やホスティングプロバイダは、書類を受け取った後に、書き込みをした人物(発信者)に対して書き込みの削除の可否を尋ねますが、7日間以内に反論がなければ書き込みが削除されるという流れが一般的です。

 

    1. 裁判(仮処分)での削除命令

削除依頼をしても削除に応じてもらえない場合、削除仮処分という裁判手続きを検討するのも一つの方法です。仮処分というのは裁判の一種ですが、通常の裁判よりも迅速な手続きで行われ、裁判所が申し立てにおおむね間違いがないと判断した場合は、一定額の担保金を供託することを条件に申し立てが認められます。

通常の裁判では数カ月から1年以上の時間がかかることが多いですが、この手続きでは1〜2カ月で結論が出ます。ただし、裁判手続きである以上、法律に基づいた主張やそれを裏付ける証拠の提出も必要となるため、誰でも簡単にできるというわけではありません。

 

  • 書き込みした人物を特定する「開示請求」

前述したように、ネットには「匿名性」があるといわれますが、ユーザーの側から見た場合は匿名でも、サイト管理者やインターネットサービスプロバイダ(インターネットへの接続サービスを提供している会社)の側には、投稿者につながる情報が保管されています。その情報を開示してもらうことで発信者が誰なのかを特定できる可能性があります。このように、サイト管理者やインターネットサービスプロバイダに対して、発信者情報の開示を請求することを「発信者情報開示請求」と呼び、その権利はプロバイダ責任制限法4条に規定されています。

なお、発信者情報開示請求では、サイト管理者とインターネットサービスプロバイダのそれぞれに開示を求める必要があります。

 

    1. サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行う

まず、サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行いますが、サイト管理者が持っているのは、サーバにアクセスされた履歴やサイトを利用する際に登録したメールアドレス、パスワードだけです。したがって、ここではサーバにアクセスされた履歴、つまりIPアドレスやタイムスタンプといった情報の開示を求めることになります。削除依頼と同様、テレコムサービス協会のサイトには発信者情報開示請求書という書式が用意されているので、そちらを活用することも可能です。

 

    1. インターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う

サイト管理者からIPアドレスなどの情報開示を受けると、インターネットサービスプロバイダが特定できるので、次はインターネットサービスプロバイダに対して情報の開示を求めます。インターネットサービスプロバイダには、IPアドレスと結びついた契約者情報が保管されているため、ここで情報が開示されれば、匿名だった発信者の身元が明らかになるわけです。

 

ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたり、また、通信の秘密に関するものでもあるため、サイト管理者、インターネットサービスプロバイダとも、任意に情報の開示に応じることはまずありません。そのため、①サイト管理者がIPアドレスの開示に応じてくれない場合は、裁判所に仮処分の申し立てを行い、②インターネットサービスプロバイダにプロバイダ契約者の情報を開示してもらう場合は、裁判所に発信者情報開示請求訴訟を行う、といった手順が必要になるケースがほとんどです。

削除依頼や情報開示が認められるために必要なことは?


削除依頼や開示請求の対象となるのは、具体的な権利侵害(名誉権の侵害、プライバシー権の侵害、肖像権の侵害など)がある場合です。

「A社」や「Bさん」のように、名称を伏せ字やイニシャルなどにすれば権利侵害にならないともいわれることはありますが、ペンネームやビジネスネーム、源氏名であっても、「その人」だと認識できれば、削除依頼や開示請求が認められます。

 

対処する際は、弁護士に相談したほうがいい? また、そのメリットは?


削除依頼も発信者情報の開示請求も、自分で行うことは可能です。ただ前述した通り、サイト管理者やプロバイダが任意で情報を開示してくれることはほとんどなく、裁判での対応が必要になります。また、インターネットサービスプロバイダが保管しているIPアドレスなどの保存期間は3カ月程度です。書き込みから時間が経ちすぎると、特定が難しくなってしまいます。

以上のことから、法律の専門知識がある弁護士に依頼して、できるだけスピーディに進めるのが得策でしょう。なお、弁護士に依頼することのメリットとしては、次のことが挙げられます。

    1. 法的根拠に基づいた素早い対応が可能

削除申請や情報開示を行う際は、サイトの管理者やインターネットサービスプロバイダに対して、どのような理由で、どのような権利侵害にあたるかなどを正確に伝える必要があります。弁護士を介してのやりとりであれば、法的根拠を示しながら削除依頼ができるため、早期解決の可能性が高まります。

 

    1. 複雑かつ面倒な手続きを任せられる

仮処分申請をしたり、訴訟を起こしたりといったように、法的手段によって問題を解決していくケースが多いため、自分一人で対処するにはかなりの時間と労力を要します。それを考えれば、裁判所、警察署などへの複雑な手続きを任せられるのは、大きなメリットといえるでしょう。

 

    1. 何ができて、何ができないかの判断ができる

ネット中傷に対応する際の目的は、①削除を求めたい、②投稿者を突き止めたい、③投稿者に損害賠償請求したいという3つにわけられますが、「自分のケースはどの方法をとるのがいいか」「投稿者を特定できそうか」「どのくらい時間がかかりそうか」などを自分で理解・判断するのは難しいものです。弁護士に依頼・相談することで、それらが把握できるようになることも、メリットの一つといえるのではないでしょうか。

 

 

相談する場合、前もって準備しておくことは?


 特別なことは必要ありませんが、「どこに何が書かれているのか」をしっかり伝えられる準備はしておいてください。その際、該当ページのURLを用意しておくと、弁護士が被害状況を判断しやすくなるので、対応がスムーズになるでしょう。

なお、SNSで誹謗中傷があった場合、アカウント自体を消してしまう方もいますが、それをやってしまうと、被害状況が確認できないだけでなく、証拠がなくなってしまいます。「早く削除したい」という気持ちはわかりますが、必ず削除する前に相談するようにしてください。

証拠を残す場合は、PCで印刷するほか、スクリーンショットを撮る場合は、Windowsのパソコンであれば、Alt+PrtScr(Print Screenと表示されていることもあります)。Macであれば、Command+Shift+3で保存できます。いずれの場合も、URLが明確に表示されているようにしてください。スマートフォンにもスクリーンショット機能があるものが多いですが、スマートフォンのスクリーンショットではURLがうまく表示されない場合もあるので、注意しましょう。

相談から解決までのおおまかな流れは?


おおまかな流れは、次のようになります(②と③は並行して進む場合がほとんどです)。

①法律相談で状況を伝えて、解決策を探る
②弁護士からサイト管理者への削除依頼を行う
③発信者情報開示請求を行い、加害者を特定する
④法的措置をとる

①〜③についての詳細はすでに説明した通りなので、ここでは④について説明していきましょう。

書き込みを行った人物を特定するのは「責任を追求するため」なので(中には、特定自体を目的とするケースもありますが)、③で発信者情報の開示を受けた後は、法的措置によって問題の解決を目指していきます。責任追及の方法は、大きくわけて2つ。民事責任の追及と刑事責任の追及です。

    1. 民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたります。損害賠償を請求する方法としては、内容証明郵便などによる裁判外の手続きと、損害賠償訴訟という裁判上の手続きがあります。加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じての請求になるでしょう。

    1. 刑事責任の追及

書き込んだ人物に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などで立件してもらうことを指します。刑事責任を追及するのは国の仕事であるため、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

損害賠償請求が認められた場合、どのくらい賠償してもらえる?


これまでのネット誹謗中傷案件をみてみると、裁判で認められる損害賠償額は、おおむね100万円が上限という印象です。ただし、相手の特定にかかった費用については、相手の負担にできる場合も。たとえば、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行った場合、その弁護士費用が損害として認められます。

とはいえ、相手を特定できれば必ず賠償してもらえるというわけではありません。裁判で反論してくるケースもあれば、相手の金銭的な事情で払われないこともありますので、その点についても覚えておいてください。

 

弁護士への依頼費用のだいたいの相場は?


弁護士への依頼費用は、依頼先や被害の内容、サイトによって変わってきます。下に紹介した金額は、弁護士によって、また量や対象によっても変わってくるためあくまで目安と考えてください。

削除依頼の代行(裁判外)    : 1~10万円
裁判(仮処分)の申し立て    :25万〜40万円
契約者情報開示請求                :25万〜40万円
損害賠償(民事訴訟)の請求 :20万円程度


弁護士への依頼は敷居が高いと思われがちですが、中には無料相談を受け付けているところもたくさんあります。そして、相談することでネット中傷が解決できる可能性も、決して低くはありません。まずは自分が置かれている被害の状況を相談するところからはじめてみてはいかがでしょうか。
 

ネット中傷解決くん」で弁護士を探す。

——-
Profile
清水陽平
法律事務所アルシエン代表
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などがある

2020.11.13

ネット中傷解決くん編集部が、相談のネット中傷トラブルの問題になりやすい事例を作成し、ネット中傷問題に詳しい弁護士に対処方法のインタビューを行い、記事にまとめました。

<教えてくれる人>
神田知宏弁護士(小笠原六川国際総合法律事務所)

【事例】

伊藤太郎さん(仮名・53歳)が院長を務める東京都内のAクリニックでは、2020年3月頃から外来の患者数が大きく落ち込んでいました。当初は新型コロナウイルスの感染拡大の影響かと思われましたが、緊急事態宣言が解除されて街に人出が戻るようになって以降、数ヶ月が経っても患者数が戻る様子はありません。

そんなある日、クリニックで働く看護師から、「GoogleでAクリニックを検索すると酷い書き込みが表示される」と指摘がありました。早速、伊藤院長がGoogleのクチコミを確認してみると…、クリニックでは万全を期していたコロナ対策については「対策がおざなりでウイルスが蔓延している」「看護師がマスクもしていない」、さらには「やってもいない検査の代金を請求された」「Aクリニックはぼったくりだ」などと、まったくのデマが書き込まれていたのです。

来院者数が激減していた背景には、コロナの影響に加え、こうした誹謗中傷の書き込みの影響があるに違いない。そう考えた伊藤院長は、GoogleでAクリニックを検索すると表示される「Googleのクチコミ」に投稿された誹謗中傷をどうにかして削除できないか、そして今後のクリニック経営のためにも、誰がどのような目的でこのような投稿をしているのかを突き止めたいと考えています。

 

【対処方法】

対応のポイントとなるのは?


今回のケースで問題となっているのは、Googleで店舗や施設などを検索すると、検索結果とともに5つ星の評価が表示されるユーザーレビューのこと。店名などの下部に「Googleのクチコミ」と表示される文字をクリックすると、その店舗や施設などに関する口コミが表示されます。

「Googleのクチコミ」に誹謗中傷が書き込まれることは、看板に落書きをされるようなものです。評価を貶めるような不当な書き込みに悩まれるケースは特にクリニック経営者の方に多く、実際、私のもとには全国のクリニックから多くの相談が寄せられています。

今回、伊藤院長が目的としているのは、①Googleのクチコミ(誹謗中傷に該当する書き込み)の削除、②投稿者の特定の2点です。

このうち①のクチコミの削除については、Googleのオンラインフォームから削除リクエストをすることが可能ですが、リクエストをしたからといってすべてのクチコミが削除されるわけではありません。その場合は、裁判所の「削除仮処分」手続きによる削除請求という方法が有効になります。対して②の投稿者の特定についてはGoogleのフォームから請求する方法はなく、発信者情報開示請求という方法を取ります。

削除請求も発信者情報開示請求も、多くのケースでは事実無根の書き込みによる名誉権の侵害が争点となり、申立人はプロバイダや裁判所に対し、「いかにその書き込みが事実無根であり、かつ申立人の名誉を既存するものであるか」を立証できるかがポイントとなります。

 

Googleのオンラインフォームからの削除リクエスト


費用も掛からずご自身でできるため、まずはオンラインフォームからの削除リクエストを試してください。以下、その方法を簡単に説明します。

まず、クチコミ上部の「★★★★★ ○日前」という表示にマウスポインタを近づけ、その右側に表示される旗マーク「違反コンテンツを報告」(赤枠部分)をクリック。次に表示される「このクチコミの問題点」という画面で「法的問題」を選び、報告ボタンをクリックすると、「Googleからコンテンツを削除する」という画面が表示されます。ここでは「法的な問題」を選択して「リクエストを作成」ボタンをクリックすると、「法律に基づく削除に関する問題を報告する」というタイトルのフォームが表示されますので、必要項目を記入して報告を行います。

なお、「Googleマイビジネス」に登録していれば、Googleマイビジネスの管理画面からも削除請求が可能です。その場合は、まずご自身のアカウンでログインして「クチコミ」をクリック。表示されるクチコミの一覧から、対象となるクチコミを選び「不適切なクチコミとして報告」をクリックします。次に「このクチコミの問題点」という画面が表示されるので「法的問題」を選択。以下の流れは先ほど紹介した「オンラインフォームからの削除リクエスト」と同様です。

多くの相談者から体験談を聞く限り、Googleマイビジネスからの削除請求の方が格段に削除してもらえる可能性が高い印象があります。Gooleマイビジネスに登録されている場合は、ぜひそちらの管理画面からの申請を試してみてください。

削除仮処分と発信者情報仮処分


<削除仮処分の手続き>

 

Googleのオンラインフォームからリクエストしてもクチコミが削除されない場合は、削除仮処分の手続きが必要になります。削除仮処分手続きでは、医療法人の場合は本店所在地を、個人の場合は住民票の住所を管轄する地方裁判所に申し立てを行います。

申立後は、申立人の言い分を裁判所が聞く債権者面談(1、2日)が行われた後、米国Google社を呼び出したうえで審理が行われます。1、2週間おきに双方が主張と反論を繰り返し、最終的に裁判官が削除相当と考えた場合は削除決定(削除の命令)が出され、一般的なケースではそこから約2、3週間でクチコミが削除されます。なお、Googleの場合は供託手続きがあるので、削除の場合は30万円(IPアドレス開示請求は10万円)を法務局に供託する必要があります。

仮にGoogle側がまったく争わない場合、申立から2ヶ月程度でクチコミは削除されますが、実際には多くのケースで法的な争いになるため、数か月程度の期間を見ておく必要があります。

<発信者情報開示仮処分の手続き>

 

各地方裁判所で申立を行う削除仮処分に対し、Googoleに対する発信者情報開示仮処分の手続きは東京地裁でしかできません。ここではクチコミの投稿に使用されたIPアドレスの開示を求めるための申立を行い、削除仮処分と同様の審理などを経たうえで、裁判官による決定がくだされます。

IPアドレスの開示仮処分についても、最短の場合は申立から2ヶ月程度で開示されます。その後は別途、投稿者が使用しているインターネット接続プロバイダに対して投稿者の開示請求を行い、投稿者の住所や氏名の開示を求めます。

 

削除請求や発信者情報開示請求が認められるポイントは?


<書き込みが事実ではないことを立証する>


削除請求も発信者情報開示請求も、裁判所がその請求を認めるポイントについてはまったく同じです。今回の場合は、事実ではない書き込みによってクリニックの名誉が既存されているかどうか。対象となるクチコミが「事実とは異なる」という点を、裁判官に理解してもらうことが重要です。

そこで今回のAクリニックに対するクチコミを見ると、たとえば「対策がおざなり」というのは患者の感想表現と捉えられるため、事実ではないという主張は難しい部類です。一方で「看護師がマスクをしていない」というクチコミについては、院内のルールや購入したマスクの減り具合などから事実ではないことが立証できます。

また、実際にクリニックから相談されるケースが多いものが「ぼったくり」や「やってもいない検査や治療の代金を請求された」というクチコミです。とはいえ、保険診療を行うクリニックでは診療報酬は点数が決まっているため、不当な請求をすることはほぼ不可能です。裁判所でもこれらのケースはほぼ「削除相当」と判断してくれます。

<投稿者が偽物であることを立証する>


前述した通り、裁判官が「感想表現」と捉えてしまうとクチコミの削除は難しくなりますが、その場合は「クチコミを書き込んでいる人が患者を装った偽物」であることを証明できれば、削除相当の判断を得ることができます。たとえば、クチコミに書かれている内容を過去のカルテと照らし合わせ、該当する人がいなければ悪評を書き込んでいる患者の不存在は証明できる場合があります。

 

法的責任の追求および慰謝料の相場


 今回のAクリニックの場合、伊藤院長の最優先事項はクチコミの削除であり、次に重要なのは投稿者を特定することでした。投稿者がもし実際の患者であれば、Aクリニックとしても患者対応などを改善するきっかけになるかもしれませんし、仮にたとえば同業者などからの嫌がらせであれば、それなりの対策を考える必要があるからです。

伊藤院長は投稿者への損害賠償請求までは求めませんでしたが、今回の件は民事での名誉毀損「他人の権利や利益などを侵害する行為」に該当し、損害賠償を請求することもできます。

損害賠償を請求する方法としては、内容証明郵便などによる裁判外の手続きと、損害賠償訴訟という裁判上の手続きがあります。また、加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じて請求するというのが一般的な流れです。なお、裁判を起こした場合は、判決までに1年以上かかることもあります。

請求額はこちらで自由に決めることができます。しかし、たとえば今回のようなケースでクリニック側が「数千万円も売上が下がった」と主張しても、それがクチコミのせいなのかコロナのせいなのかという因果関係は立証できません。加えて、相手の支払い能力なども考慮され、慰謝料が30〜50万円、これに調査費用や弁護士費用を加算した金額に落ち着きます。

 

かかる費用はどれくらいになるのか?


今回のようなケースで弁護士に依頼した場合、削除請求のみの場合では30万円〜、開示請求と合わせて行う場合は50万円〜の費用が総額でかかると想定されます。

着手金や成功報酬の設定は法律事務所や弁護士によって異なりますが、それ以外にも弁護士の旅費や日当、さらに今回のケースでは、申立書一式の翻訳費用や、手持ちの在庫がない場合は米国Google社に関する資格証明書(登記)を取り寄せる費用なども必要になります。

特に翻訳や登記の取り寄せなどについては、この種の案件に慣れているかどうかで対応のスピードやコストが変わってきます。「少しでも早く不当な口コミを削除したい」とお考えの場合は、同じような事案の経験が豊富な弁護士への依頼をおすすめします。

ネット中傷解決くん」で弁護士を探してみる?

 

〈取材を終えて〉
Googleのクチコミに限らず、ウェブのクチコミに悩み出すとどんどん出口がなくなってしまいます。弁護士に相談して、どのような解決策があるかを聞くだけでもきっと気持ちは楽になるはず。決して一人で悩まずに、まずは気軽に弁護士に相談してみることが解決につながるかも知れません。

——-
Profile
取材協力
神田知宏(かんだ・ともひろ)
プログラマ、ITベンチャー起業を経て弁護士に転身。2007年弁護士登録、同年9月小笠原六川国際総合法律事務所に入所。同年10月弁理士登録。インターネット関連紛争を主な取り扱い案件とし、2014年の米Google社に検索結果の削除義務を認めた日本初の裁判では債権者側の代理人弁護士を務めた。「ネット検索が怖い「忘れられる権利」の現状と活用」(ポプラ新書)他、著書多数。

 

 

 

2020.11.12

スマートフォンの機能向上により、誰でも簡単に写真や動画を撮ることができるようになりました。それに伴い増えているのが、無断掲載によるトラブルや盗撮被害です。

電車やお店の中で撮影された画像や動画が、コメント付きでインターネット掲示板にアップされ炎上したケースが多発しています。今回は、肖像権侵害にあたるケースや、被害にあったときにどうすればいいかを解説していきます。

 

 

何気なくネットにアップした画像が炎上騒ぎに


先日、タレントでモデルのローラさんが、Instagramのストーリーにアップした一枚の写真がちょっとした騒ぎになりました。

「ひさしぶりの電車」とのコメントと共に投稿された写真の背景には、一般の乗客の姿が。そもそも電車内での自撮り行為自体がマナー違反なのに加え、写り込んだ乗客の顔を一切加工せず、位置情報まで表示されていました。

ローラさんのフォロワーは、世界中で約550万人と言われており、影響力の強い彼女が、一般人の顔がはっきりと写り込んでいる写真を公開したことに対して多くの批判が寄せられました。

この事例は、ローラさんの配慮が足らなかったことが原因ですが、誰もが悪意はなくても「つい」「うっかり」やってしまいがちなNG行動でもあります。しかし一枚の写真をきっかけに犯罪に巻き込まれるケースもあることから、肖像権は決して軽視されるものではありません。では、肖像権とは一体どのようなものを指すのでしょうか。

 

肖像権とは?


肖像権とは、承諾なしに自分の容姿(顔や身体など)を撮影されたり、公表されたりすることを禁止する権利です。人格権の一つとして認められています。ただ、著作権のように明確に法律で定められたものではないため、肖像権侵害にあたるかどうかの判断が難しく、肖像権侵害それ自体では犯罪行為にはなりません。

肖像権は大きく分けて、「プライバシー権」と「パブリシティ権」2つの側面があります。後者に関しては芸能人や著名人に関する事柄なので、今回は省きますが、「プライバシー権」は一般の方にも大いに関係してくるので詳しくみていきましょう。

 

▼プライバシー権

個人の私生活に関わる事柄をみだらに公開されないようにする権利です。もともとは、アメリカで「そっとしておいてもらう権利」として定義されていました。「誰が、いつ、どこで、何をしていたか」といった個人の行動情報はプライバシーに守られるべきで、第三者はむやみにそれを侵してはならないとされています。

 

▼肖像権侵害になるケースとは?

① 被害者に断りもなく写真や動画を撮影した
② 被害者の顔や身体がハッキリ写っている(本人だと特定できる)
③ ネット・SNSなど、拡散されやすい場所で公開されている
④ 公開されたことにより、被害者が精神的ダメージを被った

これらの条件が揃った時、肖像権侵害が認められる傾向にあります。しかし、肖像権は法律上に明確な規定があるわけではないので、肖像権侵害を理由に刑事罰に問うことはできません。ただ民事上の責任は発生するので、投稿者に対して差止要求や損害賠償を請求することは可能です。

 

一般人への肖像権侵害の例 ~街の人事件~


某有名ハイブランドのTシャツを着ていた女性を、ストリートスナップのカメラマンが無断で撮影、WEBサイトに掲載したことが発端となったこの事件。女性が着ていたTシャツには胸元に大きく「SEX」という文字がデザインされていました。それを見た人が掲示板に女性を揶揄するようなコメントと共に写真をアップしたところ、誹謗中傷の書き込みが殺到。被害者の女性は友人から自分の写真がネット上に掲載された上に炎上していることを聞き、運営元である日本ファッション協会等に対して抗議をしました。

問題となった写真はすぐさまWEBサイトから削除されましたが、すでにコピーされた写真が出回っており、再び炎上することとなりました。被害者女性は、肖像権やプライバシーの侵害を理由に日本ファッション協会等に対し、330万円の損害賠償を求めました。

裁判の結果、一般の『写り込み』とは異なり、被害者の全身像に焦点を絞り込んでいることや、被害者が受けた精神的苦痛を考慮し、東京地裁は肖像権の侵害を認定。損害賠償として35万円を支払うよう命じました。
東京地裁 平成16年(ワ)第18202号(「街の人」肖像権侵害事件)

この事件のように、本人が全く気づかないうちに撮影された写真が意図せぬ形で炎上してしまう例以外にも、友人が断りなくSNSなどにアップした写真をもとに、個人情報が特定されたり、ストーカー被害にあうなどトラブルに巻き込まれる例も増加しています。

 

被害にあわないためには


① 仲間内や大多数で集まる場合は、写真をアップしてほしくないことをきちんと伝える。

例えば友人がFacebookやInstagramに友人同士の写真を沢山アップしているようであれば、自分の顔が写っている写真は避けてほしいと予め伝える。

② 電車や街中などで不審な動きをしている人がいないか注意する。

不自然にスマホをこちらに向けてきたり、あやしい動きをしている人がいれば、写らない角度に移動する、顔を見せないなどの自衛策も効果的です。

しかし、写真や動画が公開されて初めて被害に気づくことが多く、未然に防ぐのは難しいのが現状です。それでは自分の画像が悪用されていたらどうすればいいのでしょうか。

 

肖像権侵害を受けた場合の対処法


▼ 削除依頼

投稿者が知人などの身近な人であれば、削除をお願いして解決する場合もあります。しかし、投稿者が不明、あるいは削除してもらえない場合は、サイトの管理者に肖像権侵害の事実を伝え、削除要請を行います。

 

▼ 弁護士に相談

任意の削除要請に応じてもらえない場合は、弁護士を通じて法的手段をとることも選択肢の一つです。肖像権侵害は、名誉を傷つけられるだけではなく、投稿された画像を元に誹謗中傷が集まるなどの二次被害につながることがあるので、速やかに削除することが必要です。

しかし、前述のとおり肖像権侵害には明確な定義がないため、どこからが侵害なのか判断が難しいのが実情です。判断に迷った場合は一人で解決するのではなく、ITやネット被害の知識、経験が抱負な弁護士に任せることが賢明と言えるでしょう。「ネット中傷解決くん」には、ネットトラブルに精通した弁護士が揃っています。投稿者を特定する「情報開示請求」や、差し止め請求、損害賠償請求など、状況に応じたアドバイスを行います。

 

さいごに


今の時代、スマホで何気なく撮影した写真1枚にも、個人につながるさまざまな情報が含まれています。ふとしたきっかけでネットにアップされた写真をもとに個人情報がバレてストーカー被害にあう恐れもあります。自分の写真がSNSなどに無断でアップされてしまった時は放置せず、経験豊かな弁護士に相談し、速やかな解決を目指しましょう!

 

 

 

2020.11.12

今、SNSなどのネット上における誹謗中傷が大きな社会問題となっています。発端となったのは、恋愛リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラー・木村花さんの死でした。木村さんのSNSには毎日、膨大な数の誹謗中傷コメントが書き込まれていたそうです。この悲しい出来事をきっかけに、ネット上で悪質な投稿をした人物を特定する「発信者情報開示請求」が注目されるようになりました。投稿者を特定することで、安易な書き込みへの抑止力や被害者の救済につながると期待されています。今回は「発信者情報開示請求」の流れから具体的な手続きまで解説していきます。

 

増え続ける、匿名による悪質な投稿


Twitter、LINE、FacebookなどのSNSの普及により、誰でも気軽に情報発信ができるようになりました。しかし、その一方で匿名による悪意ある書き込みも増加しています。

法務省発表のデータによると、2019年のインターネット上の人権侵害報告に関する事件数は1,985件、これは直近10年間の中で2番目に多い数値です。

さらに注目したいのが、その内訳です。プライバシー侵害に関する事案が1,045件、名誉毀損に関する事案が517件となっており、このふたつ全体の合計だけで全体の80%近くを占めています。

 

(※1)参考資料:法務省 報道発表資料 平成31年及び令和元年における「人権侵犯事件」の状況について

 

▼ネット上で発生した悪質な中傷の事例

これまでも度々、芸能人のプライバシーに関する内容や、悪意あるコメントなどが話題になることがありました。しかし今は、有名人に対してだけではなく、個人や企業に向けた誹謗中傷が増加の一途をたどっています。

<悪質な誹謗中傷の例>
・転職口コミサイトに自社の労働環境や待遇について、根も葉もない噂を書かれた。
・動画投稿サイトのコメント欄で荒らし行為が行われた。
・Twitterに名誉を傷つけるような書き込みや個人情報を晒された。
・不動産口コミサイトで事実無根の悪評を書かれた。

しかも、これらの投稿の多くが、匿名や架空の人物を名乗って作られる「捨て垢(=捨てアカウントの略)」を使用したもので、加害者の特定は容易ではないのが現実です。

このような個人の尊厳や、人格を侵害する投稿、企業の信用やブランドイメージを損なうような投稿を放置しておくと、さらなる被害を招くことになります。
被害を少しでも食い止めるためには、悪質な投稿を早急に削除することが大切です。

では、具体的にどのようなアクションをとればいいのでしょうか?

 

悪質な投稿を見つけたら、まずやるべきこと


 

▼ 証拠を残す(証拠保全

・該当するページの内容とURL、日付が表示される状態で印刷しておく(PDFでも可)
・誹謗中傷発言に至る流れがわかるよう、全体の流れも記録しておく。

Twitterを例にあげると、誹謗中傷投稿にはそこに至るまでの発言者のツイートや、それに対する批判ツイートなど、一連の流れがあるはずです。何故この発言が名誉棄損となるかの根拠を示すためにも、全体の流れを残しておくことが大切です。

▼ 削除請求

サービスを運営するコンテンツプロバイダのお問い合わせフォームやメールを通じて、掲載情報の停止、削除依頼が可能です。しかし、削除依頼に応じてもらえない場合は、裁判所の法的手続を利用することになります。

 

▼ 情報開示請求を行う

① サイト管理者へ開示請求(利用されたプロバイダを特定)
② プロバイダへ開示請求(加害者の身元を特定)

削除請求も、もちろん有効ではありますが、一番大切なのは、再び同じような投稿を繰り返さないこと。そのためには「発信者情報開示請求」により、投稿者を特定し、謝罪および今後一切誹謗中傷を行わないときちんと約束させることが良策と言えるでしょう。

それでは、発信者情報開示請求について、詳しく見ていきましょう。

 

「発信者情報開示請求」とは?


インターネット上で個人や企業・団体などに対して誹謗中傷を行った人物を特定するための手続きを指します。プロバイダに対して、発信者情報(住所、氏名、メールアドレス、IPアドレス、投稿日時など)の開示を求めることができます。

具体的には下記情報の開示を求めることが可能です。

1 氏名
2 住所
3 電話番号
4 メールアドレス
5 IPアドレスとポート番号
6 インターネット接続サービス利用者識別符号(i-mode IDなど)
7 SIMカード識別番号
8 タイムスタンプ

2020年8月、この項目に電話番号が追加されました。

 

▼電話番号が開示されると何が変わるの?

これまで投稿者特定のために、最低2回の裁判が必要とされていました。しかし、コンテンツプロバイダから電話番号が開示されれば、弁護士会照会という調査手段で住所や氏名が判明するため、1回の裁判で済む可能性があります。これにより、解決までの時間が短縮され、被害者の精神的負担が軽減されることが期待されています。

その他にも、IPアドレスだけでは特定に至らなかったケースでも、特定に至ることがあるなど、多くのメリットが予想されます。

 

▼「発信者情報開示請求」を行うメリット

投稿者を特定することで、示談交渉など直接やり取りすることが可能になります。しかし、交渉に応じてもらえない場合は、投稿者に対する損害賠償請求あるいは刑事告訴などの法的措置をとることになります。

また、もう一つの利点として、投稿者を特定することにより、安易な投稿が繰り返されることがなくなり、誹謗中傷の再発を防ぐことができます。

 

発信者情報開示請求の方法


▼流れ

① サイト管理者に投稿に利用されたIPアドレス等の開示を求める
② 情報の開示(非開示の場合は法的手続を取る)
③ 開示されたIP情報からプロバイダを特定
④ プロバイダに対して該当するIPを利用した人物の契約者情報の開示を求める
⑤ 情報の開示(非開示の場合は法的手続を取る)

まとめると、サイト管理者から開示してもらったIPアドレスを元にプロバイダを特定。

そこから書き込んだ人物の住所と名前を開示してもらい個人を特定します。

 

▼期間

一般的に、仮処分申請を行ってから開示に至るまで、数か月から半年程度かかると言われています。

 

▼個人で開示請求をすることは可能?

もちろん、被害者が自分で「発信者情報開示請求」を行うことも可能です。しかし、前述したとおり、手順が複雑かつ法律の知識が必要であることや、裁判になるケースが多いことから、弁護士へ依頼することをおすすめします。

さらに、「発信者情報開示請求」の手続きの中で、もっともネックとなるのがプロバイダのログ保存期間です。多くが3か月程度と言われており、証拠が消えてしまう可能性があるのでスピード感をもって対応しなくてはいけません。

スピード感をもって対応するには、ITやネット被害の知識、経験が抱負な弁護士に任せることが賢明と言えるでしょう。「ネット中傷解決くん」には、ネット上の誹謗中傷や名誉棄損トラブルに強い弁護士が揃っているので、相談から解決までスピーディーかつ親身になってサポートします。

さいごに


ネットの書き込みでも、名誉毀損罪や侮辱罪に当たると判断されれば、刑事罰の対象になります。加害者にとってはストレス発散や単なる暇つぶし感覚かもしれませんが、被害者にとっては耐えられないほどの精神的苦痛が伴います。心無い誹謗中傷に屈することなく、しっかり立ち向かいましょう!

 

【引用元資料】
(※1)法務省 報道発表資料 平成31年及び令和元年における「人権侵犯事件」の状況について

 

2020.11.12

今や、ネットニュースなどで「炎上」の文字を見ない日はないと言ってもいいほど、日常的なものとなっている炎上トラブル。SNSやブログでの発言をきっかけに、非難や批判が殺到し収拾がつかなくなる事例が後を絶ちません。炎上には、自分に非がある場合と、そうでない場合の2つのケースがあり、前者であれば素直に謝罪すべきですが、問題なのは自分に非がないにも関わらず、悪意ある人物から執拗に絡まれるパターン。今回は、炎上を招かないコツや、巻き込まれてしまった場合の対処法などを解説していきます。

 

個人や企業の情報発信に欠かせないSNS


企業の副業解禁の流れもあり、“個人で稼ぐ”ことが珍しいことではなくなってきました。ビジネスパーソンのみならず、学生や主婦まで、SNSを使って「セルフブランディング」をする人が増えています。今や、インスタグラマーやYouTuberだけではなく、一般人でも、スマホ一つで数千人のフォロワーに向けて情報発信することができる時代なのです。

このように、ファンづくりや情報発信にはかかせないSNSですが、ちょっとしたことで炎上を招く危険もあり、SNSのメリットとリスクは表裏一体と言えます。

 

▼国内における炎上発生件数の推移

日本国内での炎上発生件数はモバイルとSNSが普及し始めた2011年を境に急激に増加しており、個人・企業問わず炎上の対象となっています。


(※1)参考資料:令和元年版 情報通信白書(総務省)デジタル経済の中でのコミュニケーションとメディア

▼ 「悪意ある投稿」を行う人の心理とは

情報処理推進機構(IPA)が2019年に発表したデータによると、悪意のある投稿をしたことがあるか、という問いに対して、約2割の人がなんらかの形で「ある」と答えています。最も多いのが「他人や企業の悪口」、次いで「他人の発言を非難する内容」「さげすんだり、けなしたりする内容」が続きました。

投稿した理由については、「人の投稿やコメントを見て不快になったから」が最も多く、「人の意見に反論したかったから」「人の意見を非難・批評するため」もそれぞれ3割近くを占めました。

(※2)参考資料:2019年度 情報セキュリティの論理に対する意識調査(独立行政法人 情報処理推進機構(IPA))

 

さらに、悪意ある投稿をした後の感情については、「気が済んだ、すっとした」「小気味良かった」という自己中心的な回答が合わせて5割弱を占めていたのに対し、「やらなければよかった」「もやもやとした気持ちが残った」という後悔の念を感じた人はたったの3割でした。

リアルの世界では面と向かって討論や批評することが出来なくても、ネットの世界では顔が見えないことから、一方的に攻撃的な発言をしてしまうことが多いようです。

ストレス発散や、間違った正義感から悪質な投稿を繰り返すケースもあり、中には、わざわざ炎上ネタを探し、煽るようなコメントを積極的に書き込んでいる人もいます。

 

本人の意図せぬ形で、SNSが炎上してしまうことも


▼ハッシュタグで炎上

今年5月、「#検察庁法改正案に抗議します」とツイートしたきゃりーぱみゅぱみゅさんの投稿が炎上しました。

検察官の定年延長を可能にするこの法案への抗議ツイートは、政治家だけではなく、芸能人や映画監督、アーティストなど多くの著名人にも広がり、瞬く間に500万件近くツイートされました。中でも、きゃりーさんの投稿には賛同する声の一方で、「幻滅しました」「政治的なことツイートして欲しくない」といった否定的なコメントが多く寄せられコメント欄が一時大荒れに。投稿はすぐに削除され、翌日きゃりーさんは今回のツイートに関しての謝罪と説明を行いました。

ツイッターのフォロワー数が500万人を超えるきゃりーさん。彼女の発言に対する影響力の高さを痛感するとともに、ネット上の発言の怖さが見て取れるケースだと言えます。このように本人の意図とは関係なく炎上してしまうケースも多々発生しています。

 

▼ブログの投稿をきっかけに炎上

さらに深刻なネット炎上のケースとして、元AKB48のメンバーで今は実業家として成功している、川崎希さんへの誹謗中傷被害があります。

長年に亘り、主婦向けコミュニティの掲示板に、川崎さん本人や家族に対して執拗な嫌がらせの書き込みがありました。誹謗中傷だけではなく、プライバシーの侵害に及ぶものもあり、家族の安全を脅かすような内容へとエスカレートしていったことから、弁護士を通じて発信者情報開示請求を行いました。

その結果、悪質な投稿を繰り返していた女性二人を特定。侮辱罪で書類送検しましたが、二人とも容疑を認め反省していることから刑事告訴は取り下げたそうです。

現在は書き込みのあったスレッドも完全に閉鎖されましたが、これらの誹謗中傷による被害は約3年にもおよび、川崎さんは相当な精神的ダメージを受けました。中には、一人の人物が複数のアカウントから書き込んだ事例もあり、嫌がらせ投稿がほぼ日課のようになっていたそうです。

これらの発端となったのは、川崎さんのブログ。家族のことや自身がプロデュースする商品の情報などを発信していました。その華やかで幸せそうな暮らしぶりへの嫉妬から、このような行動に至ったのではと言われています。

ブログやSNSはファンとの交流を深めるために欠かせない場ですが、有名になればなるほど、アンチが増えるというジレンマもあります。

誰もが自由に発言できる場所だからこそ、発信の仕方には細心の注意を払わなくてはなりません。では具体的にはどのような点に気を付けなくてはいけないのでしょうか。

 

誹謗中傷に合わないためのSNS発信のコツ


ネット=不特定多数の人々がいる場では、第三者が見て不快に感じる可能性のある投稿は避けましょう。具体的には

① 差別発言や性的な発言は避ける
② 誰かを批判するような内容は書かない
③ ネガティブな表現は出来るだけ避ける
④ 写真をアップする時には、内容に問題がないか事前に確認する

加えて、「上から目線」と誤解されるような発言や行動は炎上につながりやすいと言われています。いたずらに炎上を招かないために、ネット=公共の場ということを意識した発言を心掛けましょう。

▼それでも、炎上してしまったら

自分に非がある場合

発言の内容を再度確認し、少しでも自分に非があると感じた場合は、下手に言い訳やごまかしをせず、問題となった投稿の至らなかった部分とそれに対する謝罪を行います。間違っても相手に反論したり、批判してはいけません。火に油を注ぐ結果となってしまいます。出来るだけ速やかに事を納めることを優先させましょう。

 

自分に非がない場合(炎上に巻き込まれた場合)

それでもなお炎上が収まらない、もしくは自分には全く非がないにもかかわらず、攻撃してくるようであれば、弁護士を通じて「発信者情報開示請求」の手続きを行うのが良策でしょう。(※発信者情報開示請求の手続きについてはコチラをご覧ください)

一度、炎上が始まってしまうと、最初は一人だった投稿者が便乗によりどんどん増えていき、手がつけられない結果に。炎上を少しでも早く鎮火させるには、ITやネット被害の知識、経験が抱負な弁護士に任せることが賢明と言えるでしょう。「ネット中傷解決くん」には、ネット上の誹謗中傷や名誉棄損トラブルに強い弁護士が揃っているので、相談から解決までスピーディーかつ親身になってサポートします。

さいごに


毎日のようにどこかしらで起こる炎上被害ですが、その原因のほとんどが「些細なこと」だったりします。炎上被害はSNSを使用する人にとって、もはや「対岸の火事」ではないと言えるでしょう。まずは自分で炎上しないよう対策をとることが重要ですが、自分に非がなくても炎上してしまう“巻き込まれ被害”にあってしまった場合は、泣き寝入りすることなく、法律に則ってしっかり戦いましょう!

 

 

【引用元資料】
(※1)令和元年版 情報通信白書(総務省)デジタル経済の中でのコミュニケーションとメディア

(※2)2019年度 情報セキュリティの論理に対する意識調査(独立行政法人 情報処理推進機構(IPA))

 

 

 

2020.11.11

2019年11月、K-POPグループ『KARA』の元メンバーで歌手のク・ハラさんが自宅で亡くなっているのが発見されました。元交際相手からのリベンジポルノに悩んでいたとの報道もあり、リベンジポルノの怖さが再認識されるきっかけになりました。周りに知られたくないという女性の心理につけ込み、最悪の場合、被害者を自殺にまで追い込むリベンジポルノ。もし被害に合ってしまった場合、どのように対応していけばよいのか解説していきます。

 

リベンジポルノとは


元交際相手や元配偶者が別れた腹いせとして、相手のわいせつな写真や動画を無断でインターネット上に公開する行為を指します。リベンジポルノという言葉が一般的になったのは2013年に起きた三鷹ストーカー殺人事件。ニュース・ワイドショーでも連日報道されていたことが記憶に新しいかと思います。この事件が社会問題化したことから翌年11月、リベンジポルノ防止法(※正式名称「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律案」)が成立しました。

リベンジポルノによる被害は、年々増加しています。2019年に警察庁に寄せられた相談件数は、1479件と過去最多を更新(※1参照)。中でも女性からの相談が9割を占めます。年代別で見ると10代~20代が過半数を占める結果に。ここで注目すべきなのが被害者と加害者の関係です。


(※1) 参考資料:警視庁 令和元年におけるストーカー事案及び 配偶者からの暴力事案等への対応状況について

 

一番多いのは交際相手(元交際相手を含む)からの被害でしたが、友人・知人によるものも約2割を占めています。

IPAが13 歳以上の男女を対象に行った調査(※2参照)によると、面識のある友人・知人に自分の性的画像を送ったことのある割合が10代~20代で約1割、さらにSNS 上だけの知り合いに共有する傾向は 10代女子、20代男子で多くみられました。

これらの背景には、SNS(Facebook、Twitter、Instagramなど)の普及があります。若い世代を中心に、私的な画像のやり取りや、ネット上にアップロードすることへの抵抗が少なくなったことが関係していると思われます。


(※2) 参考資料:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)情報セキュリティの倫理と脅威に対する意識調査 2019年度版

 

リベンジポルノの目的とは?


リベンジポルノには、大きく分けて2つあります。
いくつか事例とともに見ていきましょう。

パターン1

別れた配偶者や交際相手にふられた腹いせとして、リベンジ(復讐)するケース。写真や動画をネタに復縁を迫るなど、脅迫行為に発展することもあります。

—————–

鳥取県に住む男性Aは、元交際相手の女性に「写真ばらまき後悔させてやる」などと連絡。その後Twitterに、被害者裸の写真を10回にわたり投稿した罪で懲役2年6月、執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を受けました。犯行の理由として「女性に復縁を求めるメールを送ったが、返事がなかったので恨んだ」と供述しています。
(※3)【引用:「リベンジポルノ」39歳男に有罪判決 ネット使用で初 – 産経ニュース】

—————–

 

パターン2

さらに悪質なのが最初から販売することを目的とするケース。SNSなどで知り合った女性の猥褻な画像を販売し利益をえるというものです。

—————–

2019年、出会い系アプリで知り合った女性とのわいせつ動画を同意なしで撮影し、販売していた男が逮捕されました。容疑者はインターネット上の動画サイトにわいせつ動画を約200本投稿。マニアの間で人気を博し、約6年間で8800万円を荒稼ぎし、30人以上の女性が被害を受けたとされています。
(※4)【引用: 女性のわいせつ動画公開疑い、30歳男逮捕 兵庫県警 – 産経ニュース】

—————–

 

◆リベンジポルノの被害に合わないために

 

どちらの例も加害者の身勝手な理由によるもので、誰にでも降りかかる可能性があります。リベンジポルノの被害に合わない為に、何よりも有効な回避策・解決策は性的な画像を“撮影させない”“送らない”こと。「裸の写真撮らせて」、「エッチな動画送って」と言われたら、相手が誰であっても「嫌だ」ときっぱり断る姿勢が大切です。相手が同意なく撮影を始めた場合も同様です。

また恋愛や夫婦関係にある場合は、別れ際の対応にも注意が必要です。最近はLINEなどで一方的に「別れよう」と言って関係を断つことが多いようですが、それでは相手が納得しません。お互い別れた後も気持ちよく前に進むために、きちんと話し合うこと。そしてお互いにとってマイナスとなる写真や動画はその場で削除すること。後々のトラブルに発展しないよう別れ際こそ誠実に、が鉄則です。

しかし、スムーズに関係を清算できないケースも多々あります。そのような場合どうすればよいのでしょうか。リベンジポルノのリスクや対処方法についても見ていきます。

リベンジポルノの怖さ


 

◆ 消したくでも消せない“デジタルタトゥー”

カップルであれば愛の証として、またはその場の雰囲気に流されて撮影してしまうこともめずらしくありません。しかし、軽い気持ちで撮影した写真や動画が、後々自分の人生をおびやかすことになるのがリベンジポルノの怖さです。

一度インターネット上にアップされると瞬く間に広がり、永久に残り続ける“デジタルタトゥー”。画像を見た人がそれを自分のPCに保存、または別のサイトにアップするなど、自分の知らないところでどんどん広まっていきます。ひどい例になると海外のサーバーにアップされ簡単に削除できないことも。

「学校や職場で噂になったら」「将来子どもに見られたら」

被害者は自分の性的映像を「誰かがこれを見るかもしれない」という恐怖の中で過ごすことになります。常に誰かが自分の噂話をしているのでは?と疑心暗鬼になり学校や会社に行けなくなる例も報告されています。

 

◆   精神的ダメージから心身のバランスを崩すことも

リベンジポルノが被害者にとって大きな精神的ダメージを与える理由の一つとして、元恋人や配偶者、友人など一度は信頼した人によるものだということ。信頼していた人から裏切られたという事実は心に大きなダメージを与えます。

さらに深刻なのが、リベンジポルノの二次被害として、被害者が責められるケース。「そんな写真を撮らせた方が悪い」「自己責任だ」という心ない言葉をかける人もいます。冒頭で触れたク・ハラさんもネット中傷などで心を病み最悪のケースを引き起こしました。

被害者に多大な精神的苦痛を与え続けるリベンジポルノ。しかしながら法律によって加害者に与えられる刑は、たった「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」でしかありません。しかも、ほとんどが執行猶予付きの判決というのが現状です。

被害者が受けた心の傷の大きさとは、比べ物にならないと言えるでしょう。

リベンジポルノにあったら


リベンジポルノは画像・動画が流出する前と後では、状況が大きく異なります。流出前であれば、加害者はそのネタを元に復縁を迫る、または金銭を要求してくるケースが後を絶ちません。これはれっきとした脅迫罪にあたりますので警察に相談しましょう。

流出後であれば、これ以上被害が大きくならないよう早急に画像・動画を削除することが必要です。サイトの運営会社や無料のセーフラインに削除依頼をかけることも可能ですが、一旦削除されたとしても、相手の手元にまだ画像が残っていた場合、再びアップされる危険性があります。さらに最悪な例として、知らぬ間に他サイトに転載されていようものなら個人では手の施しようがありません。

そこで心に留めておいてほしいことが、

◆   決して、一人で抱え込まないこと

SNSやインターネットで画像が公開された場合、はずかしい、誰にも知られたくないという心理から自分一人で何とかしようと思いがちです。誰にも言い出せず泣き寝入りしてしまうケースや、金銭を要求されるなど泥沼にはまってしまうことも少なくありません。そのような事態になる前に、誰か信頼できる人に相談することが必要です。しかし、身近な人であればあるほど、相談しにくいという心理が働くのも事実です。では、誰に相談すればいいのでしょうか。

 

◆   信頼して任せることができる相談相手=弁護士を見つけること

リベンジポルノは、相手から別れを言い出された、または交際を断られたことを逆恨みした犯行です。加害者は相手に精神的ダメージや社会的打撃を与えることを目的としています。ただでさえ自分に悪意をもっている加害者相手に一人で闘うのは大変危険な行為と言えるでしょう。
警察や専門の団体に相談することも有効ではありますが、スピード感や根本的な解決という点においては弁護士に相談するのも一つの案です。弁護士であれば、画像・動画の公開・拡散を防ぐ為の加害者交渉から、訴訟などの法的手続きまで全て任せることができるので安心です。

しかし、弁護士と言ってもそれぞれ専門分野があり、リベンジポルノやネットの誹謗中傷に無知な弁護士だと適切なアドバイスを受けることができない場合も。経歴や資格だけ見て決めるのではなく、ちゃんと専門分野や人柄を見て選ぶことが重要です。例えば、
「ネット中傷解決くん」など、SNSやインターネット上のトラブル解決に強い弁護士が揃っているサービスを上手く活用して、早期対応&スピード解決できる体制を整えることが大切です。

さいごに


リベンジポルノで一番辛い思いをしているのは、被害者。相手を訴えるためとは言え、第三者に被害状況を事細かく伝えることは、想像以上に辛いものです。だからこそ被害者に寄り添い、一緒に解決へと導いてくれる存在が必要なのです。

「ネット中傷解決くん」には、被害者の絶対的な味方となり、共に戦ってくれるいわばパートナー的存在の弁護士が集結しています。悩みを克服し、一日でも早く笑顔を取り戻していただくことが私たちの願い。リベンジポルノの被害でお困りの方は、どうか一人で悩まずにご相談ください。

 

【引用元資料】
※1警視庁 令和元年におけるストーカー事案及び 配偶者からの暴力事案等への対応状況について

※2IPA(独立行政法人情報処理推進機構)情報セキュリティの倫理と脅威に対する意識調査 2019年度版

※3産経ニュース

※4産経ニュース

 

 

 

 

2020.11.11

ネット中傷解決くん編集部が、相談のネット中傷トラブルの問題になりやすい事例を作成し、ネット中傷問題に詳しい弁護士に対処方法のインタビューを行い、記事にまとめました。

<教えてくれる人>
清水陽平先生(法律事務所アルシエン)

 

【事例】

東京都在住の山田陽子さん(32歳)は、都内のスーパーマーケット「青葉マート」でレジ打ちのパートを始めました。研修中でまだ作業に慣れない中、一生懸命業務に当たっていましたが、客としてやってきた50代の女性に「レジ打ちが遅い」「このご時世に、お釣りを手渡しするなんて失礼」と様々なクレームを入れられました。

最初は我慢していた山田さんでしたが、あまりにクレームが長かったため、つい小さく舌打ちをしてしまい、それを聞いた女性は激昂。山田さんは平謝りをしましたが客の怒りは収まらず、店長の木村浩二さん(45歳)が対応しても怒りがエスカレートするばかり。しまいには「土下座をしろ」と言い出し、山田さんと木村さんが土下座した様子をビデオに録り始めました。

すると同日の夜、山田さんは友人より「あなたがTwitterで攻撃されている」と連絡を受けました(山田さんはTwitterを利用したことがありません)。「mikaチャン.*☆」というアカウントが「青葉マートのパートの山田陽子(32)と店長の木村浩二(45)、客に対して最悪の対応。土下座させた」と画像を添えて投稿。その後も「青葉マートのパートの山田陽子と店長の木村浩二は不倫している」「山田陽子の子供は東小学校2年生。盗癖があっていつもいじめられている」など事実無根の投稿を次々と投稿し、山田さんとその家族は、周囲から冷たい目で見られるようになりました。

山田さんは、なんとかして「mikaチャン.*☆」の身元を特定し、投稿を削除させたうえで、事実無根の投稿に対する法的措置がとれないかと考えています。

 

【対処方法】


対応のポイントとなるのは?


はじめに、山田陽子さんが上記の事例に対応する際、どのような点がポイントになるかを見てみましょう。

山田さんが目的としているのは、①投稿の削除、②投稿者の特定、③投稿者への損害賠償請求の3点。このうち、他者の投稿に対する「削除依頼」と、投稿者を特定するための「発信者情報開示請求」については、依頼者の権利が侵害されていることが必要になります。このケースの場合、山田さんは不倫をしているという事実無根の内容が書かれているため名誉権を侵害されていると考えることができ、削除依頼、発信者情報開示請求ともに行うことができます。

また、名誉毀損罪にあたる余地もあり、刑事事件として告訴する余地もあります。

Twitterの投稿を削除する


誹謗中傷に関連する投稿の削除依頼を行うとともに、「mikaチャン.*☆」というアカウントの持ち主を特定するためには、まずアメリカのカリフォルニア州に本社を置くTwitter Inc.に対してアクションを起こす必要があります(日本法人は日本でのプロモーション活動を行う目的で設置されており、投稿に関する管理権がないため法的対応ができません)。

なお、削除依頼、発信者情報開示請求を行う際のおおまかな流れは、次の通りです。

 

<削除請求>


①お住まいの都道府県の地方裁判所に、Twitter Inc.に対する「仮処分」という裁判手続の申立てを行います。

②申立て内容が一応認める余地があるとなれば、Twitter Inc.を呼び出して審理を行うことになります。この際、Twitter Inc.からの反論も踏まえても、削除が相当であると裁判所が判断すれば、「仮処分決定」が発令されることになります。仮処分決定が発令されれば、Twitter Inc.が「mikaチャン.*☆」の投稿の中から、誹謗中傷に関する投稿を削除してくれます。 

<発信者情報開示請求>


①東京地方裁判所に、Twitter Inc.に対する発信者情報の開示を求める「仮処分」という裁判手続の申立てを行い、投稿者のIPアドレスとタイムスタンプ(サーバ接続時間)の開示請求を行います。

②申立て内容が一応認める余地があるとなれば、Twitter Inc.を呼び出して審理を行うことになります。この際、Twitter Inc.からの反論も踏まえても、削除が相当であると裁判所が判断すれば、「仮処分決定」が発令されることになります。仮処分決定が発令されれば、2〜3週間程度でTwitter Inc.から「mikaチャン.*☆」のIPアドレスとタイムスタンプが開示されます。

この事例では、山田さんのお住まいが東京都であるため、情報開示請求、削除依頼ともに東京地裁に申し立てることができました。しかし、東京以外の道府県にお住まいの方の場合は、削除依頼は在住する道府県の地方裁判所に申し立てを行い、開示請求は東京地方裁判所に申し立てを行うことが必要になるため、ご注意ください。

 

投稿者の個人情報を手に入れる


IPアドレスが開示されると、インターネットサービスプロバイダ(インターネットに接続するためのサービスを提供する会社)が特定できるので、該当するインターネットサービスプロバイダに対して「mikaチャン.*☆」の情報開示請求を行います。

ただし残念ながら、通信から特定される情報は通信の秘密に該当する情報であり、安易に開示すると犯罪行為になってしまうため、発信者の同意がある場合を除き、インターネットサービスプロバイダが任意に開示に応じることはほぼありません。そのため、多くの場合は裁判所を通じて発信者情報開示請求訴訟を行い、裁判所からの命令という形で情報開示に対応してもらうことになります。

裁判にかかる日程は内容によってまちまちですが、こちらの訴えから裁判に入るまでに約2ヵ月、判決が出るまでに約5ヵ月かかると想定していただければと思います。

 

法的措置によって問題の解決を目指す


投稿者が特定できた後は、法的措置によって問題の解決を目指します。責任追及の方法は、大きくわけて2つあります。民事責任の追及と刑事責任の追及です。この事例における名誉毀損は民事責任と刑事責任の両方から追求することが可能なので、それぞれの手続きや賠償額などについて解説していきましょう。

 

<民事責任の追及>


民事での名誉毀損は、民法で規定された「他人の権利や利益などを侵害する行為」に適用され、損害賠償を請求することができます。

損害賠償を請求する方法としては、内容証明郵便などによる裁判外の手続きと、損害賠償訴訟という裁判上の手続きがありますが、加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じて請求するというのが一般的な流れです。なお、裁判を起こした場合は、判決までに3ヵ月から半年ほどの時間がかかると考えておいてください。

請求額はこちらで自由に決めることができますが、相手の支払い能力なども考慮されるため、慰謝料が3〜60万円、調査費用と弁護士費用を合わせて、だいたい60〜100万円弱に落ち着くことが多いです。

<刑事責任の追及>


この事例を刑法に照らし合わせると、刑法第230条1項に規定された「故意に公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」にあたります。

この場合は、警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになりますが、告訴状を持って警察署に行ってもすぐに対応してもらえないなど、時間と手間がかかる作業になるため、手続きについては弁護士に依頼することをおすすめします。

もしご自身で対応したいという際は、お住まいの地域を管轄する警察署の刑事課に電話して、「ネットで中傷を受けている。相手の特定はできている」と伝えてください。刑事課の担当者につながり、対応してくれます。

どのくらいのスピードで手続きが進むかについては、警察署の忙しさなどによってまちまちですが、ファーストコンタクトから実際の捜査が始まるまでに、相当のタイムラグが生じることも事実。事件性の有無を慎重に調べる必要があることから、数ヵ月から1年単位で待たされることも少なくはありません。

捜査の末、「mikaチャン.*☆」が起訴される場合、名誉毀損罪の法定刑は3年以下の懲役、もしくは禁錮または50万円以下の罰金刑となっていますが、初犯の場合は起訴猶予になることが多く、起訴されるとしても略式起訴(=罰金刑)になる可能性が高いでしょう。

 

かかる費用はどれくらいになるのか?


ここまでで紹介したことのすべてを弁護士に依頼した場合、総額でかかる費用は100万円強になると想定されます。

内訳を紹介すると、まずTwitterとプロバイダに対する開示請求がそれぞれ35〜40万円。Twitterの場合、海外であるためどうしても費用が高額になってしまいますが(FacebookやInstagram、Googleも同様です)、国内企業が運営するサイトやサービスであれば、もう少し費用を抑えることはできます。これに加えて、損害賠償請求や刑事告訴にかかる手続き費用は、着手金だけで各20万円ほどかかります。

ただし、弁護士によって値段設定は異なるので、ここで紹介した数字はあくまで参考程度にとどめていただければと思います。

 

ネット中傷解決くん」で弁護士を探す。

 

〈取材を終えて〉
このように、ネット中傷に関わる実際の手続きには時間もお金もかかりますが、だからといって深刻な状況をそのままにしておくわけにもいきません。弁護士事務所の中には無料相談を実施しているところもたくさんありますので、「なにはともあれ相談」からはじめてみるのもいいのではないでしょうか。

——-
Profile
清水陽平(しみず・ようへい)
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。インターネットにおける誹謗中傷や炎上への対応を得意分野としており、ツイッターとフェイスブックに対し、それぞれ日本初となる事案を担当した。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル(弘文堂)」などがある。