YouTubeの誹謗中傷に対する対処法は?

2021.02.22

ネット中傷解決くん編集部が、相談のネット中傷トラブルの問題になりやすい事例を作成し、ネット中傷問題に詳しい弁護士に対処方法のインタビューを行い、記事にまとめました。

 

【事例】

<相談者>

ママ向けYouTubeチャンネルを運営するゆきぽんさん(22歳)は、ゲーム実況者として人気が高い「たかし」の妻であり、双子の母。子育てアイテムやおもちゃのレビュー、若いママ向けのメイクテクニックなどを紹介する「ゆきぽんのヤンママ☆ライフ」、家族のほほえましい日常をコミカルに紹介する「たか×ゆきのぴよぴよチャンネル」というYouTubeチャンネルを運営し、チャンネル登録者数は合計100万人を超えています。

先日、ゆきぽんさんは自身の動画のコメント欄で、「167」というアカウントから投稿された「ゆきぽんは、たかしがよくコラボしているYujinと不倫している」という事実無根のコメントを見つけました。

ゆきぽんさんはこれまでにも「ブス」「メイク下手」といった誹謗中傷のコメントをたくさん受けてきたため、このコメントも無視していたのですが……。167は、夫であるたかしさんのYoutubeチャンネルも含め、再生数の多い動画に次々と同様のコメントを投稿。そのため、5ちゃんねるやガールズちゃんねるなどでは、ゆきぽんさんやたかしさんについて、「クズ親すぎ」「双子の世話は実家に任せっきりでホスト通いだよ」「たかしも不倫しまくり」「動画だと仲良さそうなのにひどいね」など、噂に尾ひれがついた話題がたくさん飛び交うようになりました。

また、ゆきぽんさん夫婦は、おもちゃ会社や、子育て用品を販売する企業のPR動画を多数投稿していましたが、167によるコメント投稿が始まったころから、企業側からの依頼がほとんどこなくなり、PRに関わる収入も激減してしまいました。

167のコメント攻撃は依然続いているため、ゆきぽんさんは、イメージを損なったうえに、収入が減る原因にもなった167の身元を突き止め、法的措置をとりたいと考えています。もちろん、それが叶うのならお金や労力も惜しまない覚悟です。

 

【対処方法】

はじめに


このような相談を受けたときに、まず確認しなければならないのは、依頼者の最終目標です。ゆきぽんさんは「167の身元を突き止め、法的措置をとりたい」「お金や労力を惜しまない」というスタンスですが、登録者数100万人を超えるような有名YouTuberであるため、本件を「同様の荒らしの出現を抑止するための措置」だと考えるのも、非常に意義があることではないでしょうか。

したがって今回は、①名誉毀損行為による人格権の侵害を理由とした民事訴訟(収入減少に対する損害賠償請求も含む)および、②名誉毀損罪での刑事訴訟をゴールにしたいと考えます。

 

アカウントの所有者を特定する


167というアカウントの持ち主を特定するために、まずはYouTubeの親会社であるGoogle LLC(カリフォルニア州)に対して、情報の開示を求める手続きを行います。これには、日本の裁判所を通じて行う方法と、アメリカの裁判所を通じて行う方法があります。

 

<日本の裁判所を通じて行う場合>

Google LLCに対して、167(発信者)の直近のコメントに関するIPアドレスの開示を求める仮処分(裁判の一種。担保金を払うことで、通常の裁判よりも早く手続きができるのが特徴)をアメリカの裁判所に申し立てます。申し立てが認められて、IPアドレスが入手できれば、次はそのIPアドレスを所有するプロバイダに、アドレス所有者の契約情報開示を請求。場合によっては、ログを保存するための仮処分手続を別途行う必要があるケースもあります。。これにプロバイダ側が応じてくれれば、匿名だった発信者の身元が明らかになります。

ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたるものであり、通信の秘密に関するものでもあるため、プロバイダ側が任意に情報の開示に応じることはまずありません。そのため、裁判を通じて情報開示を求めるケースがほとんどになります。

裁判になった場合は、プロバイダ側がスムーズに要求に応じた場合でも3〜4カ月。スムーズにいかなかった場合は、年単位の時間がかかることも予想されます。ちなみに、アメリカの裁判所に仮処分の申し立てを行う場合は、●カ月ほどの期間が必要だとお考えください。

※赤字部分について、ご教示願います

 

<アメリカの裁判所を通じて行う場合>

アメリカの弁護士資格を持っている弁護士を介して、「ディスカバリー制度」を利用すれば、<日本の裁判所を通じて行う場合>よりも短期間で発信者の個人情報を入手できる可能性があります。

ディスカバリー制度というのは、アメリカの情報開示制度のことで「開示の必要性がアメリカの裁判所に認められれば、日本の裁判所を経由することなく、(訴訟を起こした先の)裁判所が管轄する企業に対して情報の開示を求められる」というもの。今回のケースでは、Google LLC本社がカリフォルニア州にあるため、カリフォルニア州の裁判所が相手となります。

 

日本では法令上、YouTubeアカウントを開設した際の個人情報を入手することはできないのですが(入手できるのはIPアドレスまで)、アメリカでは電話番号やメールアドレスも把握できるようになっているので、ディスカバリー制度を用いて、これらの情報の開示を要求するわけです。

開示の必要性が認められ、電話番号が判明したら、その後の発信者の特定にはさほど期間を要しません。弁護士会照会制度※1を活用し、弁護士会による審査が通れば、2〜3週間ほどで167というアカウントの所有者情報を入手することができます。なお、電話番号の登録がなかった場合は、メールアドレスのドメインを手がかりに、所有者の特定を行うことになります。

この方法のメリットとして挙げられるのは、まず個人特定までの時間を大きく短縮できること。そして、投稿から1年以上経つコメントでも、発信者が特定できることです。日本における発信者情報掲示請求では、プロバイダ側のログ保存期間の影響を受けるため、短い場合は3カ月でログが削除されてしまいますが、そうした縛りがなくなるわけです。

ただし、に相手がフリーアドレスを使っていたり、使い捨ての等のSIMカードを利用してアカウントを開設していたりする場合は特定が不可能なので、空振りに終わるリスクもあります。ですから、もし費用に余裕があるのなら、日本とアメリカ両方の手続きを並行して進めるやり方をおすすめします。

※1 弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた法律上の制度のこと。弁護士法第23条の2に定められています。

 

名誉毀損訴訟を起こす

発信者が特定できたら、名誉毀損について民事責任と刑事責任の両方から追求します。名誉毀損は親告罪であり、親告罪は被害者からの告訴がなければ検察は起訴できず、結果的に警察も捜査を進めることができません。その点だけ、頭に入れておいてください。

 

①民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたり、加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じての請求になります。その際、ゆきぽんさんは原告側の証人として証言台に立ち、尋問を受けることに。有名YouTuberの裁判ということで、傍聴席には一般の傍聴人やマスコミもやってくることも予想されます。そのため、心身の負担が相当なものになることは覚悟したほうがいいでしょう。

また、損害賠償は相手の支払い能力に大きく左右されるので、「求める金額が全額支払われるのが難しい場合がある」ということは頭に入れておいてください。とはいえ、「書き込みをした本人を突き止め、損害賠償命令を勝ち取った」という事実は、とても意義があること。誹謗中傷コメントの抑止としては効果的だと思います。

 

②刑事責任の追及

加害者に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などでの立件を目指します。刑事責任を追及するのは国なので、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

 

弁護士に相談する際、注意するべきこと


前述のように、プロバイダが保存するIPアドレスのログは、早くて3カ月ほどで削除されてしまいます。誹謗中傷の書き込みが見つかったら、1カ月以内を目安に弁護士に相談したほうがいいでしょう。

なお、YouTubeチャンネルに投稿されたコメントは、管理者の権限で削除することも可能ですが、削除してしまったコメントのログは取り戻せ可能性がありますませんので、絶対に削除はしないでください。法的に有利な誹謗中傷コメントを弁護士がピックアップする場合もあるので、訴訟を起こしたいアカウントの書き込み一覧などを準備してもらえると、やり取りがスムーズに進みます。

 

〈取材を終えて〉

YouTubeの大流行に伴い、グーグルに対する申し立て事例は、今後どんどん増えていくことが予想されます。中には、「アメリカの弁護士資格を持っている弁護士がまわりにいないと難しいのでは?」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の弁護士がアメリカで活動する弁護士を通じて、ディスカバリー制度を活用することも可能です。看過できない誹謗中傷にお悩みの方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

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Profile
福本哲也(ふくもと・てつや)
東京大学法学部、首都大学東京法科大学院を経て、2010年に弁護士登録。2012年より坂東総合法律事務所に入所。学生時代はサッカーに熱中。現在はゴルフとジム通いの日々を送っている。

 

 

Youtube誹謗中傷の法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決