ネット中傷を受けた場合の基本的な対処法を教えて下さい!

2020.11.13

ネット中傷への対処方法にはどんなものがある?


一昔前までは、「ネットに書かれたことは消せない、無視するしかない」と言われることが多くありましたが、それは正しくありません。ネットの書き込みは適切な手順を踏めば削除できる可能性があります。また、ネットには「匿名性」があるともいわれますが、プロバイダ責任制限法と呼ばれる法律を活用すれば、誹謗中傷を書き込んだ人物を特定することも不可能ではありません。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか? まずは、書き込みを消すための「削除依頼」と、書き込みした人物を特定するための「開示請求」について、説明しましょう。

  • 書き込みを消す「削除依頼」

インターネット上に自身の権利を侵害するような情報(プライバシー侵害、名誉毀損など)があった場合には、本人もしくは代理人からサイト管理者やホスティングプロバイダ(データを保管している会社)などに対して削除の依頼をすることが可能です。この手続きは、プロバイダ責任制限法のガイドラインにも定められており、「削除依頼」あるいは「送信防止措置依頼」と呼ばれます。ちなみに、削除依頼の主な対応パターンは次の3つとなります。

 

    1. オンラインフォームなどからの削除依頼

サイトの中には、オンラインフォーム、メールフォームを準備していたり、クリックするとメールソフトが立ち上がるようになっていたりするものがありますが、その場合はオンラインフォーム、メールフォームなどから削除依頼をすることができます。

 

    1. テレコムサービス協会の書式による削除依頼

テレコムサービス協会とは、情報通信に関わるインターネットサービスプロバイダ、ケーブルテレビ会社、回線事業者、コンテンツプロバイダ、ホスティングプロバイダなどの幅広い事業者が会員となっている一般社団法人です。活動の一つとして、プロバイダ責任制限法関係のガイドラインの作成・公表を行っており、そのガイドラインに従ってサイトの管理者やプロバイダに削除依頼(送信防止措置依頼)をする方法もあります。サイトの管理者やホスティングプロバイダは、書類を受け取った後に、書き込みをした人物(発信者)に対して書き込みの削除の可否を尋ねますが、7日間以内に反論がなければ書き込みが削除されるという流れが一般的です。

 

    1. 裁判(仮処分)での削除命令

削除依頼をしても削除に応じてもらえない場合、削除仮処分という裁判手続きを検討するのも一つの方法です。仮処分というのは裁判の一種ですが、通常の裁判よりも迅速な手続きで行われ、裁判所が申し立てにおおむね間違いがないと判断した場合は、一定額の担保金を供託することを条件に申し立てが認められます。

通常の裁判では数カ月から1年以上の時間がかかることが多いですが、この手続きでは1〜2カ月で結論が出ます。ただし、裁判手続きである以上、法律に基づいた主張やそれを裏付ける証拠の提出も必要となるため、誰でも簡単にできるというわけではありません。

 

  • 書き込みした人物を特定する「開示請求」

前述したように、ネットには「匿名性」があるといわれますが、ユーザーの側から見た場合は匿名でも、サイト管理者やインターネットサービスプロバイダ(インターネットへの接続サービスを提供している会社)の側には、投稿者につながる情報が保管されています。その情報を開示してもらうことで発信者が誰なのかを特定できる可能性があります。このように、サイト管理者やインターネットサービスプロバイダに対して、発信者情報の開示を請求することを「発信者情報開示請求」と呼び、その権利はプロバイダ責任制限法4条に規定されています。

なお、発信者情報開示請求では、サイト管理者とインターネットサービスプロバイダのそれぞれに開示を求める必要があります。

 

    1. サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行う

まず、サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行いますが、サイト管理者が持っているのは、サーバにアクセスされた履歴やサイトを利用する際に登録したメールアドレス、パスワードだけです。したがって、ここではサーバにアクセスされた履歴、つまりIPアドレスやタイムスタンプといった情報の開示を求めることになります。削除依頼と同様、テレコムサービス協会のサイトには発信者情報開示請求書という書式が用意されているので、そちらを活用することも可能です。

 

    1. インターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う

サイト管理者からIPアドレスなどの情報開示を受けると、インターネットサービスプロバイダが特定できるので、次はインターネットサービスプロバイダに対して情報の開示を求めます。インターネットサービスプロバイダには、IPアドレスと結びついた契約者情報が保管されているため、ここで情報が開示されれば、匿名だった発信者の身元が明らかになるわけです。

 

ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたり、また、通信の秘密に関するものでもあるため、サイト管理者、インターネットサービスプロバイダとも、任意に情報の開示に応じることはまずありません。そのため、①サイト管理者がIPアドレスの開示に応じてくれない場合は、裁判所に仮処分の申し立てを行い、②インターネットサービスプロバイダにプロバイダ契約者の情報を開示してもらう場合は、裁判所に発信者情報開示請求訴訟を行う、といった手順が必要になるケースがほとんどです。

削除依頼や情報開示が認められるために必要なことは?


削除依頼や開示請求の対象となるのは、具体的な権利侵害(名誉権の侵害、プライバシー権の侵害、肖像権の侵害など)がある場合です。

「A社」や「Bさん」のように、名称を伏せ字やイニシャルなどにすれば権利侵害にならないともいわれることはありますが、ペンネームやビジネスネーム、源氏名であっても、「その人」だと認識できれば、削除依頼や開示請求が認められます。

 

対処する際は、弁護士に相談したほうがいい? また、そのメリットは?


削除依頼も発信者情報の開示請求も、自分で行うことは可能です。ただ前述した通り、サイト管理者やプロバイダが任意で情報を開示してくれることはほとんどなく、裁判での対応が必要になります。また、インターネットサービスプロバイダが保管しているIPアドレスなどの保存期間は3カ月程度です。書き込みから時間が経ちすぎると、特定が難しくなってしまいます。

以上のことから、法律の専門知識がある弁護士に依頼して、できるだけスピーディに進めるのが得策でしょう。なお、弁護士に依頼することのメリットとしては、次のことが挙げられます。

    1. 法的根拠に基づいた素早い対応が可能

削除申請や情報開示を行う際は、サイトの管理者やインターネットサービスプロバイダに対して、どのような理由で、どのような権利侵害にあたるかなどを正確に伝える必要があります。弁護士を介してのやりとりであれば、法的根拠を示しながら削除依頼ができるため、早期解決の可能性が高まります。

 

    1. 複雑かつ面倒な手続きを任せられる

仮処分申請をしたり、訴訟を起こしたりといったように、法的手段によって問題を解決していくケースが多いため、自分一人で対処するにはかなりの時間と労力を要します。それを考えれば、裁判所、警察署などへの複雑な手続きを任せられるのは、大きなメリットといえるでしょう。

 

    1. 何ができて、何ができないかの判断ができる

ネット中傷に対応する際の目的は、①削除を求めたい、②投稿者を突き止めたい、③投稿者に損害賠償請求したいという3つにわけられますが、「自分のケースはどの方法をとるのがいいか」「投稿者を特定できそうか」「どのくらい時間がかかりそうか」などを自分で理解・判断するのは難しいものです。弁護士に依頼・相談することで、それらが把握できるようになることも、メリットの一つといえるのではないでしょうか。

 

 

相談する場合、前もって準備しておくことは?


 特別なことは必要ありませんが、「どこに何が書かれているのか」をしっかり伝えられる準備はしておいてください。その際、該当ページのURLを用意しておくと、弁護士が被害状況を判断しやすくなるので、対応がスムーズになるでしょう。

なお、SNSで誹謗中傷があった場合、アカウント自体を消してしまう方もいますが、それをやってしまうと、被害状況が確認できないだけでなく、証拠がなくなってしまいます。「早く削除したい」という気持ちはわかりますが、必ず削除する前に相談するようにしてください。

証拠を残す場合は、PCで印刷するほか、スクリーンショットを撮る場合は、Windowsのパソコンであれば、Alt+PrtScr(Print Screenと表示されていることもあります)。Macであれば、Command+Shift+3で保存できます。いずれの場合も、URLが明確に表示されているようにしてください。スマートフォンにもスクリーンショット機能があるものが多いですが、スマートフォンのスクリーンショットではURLがうまく表示されない場合もあるので、注意しましょう。

相談から解決までのおおまかな流れは?


おおまかな流れは、次のようになります(②と③は並行して進む場合がほとんどです)。

①法律相談で状況を伝えて、解決策を探る
②弁護士からサイト管理者への削除依頼を行う
③発信者情報開示請求を行い、加害者を特定する
④法的措置をとる

①〜③についての詳細はすでに説明した通りなので、ここでは④について説明していきましょう。

書き込みを行った人物を特定するのは「責任を追求するため」なので(中には、特定自体を目的とするケースもありますが)、③で発信者情報の開示を受けた後は、法的措置によって問題の解決を目指していきます。責任追及の方法は、大きくわけて2つ。民事責任の追及と刑事責任の追及です。

    1. 民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたります。損害賠償を請求する方法としては、内容証明郵便などによる裁判外の手続きと、損害賠償訴訟という裁判上の手続きがあります。加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じての請求になるでしょう。

    1. 刑事責任の追及

書き込んだ人物に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などで立件してもらうことを指します。刑事責任を追及するのは国の仕事であるため、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

損害賠償請求が認められた場合、どのくらい賠償してもらえる?


これまでのネット誹謗中傷案件をみてみると、裁判で認められる損害賠償額は、おおむね100万円が上限という印象です。ただし、相手の特定にかかった費用については、相手の負担にできる場合も。たとえば、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行った場合、その弁護士費用が損害として認められます。

とはいえ、相手を特定できれば必ず賠償してもらえるというわけではありません。裁判で反論してくるケースもあれば、相手の金銭的な事情で払われないこともありますので、その点についても覚えておいてください。

 

弁護士への依頼費用のだいたいの相場は?


弁護士への依頼費用は、依頼先や被害の内容、サイトによって変わってきます。下に紹介した金額は、弁護士によって、また量や対象によっても変わってくるためあくまで目安と考えてください。

削除依頼の代行(裁判外)    : 1~10万円
裁判(仮処分)の申し立て    :25万〜40万円
契約者情報開示請求                :25万〜40万円
損害賠償(民事訴訟)の請求 :20万円程度


弁護士への依頼は敷居が高いと思われがちですが、中には無料相談を受け付けているところもたくさんあります。そして、相談することでネット中傷が解決できる可能性も、決して低くはありません。まずは自分が置かれている被害の状況を相談するところからはじめてみてはいかがでしょうか。
 

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Profile
清水陽平
法律事務所アルシエン代表
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などがある