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2020.11.17

幼い頃からモデルや子役として活躍し、3歳からはブログを9歳からはTwitterをはじめた春名風花さん。大人顔負けのつぶやきが話題になり多くのフォロワーを獲得する一方で、ネットの世界で一躍知名度を上げた“春風ちゃん”には、多くのアンチから誹謗中傷の書き込みがされるようになる。そうしたネットの誹謗中傷を巡る春名さんの長い戦いが、今年の7月16日に異例ともいえる高額での示談という形で終結。子役時代から10年以上にわたる誹謗中傷との戦いについて、春名さんに語ってもらった。

 

警察では解決できない事件

−−春名さんは小学生の頃からSNSやネットでの誹謗中傷と戦ってこられました。そうした中で、裁判をしようと決めたことにはどのようなきっかけがあったのですか?

春名 たとえばネットの掲示板に晒されてしまった実家の住所を見て、実家や通っている小中学校の近くまで来る人がいたり。所属事務所やテレビ局、出演した劇場などにクレームの電話もたくさんあって、殺害予告や爆破予告までされたり。SNSでの誹謗中傷がどんどんエスカレートして、当時は私だけなく家族や友人、お仕事で私を起用してくれる人たちも巻き込んでしまうような、大きな実害が出ていました。もちろん母親と一緒に何度も警察に相談しましたが、「相手が特定できないので難しい」「事件になっていないので」などと言われてしまって。警察の力でも難しいんだったらどうすればいいのかと考えたときに、「弁護士さんに依頼すればいいのか」と思いついたんです。ちょうど高校生になっていじめや虐待に関する報道番組やイベントでお話する機会が増えていたときで、皆さんの前で「無料で相談に乗ってくれる弁護士さんもいますからね」と話している自分が、一度も弁護士さんに相談していないなと。そんな気づきもあって、弁護士さんを探し始めたんです。

−−実際に怖い思いをして警察に相談をしても解決できない。そうしたことが何度もあったのに、弁護士に相談するまでは何年もかかったわけですね。

春名 弁護士さんの存在は別世界のものでしたし、警察に行けば助けてもらえると思い込んでいました。だから警察でも解決できないと知ったときはとてもショックを受けたのを覚えています。小中学生の頃の爆破予告や殺害予告などは、本来なら事件化できるケースでもあったようですが、当時は警察の方がまだTwitterを知らなかったり、そもそもネット犯罪を扱った経験がまったくないような状態でしたから。警察のなかにはとても親身になってくれる方もいましたが、「芸能人なんてやっているからじゃない」というようなことを言われたこともありました。当時はもう警察に相談しても仕方がないという気持ちになっていましたが、そうはいっても弁護士さんに相談することへのハードルも高かった。お金もどれくらいかかるかわからないし、ネットの事件に強い弁護士さんがいるとも思っていませんでした。

 

頼りになる弁護士という存在

−−そうした状況のなかで、サイバーアーツ法律事務所の田中一哉弁護士に依頼された経緯は?

春名 当時はネット関係に強い弁護士さんの情報などが少なくて苦労しましたが、インターネットを使って自分で調べて田中先生に行き着きました。海外の企業であるTwitter社と法的に戦った実績があるうえ、それを請け負ってくれる弁護士さんは、当時は日本に数人しかおられなかったように思います。

−−実際に田中弁護士に相談をしてみてどうでしたか?

春名 最初はメールで連絡をさせてもらったのですが、法的に何ができて何ができないか、費用はどのくらい必要かなど、わかりやすく教えていただきました。誹謗中傷の書き込みも見てもらい、どの書き込みが侮辱罪や名誉毀損罪に該当するのかも教えてもらって。田中先生からは「裁判で勝訴しても相手に支払い能力なければ費用が無駄になることもあります。それでも進めていいですか」というお話もありましたが、「裁判をする」という強い決意と先生のお話を聞いての安心感もあり、実際に依頼することを決めました。

−−ネット誹謗中傷での裁判は日本ではまだ少なく、ましてや芸能人となると初めてのことだったのではないかと思います。裁判に至るまでの葛藤や、ご家族や仕事関係者など周囲の方々の反応について教えてください。

春名 もちろん葛藤はありました。仕事関係では「女優業をやりたいなら色がついてしまう裁判は避けた方がいい」とアドバイスをしてくださる方もいましたし、家族の中でも父は裁判をすることがとても心配していました。でも、被害の話をするたびにアンチの人たちから「自作自演」などと言われてくやしい思いもしてきましたし、すでにクレームの電話などで仕事にも悪い影響が出ているのだから、むしろ裁判をして被害を止める方が仕事もやりやすくなるんじゃないかなと。それに、芸能人だからって意見を言わないのが当たり前という芸能界の風潮が、やっぱりおかしいんじゃないかという気持ちもあったんです。

−−今回の裁判では春名さんのお母さんも原告になっておられますね。

春名 母は警察に相談するときもいつも一緒でしたし、誹謗中傷で悲しい思いをしたり、仕事のチャンスを失って悔しい思いをする私の気持ちをとてもよく理解してくれていました。裁判を起こすと言っても当時はまだ高校生でしたし、今回、訴えた人から受けていた誹謗中傷が母にも関係する内容だったこともあり、一緒に原告になってくれたんです。今回の裁判では、そんな母の後押しも大きかったですね。

 

社会的な意義のある示談

−−春名さんが田中先生に依頼された2018年10月から、示談が成立した2020年7月16日まで、2年近い年月がかかっています。その間に大変だったことなどはありますか?

春名 特にネット関係の訴訟はスピードが大事なこともあり、田中先生とは主にメールで打ち合わせをさせてもらいました。手続きなどもすべて先生にお任せしていたので、原告としてやることというと、同意書や陳述書などいくつかの書類を書くくらい。また、警察に相談していたときとは違い、今がどういう状況でどのように手続きや裁判が進んでいくのか、田中先生からは逐一報告もしてもらえたのでとても安心感がありました。一方で、今回の裁判では2018年の12月にTwitter社からIPアドレス等の開示を受け、それをもとに3つのプロバイダーに対して契約者情報の開示を求める訴えを起こしたのですが、その裁判にほぼ1年がかかりました。いつ終わるかわからない長い裁判の結果を、ずっと待っていなくちゃいけない。そうして過ぎていく時間については辛いものがありました。

−−今回の裁判では、一般的な誹謗中傷による名誉毀損の損害賠償額としては高額な315万4000円という金額での示談も話題になりました。春名さんが示談に応じられた経緯や理由について教えてください、

春名 プロバイダーから契約者情報をいただいた後、こちらからは名誉毀損と侮辱ということで、民事での損害賠償請求と刑事告訴を起こしました。実は示談の申し入れは2度あって、最初は情報開示の裁判の最中に、「お金は払いませんが住所と名前を教えるので示談にして欲しい」と。それでは反省にもなっていないしもちろんそこでは裁判を継続して。その後、刑事での裁判に進むタイミングで2度目の申し入れがあったんです。私自身としては、裁判できちんと罪を認めてもらったうえで他の被害への関与も追求したいという思いもあり、示談はしたくありませんでした。とはいえ、裁判で勝ったとしても、今の法律では名誉毀損罪(3年以下の懲役もしくは罰金50万円以下)でも侮辱罪(1日以上30日未満の勾留もしくは1000円以上1万円未満の金銭の支払い)でも相手に与えられる罰は軽く、しかも今回の相手は初犯なので不起訴になる可能性すら高かった。田中先生からも「高額な金銭という目に見える罰を与えることも大事。この示談には社会的な意味もあると思います」と言っていただき、最終的に示談に応じることを決めたんです。

−−確かに多くの報道がされましたし、今回の春名さんの裁判が社会的に与えた影響は大きかったと思います。春名さん自身は、周囲の人たちや社会の変化を感じていますか?

春名 今回の示談をたくさん報道してもらったことで、同じように誹謗中傷に悩むたくさんの方が、InstagramのDMなどで「勇気が出ました」といったメッセージを送ってきてくれました。私の裁判だけでなく、芸能界で悲しい事件が続いたこともあり、最近ではネットでの誹謗中傷にアクションを起こす芸能人の方も増えているように思います。一般人であろうが芸能人であろうが、誰かを誹謗中傷するのはよくないこと。「有名税」で許されるような社会が少しでも変わるきっかけをつくれたのなら、裁判をやって良かったなと思います。

 

誹謗中傷で傷ついている人へ

−−今回の春名さんのように誹謗中傷の当事者になってしまった場合、どのように対処するべきなのでしょうか。ご自身の経験を踏まえてアドバイスをいただけますか。

春名 ネットなどで誰かへの誹謗中傷を書き込んでいる人は、あまり何も考えていないのかもしれません。でも、書かれた方は本当に心を抉られるような思いをしていて、絶望的な気持ちにすらなってしまいます。今回の私の経験から言えるのは、やっぱり信頼できる弁護士さんに早めに相談した方がいいということ。解決できる可能性や道筋を示してもらうだけで安心もできますし、実際に戦うことにも大きな意味があると思うんです。今回、僕の裁判がニュースになって、多くの人に「勇気をもらった」と言ってもらったように、あなたの行動が社会を変えるきっかけになるかもしれない。おかしいと思うことにみんなが声を上げることで、法律が変わったり警察が捜査しやすくなったりということもあると思うので、ぜひ行動できる人は行動して欲しい。もちろんそうは言っても、「そんなの無理だよ」という人は「戦わない」という選択をしてもいいと思います。何よりも大切なのは、現実世界の人間関係を充実させること。私の場合は何があっても「大丈夫」と言ってくれる家族や友人、仕事仲間がいましたが、そうした存在がなければ、弁護士さんに相談する前に心が折れてしまっていたかもしれません。また、誹謗中傷を受けて自信や自己肯定感を失ってしまうと、精神的なダメージを一気に受けてしまいます。だから特に誹謗中傷などで傷ついている人は、何でもないような日常の中でも、できるだけ自分で自分のことを褒めてあげて欲しいなとも思います。

――一方で、ネットなどで誹謗中傷を行う側の人たちに向けてメッセージはありますか?

春名 たとえばTwitterを見ていて腹が立ったとか、誹謗中傷を書く人は反射的に書き込んでいるのだと思います。でもその向こうにいる相手は人間で、その言葉はしっかりと届いてしまう。たとえば相手が有名な人であれば、あなただけではなくて何十人、何百人という人から辛辣な言葉が届くかもしれない。そうすると実際に自ら命を断ってしまう人もいるし、逆に誹謗中傷されている側が戦おうと思えば、数百の誹謗中傷を代表する一人として訴えられることもあるわけです。だから軽い気持ちで書き込んで欲しくないし、目の前の人に言えないような言葉はSNS上でも使って欲しくないと思いますね。

――最近はブログやnote、YouTubeなどを中心に情報を発信されていますが、春名さんのネットやSNSとの付き合い方はどのように変化していますか?

春名 大学進学を機にTwitterの更新を止めてみて思ったのが、これまで「かなり誤解されていたんだな」ということでした。特にYouTubeでの発信を始めてからは、これまでに持たれていた尖ったイメージとのギャップもあって、みなさん優しい目で見てくださっている気がします。Twitterは発信力や人を集める力は強いけれど、その分だけ誤解が生まれて広がっていく可能性も高くなるのかもしれません。今後は色々と変わっていくかもしれませんが、今はブログやnoteのような長い文章で伝えられるツールやYouTubeを使って、自分の活動を伝えていきたいと思っています。

――最後に、今後の女優としての活動について抱負などをお聞かせいただけますか。

春名 いまは大学に通いながら、学校側に届けを出して許可を受けながら芸能活動をしています。新型コロナウイルスの影響で延期されてしまったのですが、舞台への出演も決まっていますし、今後も女優として頑張っていきたいと思っています。これまでに色々とあったことは女優人生を考えるとハンディになるかもしれませんが、海外では女優さんも当たり前のように自分の意見を口にしますし、個人の意見と作品は別物とみんなが捉えています。日本もそうなればいいなと思いますし、そのために僕の経験や行動が少しでも影響を与えられると良いなとも思います。

 

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