SNS誹謗中傷」タグアーカイブ

2021.03.15

現代はインターネット技術が発達し、誰でも気軽に情報を発信できるようになりました。普段関わることのないような人たちとSNSなどで出会い、交流できるのはとても意義のあることですが……。その一方で、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることも事実。警察庁が発表した資料「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、同年のサイバー犯罪に関する相談は12万6815件。そのうち、名誉毀損・誹謗中傷に関する相談は1万1406件ありました。つまり、警察が相談を受けた事案だけで、1万人以上がインターネットで誹謗中傷の被害にあっているわけです。

では、こうした状況の中で、自分がインターネットで誹謗中傷の被害に遭ってしまったら、一体どうすればいいのでしょう。

まず、知っておいて欲しいのは、ネットの書き込みは適切な手順を踏めば削除できる可能性があるということです。この手続きは、プロバイダ責任制限法のガイドラインにも定められており、「削除依頼」あるいは「送信防止措置依頼」と呼ばれます。以下では、削除依頼を行うための要件や方法、流れなどを説明していきましょう。

 

書き込みを放置すると、どんな弊害がある?


SNSや各種掲示板にネガティブな書き込みをされると、それぞれのメディアの利用者が閲覧するだけでなく、書き込まれた内容がGoogleやYahoo!などの検索エンジンにも表示されてしまいます。加えて、書き込まれた内容はインターネット環境のある場所なら、いつ、どこからでも閲覧可能に。つまり、不特定多数の人に短時間で情報が伝わってしまうため、誹謗中傷を投稿されてしまうと、次のような悪影響が出る可能性が高くなります。

法人の場合】
・ブランドイメージの低下
・消費者や取引先へのイメージダウン(売り上げの損失)
・採用活動への悪影響
など

個人の場合】
・社会的信用の低下
・仕事への悪影響(社内外における評価の低下)
・精神的なダメージ
など

 

削除依頼って何?


ネガティブな書き込みを行った人に削除を求めようとしても、「誰が書き込んだのかわからない」というケースは数多くあります。また、仮に書き込んだ人がわかっていても、その人が素直に削除してくれるとも限りません。しかし、書き込んだ人がわからない場合でも、サイト管理者やサーバ会社(ホスティングプロバイダ)などに削除を求めることで、書き込みを削除できる可能性はあります。そして、その際に必要になるのが、「削除依頼」(あるいは「送信防止措置依頼」)と呼ばれる手続きです。

ただし、削除依頼によって対処できるのは、書き込みを削除することまで。書き込んだ人物を特定し、損害賠償請求などを行う場合には、別途「発信者情報開示請求」という手続きが必要です。

発信者情報開示請求に関する記事こちらから

 

削除できるのは、どのような書き込み?


削除依頼の対象となるのは、サイトの「利用規約」に違反している場合と、具体的な権利侵害がある場合です。下に、「権利侵害があると認められる可能性がある行為」の一例を示しておくので、参考にしてください。

 

権利

権利侵害があると認められる可能性がある行為

名誉権

社会的な信用・評価を下げるような書き込み。【例】○○は不倫している、○○は前科持ちだ など

プライバシー権

個人情報や私生活の情報を暴露する書き込み。
【例】本名や住所の公開、日常の秘密の公開 など※なお、会社などの法人にはプライバシー権が認められないのが一般的です。

肖像権

撮影や公開を許可していない写真や動画の公開。【例】隠し撮り写真の公開、無断撮影された写真の公開 など

 

 

削除依頼をするための具体的な方法は?


インターネット上で誹謗中傷やプライバシー権を侵害する書き込みが行われ、その書き込みに対して削除依頼を行う場合、主な対応パターンは次の3つとなります。

 

    1. お問い合わせフォームなどからの削除依頼

サイト上に掲載されているお問い合わせフォームやメールフォームなどから削除依頼をすることができます。

こうした削除依頼は、誹謗中傷を受けた本人でも行うことができますが、書き込みを削除するかどうかの最終的な判断は、サイトの管理者に委ねられています。そして、「どの投稿が問題なのか」だけでなく、「どういった権利が侵害されているのか」や「権利が侵害されたとする理由」「それによってどういった被害を被ったのか」などの根拠を具体的に伝えないと、依頼に応じてもらえない可能性もあります。それを考えると、お問い合わせフォームなどから削除依頼をする場合でも、弁護士に代理人として対応してもらうほうが得策といえます。法的根拠を示しながら削除依頼ができる分、問題解決の確度はもちろん、早期解決の可能性も高まるでしょう。費用の目安は、1〜10万円だとお考えください。

 

    1. テレコムサービス協会の書式による削除依頼

テレコムサービス協会とは、情報通信に関わるアクセスプロバイダ、ケーブルテレビ会社、回線事業者、コンテンツプロバイダ、ホスティングプロバイダなどの幅広い事業者が会員となっている一般社団法人です。活動の一つとして、プロバイダ責任制限法関係のガイドラインの作成・公表を行っており、そのガイドラインに従ってサイトの管理者やプロバイダに削除依頼(送信防止措置依頼)をする方法もあります。その際の手順は次の通りです。

①「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」という書類を作成し、本人確認書類とともにサイト管理者やホスティングプロバイダに郵送する

※必要な本人確認書類はサイトによって異なりますので、サイトを確認してください。一般的には、個人の場合は身分証の写し、法人の場合は印鑑証明書、登記現在事項証明書の提出を求められるケースが多いようです。

 

②受け取った側が、「本当に本人からの依頼か?」を確認した後、書き込みをした人物(発
信者)に対して書き込みの削除の可否を尋ねる

③7日間以内に反論がなければ、書き込みが削除される場合がある

なお、発信者から削除に同意しないという反論があった場合には、「利用規約違反があるかどうか」「権利侵害があるかどうか」をサイトの管理者やプロバイダが判断し、「ある」といえれば削除する、という扱いになっています。

 

    1. 裁判(仮処分)での削除命令

削除依頼をしても削除に応じてもらえないときには、削除仮処分という裁判手続きを検討するのも一つの方法です。仮処分というのは裁判の一種ですが、通常の裁判よりも迅速な手続きで行われ、裁判所が申し立てにおおむね間違いがないと判断した場合は、一定額の担保金を供託することを条件に申し立てが認められます。なお、担保金が用意できなければ、決定が発令されることはなく、供託した担保金は一定の手続きを行うことで返還されます。

通常の裁判の場合、数カ月から1年以上の時間がかかるケースが多いのですが、この手続きでは一応こちらの主張が確からしいとなれば申立てが認められるので、1〜2カ月で結論が出ます。そして、裁判所から「削除せよ」という仮処分決定が出れば、多くのサイト管理者やプロバイダは削除に応じてくれます。ただし、裁判手続きである以上、法律に基づいた主張やそれを裏付ける証拠の提出も必要となるため、誰でも簡単にできるというわけではありません。仮処分での対応を検討している場合は、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。

 

削除仮処分までのおおまかな流れは?


削除の仮処分の申し立てが認められるには、次の2つの要件を満たす必要があります。

①インターネットの誹謗中傷によって、人格権(名誉権やプライバシー権など)や著作権に基づく権利侵害が起こっていること

②権利侵害が起こっていて、すぐにでも保全しないと権利の回復ができない状況にあること(すぐに消去させないと拡散の可能性があるなど)

では次に、手続きのおおまかな流れをご説明しましょう。削除の仮処分を申し立てるには、申立書を作成し、こちらの主張を裏付ける証拠とともに、管轄の裁判所に提出します。なお、削除に関する管轄は、相手方(債務者と呼びます)の住所地を管轄する地方裁判所か、自分・自社(債権者と呼びます)の住所を管轄する地方裁判所にあります。

申立書によって申し立てがなされると、裁判所で債権者と債務者の審尋が行われ、裁判官が相手方の言い分や証拠などを見ながら、申し立てを認めるかどうかを判断していきます。ここで債権者側の主張が認められれば、仮処分決定発令のために供託する担保金の金額を決定。債権者が担保金を支払ったことが確認できれば、裁判所から削除の仮処分命令が発令されます。

 

削除仮処分の申し立てにかかる期間と費用は?


仮処分での対応は法律の専門知識が求められるため、弁護士へ依頼するケースが一般的。ですので、以下では弁護士への依頼費用を含めた目安を紹介します。

  1. 期間の目安

実際に申立てを行って仮処分決定が出るまでの期間は、1〜2カ月が標準です。ただし、相手が海外法人の場合などには1~4カ月程度かかる場合もあります。

  1. 費用の目安

削除仮処分の申し立てには、裁判所の費用と担保金、弁護士への依頼費用などがかかります。金額は、裁判所の費用は印紙などの実費が5000円程度、担保金は30万円程度が必要です。弁護士への依頼費用は、弁護士によって、また量や対象によっても変わってくるためあくまで目安となりますが、25〜40万円程度とお考えください。

 

悪質なネット書き込みの法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決。

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Profile
清水陽平
法律事務所アルシエン代表
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などがある

2021.03.08

近年、SNSを中心に偽アカウントによる「なりすまし被害」が急増しています。中でも一般人へのなりすまし被害は、本人かどうかの見極めが難しいことから、有名人よりも深刻だと言われています。実際に、なりすまし被害による社会的信用の失墜や重要な個人情報の流出なども起こっており、もはや誰もが他人事とは言い切れない状況です。今回は、なりすまし被害にあわないための予防策や対処法について解説していきます。

 

SNSのなりすましとは?


TwitterやInstagram、FacebookなどのSNS上で、第三者がまったく別の他人になりすまして不正行為を働くというもので、大きく分けて2つのパターンがあります。

① 第三者が、不正に取得したID・パスワードで他人のアカウントを乗っ取り、本人になりすますケース

② 第三者が、本人のアカウントに類似した偽のアカウントを作成し、本人になりすますケース

なりすましによる被害は、本人の知らないところで個人情報を晒されたり、本人の信用が下がる言動を拡散されたりと大変悪質です。また、自分の友人や知人にメッセージを送り詐欺行為を行う犯罪も増えています。

 

なりすまし行為は罪に問えるのか?


アカウントの乗っ取り行為については、それ自体が不正アクセス禁止法違反の犯罪行為にあたります。しかしSNSなどで他人の名前を名乗る行為については、法律で禁じられている訳ではなく、それだけで犯罪として成立させるのは正直難しいと言えるでしょう。但し、本人になりすました上で、個人の社会的信用が下がるような言動を繰り返したり、詐欺メッセージを送り付けたりと、悪質な場合は「名誉毀損罪」「侮辱罪」などの罪に問う事が可能です。

実際に、SNSのなりすまし被害で名誉権侵害が成立した事例もあります。

▼SNS上のなりすまし行為が名誉棄損罪となった事例 

<事件概要>

インターネット上の掲示板内で自分になりすまし、他人を罵倒する書き込みをされたとして、なりすまし実行犯に対し723万円の損害賠償を求めた裁判の判決が大阪地裁で行われた。「社会的評価を低下させ、名誉権を侵害した」として、被告側に130万円を支払うように命令。「なりすまし」行為で名誉権侵害が成立することが、司法によって認められることになった。

(平成29年8月30日判決 大阪地裁  平成29(ワ)1649 損害号)

判例URL:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87071

この事例において、なりすまし自体は罪とはなりませんでしたが、被害者の社会的信用を損なうような投稿を繰り返したことが名誉権侵害と認められ、被告に対して慰謝料の支払いが命じられました。

繰り返しになりますが、これらの事例は決して対岸の火事ではなく、誰にでも起こりうることです。ではどのような対策を行えばいいのでしょうか。

 

なりすまし被害にあわないために気をつけること


▼「アカウント乗っ取り」への対策

・ 不審なメールやメッセージは開かない

・SNSのパスワードは定期的に変更する

・SNSのアカウントは「二段階認証」を設定し、セキュリティを強化する

スパムメールや不正なメッセージを介してマルウェア(ウイルスなどの不正なプログラムの総称)に感染させられ、ID、パスワードを抜き取られるケースが急増しています。知らない送信元からのメールや、あきらかに怪しいメッセージは警戒し、間違っても本文のリンク、添付ファイルは開かないようにしましょう。

▼「偽アカウント」への対策

見知らぬ人からのSNS友達申請は承認しない

・個人情報に関わる投稿は「非公開設定」にし、フォロワーだけに公開する

大切なのは、なりすまし犯に個人情報を与えないこと。写真やプライベートな情報が多ければ多いほど、なりすまし被害の危険もそれだけ高まると言えます。SNSなどで情報発信を行う際は、内容や公開範囲について、今一度よく考えてみることをおすすめします。

しかし、なりすましの手口は年々、巧妙化しており、気を付けていても被害にあうおそれがあります。

 

万が一、被害にあってしまったら


アカウントの乗っ取り、または偽アカウントを発見したら、まずはきちんと証拠を残しておくことが重要です。なりすまし投稿のスクリーンショットと投稿された日時を控えた上でSNSの運営者に報告し、該当アカウントの削除や凍結などの対応を依頼しましょう。

次に被害が拡大するのを防ぐために、家族や友人などSNS上でつながっている人に事情を説明し注意喚起を行うことも大切です。

▼SNSの運用元へ報告

TwitterやInstagram、Facebookでは、なりすましアカウントの作成・運用行為は禁止されており、下記から報告することが可能です。

Twitter「なりすましアカウントを報告する」

Instagram「Instagramでのなりすましアカウントを報告」

Facebook「なりすましアカウントを報告」

ただ、前述したとおり、なりすましだけでは権利侵害と言えず罪に問うことは出来ません。しかし、投稿の内容が非常に悪質であったり、削除しても何度も同様の嫌がらせが繰り返されるようであれば「発信者情報開示請求」の手続きにより、なりすまし犯を特定し法的措置を取ることが可能です。(※発信者情報開示請求の手続きについてはコチラをご覧ください)

まずは、自分が受けている被害がどのような権利侵害にあたるか判断するためにも弁護士に相談することをおすすめします。「ネット中傷解決くん」には、ネットトラブルに強い弁護士が揃っているので、相談から解決までスピーディーかつ親身になってサポートします。

 

さいごに


なりすまし被害は不特定多数の人を狙ったもの以外にも、個人的な恨みやストーカーなど、明らかに特定の個人を狙ったケースも多く見られます。そして、後者の方が明確な悪意を持っていることから、より深刻だと言えます。なりすましは放置しておくと自分だけではなく、友人知人や家族にも迷惑をかける可能性があるので、日頃からしっかり危機意識を持って自己防衛を行いましょう。

 

 

SNS名誉損害の法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決

2021.03.01

ここ数年、従業員のSNS投稿がきっかけとなって「炎上」するケースが増加しています。中でも、アルバイト店員の悪ふざけ投稿によるトラブルは、「バイトテロ」と呼ばれ社会問題にもなりました。ソーシャルメディアの不適切投稿は、企業経営にも深刻な影響を与えることから、利用に関するガイドラインを定め、正しく運用することが求められています。今回は、ネット炎上から企業を守るソーシャルメディアポリシー・ガイドラインについて、詳しく解説します。

 

企業イメージの損失につながる「バイトテロ」


2019年、SNSの不適切投稿が相次ぎ「バイトテロ」という言葉が世間をにぎわせました。発端となったのは、くら寿司の店舗内で撮影された一本の動画。アルバイトの少年が、厨房内で魚の切り身をゴミ箱に捨てたあと、再びまな板に戻す様子が撮影されていました。この動画がツイッターに投稿されるとすぐさま批判が殺到。テレビでも取り上げられるなど、社会問題になりました。この事件により、くら寿司は株価が急落するなど甚大なダメージを被りました。その後、くら寿司はアルバイト店員2名を退職処分とし、刑事・民事での法的措置をとることを発表。動画を拡散した少年も含めた3人を偽計業務妨害の疑いで書類送検しました。

他にも従業員による軽率なツイートで、企業側が謝罪に追い込まれた例として、プライベートで店舗に訪れた著名人について発信し炎上したケースがあります。場合によってはプライバシー侵害や名誉棄損で訴えられる可能性も十分にありえるので、「たかがSNS」とあなどることなく、従業員全員のソーシャルメディアに対する意識改革が必要だと言えるでしょう。

 

企業のソーシャルメディア炎上を防止するためには

ソーシャルメディアが広く普及する一方、発信する側の情報モラルや、メディアリテラシーの低さが懸念されています。明確なルールがないまま運用すると、トラブルが起きるリスクが高くなるだけでなく、トラブル発生の際、企業側に大きな責任とリスクが伴います。不適切な発言や行動による炎上を防ぐためには、ソーシャルメディア使用に関するポリシー・ガイドラインを作成し、従業員に対して周知・研修を行うことが必要です。

 

▼ソーシャルメディアポリシー・ガイドラインとは

企業の公式アカウントや、従業員が個人でソーシャルメディアを利用する際のルールや心構え、目的、姿勢などをまとめたものです。大きく分けると、外部・第三者ユーザーに向けたものと、企業の従業員や関係者に向けたものの2種類あります。

 

① ソーシャルメディアポリシー(外部・第三者ユーザー向け)

公式アカウントの運用方法や発信内容、ユーザーへの返信対応などについてまとめたものです。社外に向けて公開することで、企業のソーシャルメディア運営の方針を理解してもらい、誤解を防ぐことができます。

② ソーシャルメディアガイドライン(従業員や関係者向け)

従業員ならびに自社の業務に関わるすべての関係者が、ソーシャルメディアを利用する際に必要となる指針とルールです。トラブルを未然に防ぐためのルールや禁止事項のほか、クレームや従業員の不適切投稿の対処方法などをあらかじめ設定しておくことで炎上を防ぐことができます。

また、ガイドラインを作成することは、ソーシャルメディア使用におけるマナーやルールの周知に加え、個々のソーシャルメディアに対する危機意識を高める役割があります。

 

 企業としてソーシャルメディアポリシーを設定するメリット


ソーシャルメディアポリシー・ガイドラインを設定することは、炎上リスクを減らすだけでなく、運用状況の確認と改善にもつながります。運用ルールを設けることで投稿内容やユーザーとのコミュニケーションが均一化されるので、従業員が活用しやすくなります。さらに、コミュニケーション戦略の方向性を社内で共有できるので、顧客やファンとの交流によるエンゲージメントを高めることにもつながります。  

 

ソーシャルメディアポリシー・ガイドラインの作成方法 


ソーシャルメディアポリシーやガイドラインには、あらかじめ決められた定型文がある訳ではなく、各企業が自らの企業文化やソーシャルメディア活用の目的など、さまざまな要素を検討しながら策定します。多くの企業が自社HPなどで公開しているので、作成される際は参考にするとよいでしょう。

【ソーシャルメディアポリシー・ガイドラインを公開している企業の参考事例】

日本コカ・コーラ株式会社
https://www.cocacola.co.jp/company-information/social-media-guidelines

株式会社サンリオ
https://www.sanrio.co.jp/social/policy/

資生堂
https://corp.shiseido.com/jp/smp/

株式会社プレナス(ほっともっと)
https://www.hottomotto.com/policy/social_guide.html

 

もし、ソーシャルメディアが炎上してしまったら


ルールを設けて運用していても、炎上の火の粉は思わぬところからやってくることがあります。問題が発生した時の対処法として

 

▼まずは迅速に炎上内容を確認

ネットでは事実無根の情報も多く流れているので、炎上の理由となっている内容が事実かどうかを早急に確認しましょう。対応が遅れてしまうとその分だけ炎上の火が大きくなってしまうので、事実確認に時間がかかる場合は一旦「調査中」であることをアナウンスしておきましょう。

▼公式アカウント、ウェブサイトで謝罪

調査結果を発表するとともに、従業員の投稿が原因の場合は管理不十分で騒ぎを起こしてしまったことに対する謝罪を行います。公式アカウントの内容が原因の場合は、今後の再発防止策を示しながら謝罪しましょう。

一度炎上してしまうと、信じられない速さで拡散されてしまうので、企業の担当者の立場であればパニックになってしまうでしょう。そうならないためにもソーシャルメディアポリシー・ガイドラインをもとに冷静に対応しましょう。しかし想定外の出来事でどうにも対応できない場合などは、ITやネット被害の知識、経験が抱負な弁護士に相談するのも一つの手です。「ネット中傷解決くん」には、炎上トラブルに強い弁護士が揃っているので、相談から解決までスピーディーかつ親身になってサポートします。

 

さいごに


今や、企業の広報・PR活動に欠かせないソーシャルメディアですが、一歩使い方を間違えると、企業イメージを著しくダウンさせる原因にもなります。そうならないためにもソーシャルメディアポリシーを策定して、従業員全員がルールに従った運用をする必要があります。まだソーシャルメディアポリシーを作成していない企業は、これを機にぜひ自社のソーシャルメディアポリシーの策定を行いましょう。

 

ネット炎上による被害の法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決。

2021.02.22

ネット中傷解決くん編集部が、相談のネット中傷トラブルの問題になりやすい事例を作成し、ネット中傷問題に詳しい弁護士に対処方法のインタビューを行い、記事にまとめました。

 

【事例】

<相談者>

ママ向けYouTubeチャンネルを運営するゆきぽんさん(22歳)は、ゲーム実況者として人気が高い「たかし」の妻であり、双子の母。子育てアイテムやおもちゃのレビュー、若いママ向けのメイクテクニックなどを紹介する「ゆきぽんのヤンママ☆ライフ」、家族のほほえましい日常をコミカルに紹介する「たか×ゆきのぴよぴよチャンネル」というYouTubeチャンネルを運営し、チャンネル登録者数は合計100万人を超えています。

先日、ゆきぽんさんは自身の動画のコメント欄で、「167」というアカウントから投稿された「ゆきぽんは、たかしがよくコラボしているYujinと不倫している」という事実無根のコメントを見つけました。

ゆきぽんさんはこれまでにも「ブス」「メイク下手」といった誹謗中傷のコメントをたくさん受けてきたため、このコメントも無視していたのですが……。167は、夫であるたかしさんのYoutubeチャンネルも含め、再生数の多い動画に次々と同様のコメントを投稿。そのため、5ちゃんねるやガールズちゃんねるなどでは、ゆきぽんさんやたかしさんについて、「クズ親すぎ」「双子の世話は実家に任せっきりでホスト通いだよ」「たかしも不倫しまくり」「動画だと仲良さそうなのにひどいね」など、噂に尾ひれがついた話題がたくさん飛び交うようになりました。

また、ゆきぽんさん夫婦は、おもちゃ会社や、子育て用品を販売する企業のPR動画を多数投稿していましたが、167によるコメント投稿が始まったころから、企業側からの依頼がほとんどこなくなり、PRに関わる収入も激減してしまいました。

167のコメント攻撃は依然続いているため、ゆきぽんさんは、イメージを損なったうえに、収入が減る原因にもなった167の身元を突き止め、法的措置をとりたいと考えています。もちろん、それが叶うのならお金や労力も惜しまない覚悟です。

 

【対処方法】

はじめに


このような相談を受けたときに、まず確認しなければならないのは、依頼者の最終目標です。ゆきぽんさんは「167の身元を突き止め、法的措置をとりたい」「お金や労力を惜しまない」というスタンスですが、登録者数100万人を超えるような有名YouTuberであるため、本件を「同様の荒らしの出現を抑止するための措置」だと考えるのも、非常に意義があることではないでしょうか。

したがって今回は、①名誉毀損行為による人格権の侵害を理由とした民事訴訟(収入減少に対する損害賠償請求も含む)および、②名誉毀損罪での刑事訴訟をゴールにしたいと考えます。

 

アカウントの所有者を特定する


167というアカウントの持ち主を特定するために、まずはYouTubeの親会社であるGoogle LLC(カリフォルニア州)に対して、情報の開示を求める手続きを行います。これには、日本の裁判所を通じて行う方法と、アメリカの裁判所を通じて行う方法があります。

 

<日本の裁判所を通じて行う場合>

Google LLCに対して、167(発信者)の直近のコメントに関するIPアドレスの開示を求める仮処分(裁判の一種。担保金を払うことで、通常の裁判よりも早く手続きができるのが特徴)をアメリカの裁判所に申し立てます。申し立てが認められて、IPアドレスが入手できれば、次はそのIPアドレスを所有するプロバイダに、アドレス所有者の契約情報開示を請求。場合によっては、ログを保存するための仮処分手続を別途行う必要があるケースもあります。。これにプロバイダ側が応じてくれれば、匿名だった発信者の身元が明らかになります。

ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたるものであり、通信の秘密に関するものでもあるため、プロバイダ側が任意に情報の開示に応じることはまずありません。そのため、裁判を通じて情報開示を求めるケースがほとんどになります。

裁判になった場合は、プロバイダ側がスムーズに要求に応じた場合でも3〜4カ月。スムーズにいかなかった場合は、年単位の時間がかかることも予想されます。ちなみに、アメリカの裁判所に仮処分の申し立てを行う場合は、●カ月ほどの期間が必要だとお考えください。

※赤字部分について、ご教示願います

 

<アメリカの裁判所を通じて行う場合>

アメリカの弁護士資格を持っている弁護士を介して、「ディスカバリー制度」を利用すれば、<日本の裁判所を通じて行う場合>よりも短期間で発信者の個人情報を入手できる可能性があります。

ディスカバリー制度というのは、アメリカの情報開示制度のことで「開示の必要性がアメリカの裁判所に認められれば、日本の裁判所を経由することなく、(訴訟を起こした先の)裁判所が管轄する企業に対して情報の開示を求められる」というもの。今回のケースでは、Google LLC本社がカリフォルニア州にあるため、カリフォルニア州の裁判所が相手となります。

 

日本では法令上、YouTubeアカウントを開設した際の個人情報を入手することはできないのですが(入手できるのはIPアドレスまで)、アメリカでは電話番号やメールアドレスも把握できるようになっているので、ディスカバリー制度を用いて、これらの情報の開示を要求するわけです。

開示の必要性が認められ、電話番号が判明したら、その後の発信者の特定にはさほど期間を要しません。弁護士会照会制度※1を活用し、弁護士会による審査が通れば、2〜3週間ほどで167というアカウントの所有者情報を入手することができます。なお、電話番号の登録がなかった場合は、メールアドレスのドメインを手がかりに、所有者の特定を行うことになります。

この方法のメリットとして挙げられるのは、まず個人特定までの時間を大きく短縮できること。そして、投稿から1年以上経つコメントでも、発信者が特定できることです。日本における発信者情報掲示請求では、プロバイダ側のログ保存期間の影響を受けるため、短い場合は3カ月でログが削除されてしまいますが、そうした縛りがなくなるわけです。

ただし、に相手がフリーアドレスを使っていたり、使い捨ての等のSIMカードを利用してアカウントを開設していたりする場合は特定が不可能なので、空振りに終わるリスクもあります。ですから、もし費用に余裕があるのなら、日本とアメリカ両方の手続きを並行して進めるやり方をおすすめします。

※1 弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた法律上の制度のこと。弁護士法第23条の2に定められています。

 

名誉毀損訴訟を起こす

発信者が特定できたら、名誉毀損について民事責任と刑事責任の両方から追求します。名誉毀損は親告罪であり、親告罪は被害者からの告訴がなければ検察は起訴できず、結果的に警察も捜査を進めることができません。その点だけ、頭に入れておいてください。

 

①民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたり、加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じての請求になります。その際、ゆきぽんさんは原告側の証人として証言台に立ち、尋問を受けることに。有名YouTuberの裁判ということで、傍聴席には一般の傍聴人やマスコミもやってくることも予想されます。そのため、心身の負担が相当なものになることは覚悟したほうがいいでしょう。

また、損害賠償は相手の支払い能力に大きく左右されるので、「求める金額が全額支払われるのが難しい場合がある」ということは頭に入れておいてください。とはいえ、「書き込みをした本人を突き止め、損害賠償命令を勝ち取った」という事実は、とても意義があること。誹謗中傷コメントの抑止としては効果的だと思います。

 

②刑事責任の追及

加害者に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などでの立件を目指します。刑事責任を追及するのは国なので、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

 

弁護士に相談する際、注意するべきこと


前述のように、プロバイダが保存するIPアドレスのログは、早くて3カ月ほどで削除されてしまいます。誹謗中傷の書き込みが見つかったら、1カ月以内を目安に弁護士に相談したほうがいいでしょう。

なお、YouTubeチャンネルに投稿されたコメントは、管理者の権限で削除することも可能ですが、削除してしまったコメントのログは取り戻せ可能性がありますませんので、絶対に削除はしないでください。法的に有利な誹謗中傷コメントを弁護士がピックアップする場合もあるので、訴訟を起こしたいアカウントの書き込み一覧などを準備してもらえると、やり取りがスムーズに進みます。

 

〈取材を終えて〉

YouTubeの大流行に伴い、グーグルに対する申し立て事例は、今後どんどん増えていくことが予想されます。中には、「アメリカの弁護士資格を持っている弁護士がまわりにいないと難しいのでは?」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の弁護士がアメリカで活動する弁護士を通じて、ディスカバリー制度を活用することも可能です。看過できない誹謗中傷にお悩みの方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

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Profile
福本哲也(ふくもと・てつや)
東京大学法学部、首都大学東京法科大学院を経て、2010年に弁護士登録。2012年より坂東総合法律事務所に入所。学生時代はサッカーに熱中。現在はゴルフとジム通いの日々を送っている。

 

 

Youtube誹謗中傷の法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決

2021.02.08

インターネット上では、「匿名」で情報が公開されることも多いため、ネガティブな書き込みをされたときに、「発信者(書き込みをしている人物)がどこの誰なのか?」を知るのはとても困難です。しかし、だからといって発信者が特定できないままになれば、誹謗中傷を受けた被害者が、その責任を追求することができなくなってしまいます。

そのため、プロバイダ責任制限法では「発信者情報開示請求」という権利を定め、誹謗中傷の被害者に対して、加害者である発信者の特定を可能とする手段を規定しています。ここでは、発信者情報開示請求を行うための要件や方法、流れなどについて説明していきましょう。

 

発信者情報開示請求とは?


先に、「匿名」で発信された情報は、発信者を特定するのが難しいと書きましたが、それはユーザーの側から見た場合の話。サイト管理者やアクセスプロバイダ(インターネットへの接続サービスを提供している会社)の側には、発信者につながる情報が保管されています。そして、その情報を開示してもらえれば、発信者が誰なのかを特定できる可能性があります。このように、サイト管理者やアクセスプロバイダに対して、発信者情報の開示を請求することを「発信者情報開示請求」と呼び、その権利はプロバイダ責任制限法4条1項に規定されています。

なお、発信者情報開示請求は、発信者を特定する手続きであり、書き込みを削除するものではありません。「ネガティブな書き込みを削除したい」という場合は、別途「削除依頼」という手続きが必要になります。


削除依頼に関する記事はこちらから

 

発信者情報開示請求できるのは、どのような書き込み?


発信者情報開示請求の対象となるのは、権利侵害が明らかな場合です。下に、「権利侵害が明らかであると認められる場合」の一例を示しておくので、参考にしてください。

 

権利

権利侵害が明らかであると認められる例

名誉権

社会的な信用・評価を下げるような書き込みがなされ、なおかつ、その書き込みが下記の3つを疑わせる事情がないこと。

①公共の利害に関する事実に関わること
②もっぱら公益を図る目的であること
③書き込まれた事実が真実であること

プライバシー権

個人情報や私生活の情報を暴露する書き込みがなされ、なおかつ、その書き込みが下記の2つを疑わせる事情がないこと。

①私生活上の事実であること
②公開を正当化される事情がないこと

※なお、会社などの法人には、プライバシー権が認められないのが一般的です。

肖像権

撮影や公開を許可していない写真や動画が公開され、なおかつ、その公開が下記の2つを疑わせる事情がないこと。

①私生活上の事実であること
②公開を正当化される事情がないこと

発信者情報開示請求の手続きの流れは?


発信者情報開示請求の手続きをする際は、少なくとも、1.サイト管理者への情報開示請求、 2.アクセスプロバイダへの情報開示請求という2段階の手順を踏むことになります。

「最初からアクセスプロバイダに情報開示請求をしたほうが、話が早いのではないか?」と思われるかもしれませんが、インターネットの仕組み上、これは難しいといわざるをえません。たとえば、ある掲示板に誹謗中傷が書かれた場合、掲示板に書き込みをした人物(発信者)は、発信者が契約しているアクセスプロバイダに接続し、次に、掲示板が契約しているプロバイダに接続することで、掲示板への書き込みが可能となります。

アクセスプロバイダは通常、契約者の氏名や住所を把握していますが、掲示板に書き込んだ発信者がどのアクセスプロバイダと契約しているかは、ほかのユーザーにはわかりません。したがって、まずは掲示板のサイト管理者に対して発信者の情報(IPアドレスなど)を開示してもらう必要があります。結果として、まずはサイト管理者への情報開示請求、次にアクセスプロバイダへの情報開示請求という手順が必要となるのです。

 

    1. サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行う

前述の通り、最初に書き込みがあったサイトの管理者に、発信者の情報を開示してもらいます。ただし、サイト管理者が持っているのは、サーバにアクセスされた履歴やサイトを利用する際に登録したメールアドレス、パスワードだけなので、ここではサーバにアクセスされた履歴、つまりIPアドレスやタイムスタンプ(データを作成、更新した日時を証明するもの)などの情報の開示を求めることになります。

情報開示の請求方法には、裁判を使わない方法と裁判を使う方法があり、裁判を使わない方法では、一般的にテレコムサービス協会の「発信者情報開示請求書」という書式が使われます。この場合、書類をサイト管理者に送ることで開示請求がスタートします。

発信者情報開示請求書を受け取ったサイト管理者は、発信者に発信者情報開示請求書が届いたことを連絡し、開示に同意するか否かを2週間以内に聞き取らなくてはなりません。そして、発信者が同意すれば情報を開示、同意しなければ情報を開示しないとなります。

一方、裁判を使う方法では、仮処分という手続きを使います。仮処分というのは裁判の一種ですが、通常の裁判よりも迅速な手続きで行われ、裁判所が申し立てにおおむね間違いがないと判断した場合は、一定額の担保金を供託することを条件に申し立てが認められます(担保金が用意できなければ、決定が発令されることはなく、供託した担保金は一定の手続きを行うことで返還されます)。

通常の裁判の場合、数カ月から1年以上の時間がかかるケースが多いのですが、この手続きでは、一応こちらの主張が確からしいとなれば申立てが認められるので、1〜2カ月で結論が出るのが特徴です。

仮処分申立書を受け取ったサイト管理者は、発信者情報開示請求書と同様に、発信者に連絡を取り、開示に同意するか否かを2週間以内に聞き取らなくてはなりません。そして、発信者が同意すれば情報を開示、同意しなければ情報を開示しないとなります。しかしながら、裁判所から「仮に開示せよ」という仮処分決定が出れば、発信者の同意が得られなくても、多くのサイト管理者は開示に応じてくれます。

なお、発信者情報開示請求仮処分は、原則としてサイト管理者の所在地を管轄する地方裁判所のみが管轄裁判所となります。ただし、Twitter、Facebook、Googleなどに対して発信者情報開示請求を行う場合、相手方となるのは海外法人であるため(日本法人は日本におけるプロモーションを行っているだけで、サービスの提供主体は海外法人だからです)、最高裁判所規則により東京地方裁判所が管轄裁判所となります。

仮処分の申し立てが認められるには、次の2つの要件を満たす必要があります。

①インターネットの誹謗中傷によって、人格権(名誉権やプライバシー権など)や著作権に基づく権利侵害が明らかであること

②権利侵害が明らかであり、すぐにでも保全しないと権利の回復ができない状況にあること(すぐに消去させないと拡散の可能性があるなど)

 

    1. アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う

サイト管理者からIPアドレスなどの情報開示を受けると、アクセスプロバイダが特定できるため、次はアクセスプロバイダに対して情報の開示を求めます。アクセスプロバイダには、IPアドレスと結びついた契約者情報が保管されているため、ここで情報が開示されれば、匿名だった発信者の身元が明らかになるわけです。

ただし、アクセスプロバイダによっては、発信者情報開示請求の審議状況に関係なく、一定期間が経過するとログ(データ通信の履歴や情報の記録)を削除してしまうところもあります。そのため、この段階ではアクセスプロバイダに審議の結果が出るまでログを保存しておくように請求する必要があります。なお、アクセスプロバイダがログを保存している期間は、おおむね3~6カ月程度と考えてください。

ログの保存請求に関しては、多くのアクセスプロバイダが裁判を経なくても応じてくれるため、アクセスプロバイダに保存してもらいたい情報を指定し、そのログを保存するよう依頼するという流れが一般的です。書類の書式は任意でかまいません。

ログの保存ができた後は、発信者の情報開示請求を行います。情報開示請求の方法は、サイト管理者への開示請求と同様、裁判を使わない方法と裁判を使う方法があり、裁判を使わない方法では、テレコムサービス協会の「発信者情報開示請求書」を用います。ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたり、また通信の秘密に関するものでもあるため、この書式で請求しても、アクセスプロバイダが情報の開示に応じることはまずありません。そのため、アクセスプロバイダにプロバイダ契約者の情報を開示してもらう場合は、裁判所に発信者情報開示請求訴訟を行うケースがほとんどです。

ちなみに、アクセスプロバイダに対する開示請求が、仮処分ではなく通常の訴訟になるのは、ログ保全により投稿者の情報保全ができる以上、急いで開示を認める必要がないとみなされるからです。なお、この裁判の管轄は、原則としてアクセスプロバイダの所在地を管轄する地方裁判所のみとなります。

以上が、発信者情報開示請求のおおまかな流れとなりますが、下にここまでをまとめた図も掲載しておきますので、ぜひ参考にしてください。

 

発信者情報開示請求に必要なものは?


発信者情報開示請求をする場合は、どこにどのような書き込みがあるのかを示す必要があります。そのためには、問題の書き込みがされているサイトの保存が不可欠。もし、書き込みが消されてしまうと、内容の確認ができなくなるため開示請求が認められなくなってしまうからです。次の2点に注意しながら、証拠を保存しておくようにしましょう。

①問題のサイトのURLがスクリーンショット(キャプチャ)画像などから明確にわかること

②問題の書き込みがスクリーンショット(キャプチャ)画像などからきちんと確認できること

保存の方法は、PCで印刷するほか、スクリーンショット(キャプチャ)でも問題ありません。スクリーンショットの場合は、Windowsのパソコンであれば、Alt+PrtScr(Print Screenと表示されていることもあります)。Macであれば、Command+Shift+3で保存できるので、いずれの場合もURLが明確に表示されているようにしてください。スマートフォンにもスクリーンショット機能があるものが多いですが、スマートフォンのスクリーンショットではURLがうまく表示されない場合もあるので、注意しましょう。

 

発信者情報開示請求は自分でやれる?


発信者情報の開示請求を自分で行うことは可能です。ただ前述した通り、アクセスプロバイダが任意で情報を開示してくれることはほとんどなく、開示請求には裁判での対応が必要になります(サイト管理者が任意の開示請求に応じないこともよくあります)。また、アクセスプロバイダが保管しているログの保存期間は3~6カ月程度であるため、書き込みから時間が経ちすぎると、特定が難しくなってしまいます。

以上のことから、法律の専門知識がある弁護士に依頼して、できるだけスピーディに進めるのが得策でしょう。

 

発信者情報開示請求訴訟には、どのくらいの期間と費用がかかる?


裁判所に訴状を提出すると、訴状審査というものが行われますが、通常はこれに3〜7日かかります。訴状審査を通ると、被告(発信者)に対して訴状の送達が行われ、その時点から約1カ月後に第一回目の裁判が開かれます。その後は約1カ月ごとに裁判が開かれ、合計2〜3回行われるケースが一般的です。

費用は、弁護士によって、また量や対象によっても変わってくるためあくまで目安となりますが、25万〜40万円とお考えください。

 

発信者を特定できた後の法的手段は?


書き込みを行った人物を特定するのは「責任を追求するため」なので(中には、特定自体を目的とするケースもありますが)、発信者情報の開示を受けた後は、法的措置によって問題の解決を目指していきます。責任追及の方法は、大きくわけて2つ。民事責任の追及と刑事責任の追及です。

    1. 民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたります。損害賠償を請求する方法としては、内容証明郵便などによる裁判外の手続きと、損害賠償訴訟という裁判上の手続きがあります。

内容証明郵便とは、誰が、誰宛に、いつ、どのような形で手紙を出したのかを、日本郵便株式会社が公的に証明してくれる郵便のことで、記録が明確に残るため、何かを請求する際によく使われます。ただし、それ自体に強制力はなく、送っても無視される可能性があります。

請求を無視された場合は、相手方に対して、名誉毀損、プライバシー侵害などによる損害賠償請求訴訟を提起することになりますが、内容証明郵便は使わず、はじめから訴訟提起をしても問題ありません。訴訟を提起した後は、加害者が損害賠償の支払いに素直に応じれば示談、応じない場合は裁判を通じての請求になるでしょう。

賠償額は、おおむね100万円が上限という印象です。なお、相手の特定にかかった費用には、全額とは限らないものの相手の負担にできる場合も。たとえば、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行った場合、その弁護士費用が損害として認められます。とはいえ、相手が裁判で反論してくるケースもあれば、相手の金銭的な事情で払われないこともありますので、「必ず賠償してもらえるわけではない」ということも覚えておいてください。

    1. 刑事責任の追及

書き込んだ人物に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などで立件してもらうことを指します。刑事責任を追及するのは国の仕事であるため、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

刑事告訴をした場合、警察が自宅の捜索や取り調べといった捜査を行い、検察が起訴するかどうかを判断しますが、前科前歴がない限りは、よくて略式起訴、多くのケースでは起訴猶予(犯罪が成立しているだろうといえるものの諸般の事情を考慮して起訴をしないという判断)となることが多いでしょう。とはいえ、あくまで起訴が「猶予されているだけ」なので、同じ過ちを犯さないための抑止力にはなるはずです。

 

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Profile
清水陽平
法律事務所アルシエン代表
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などがある。

 

2020.12.18

美容院、クリニック、飲食店などの店舗や、中小企業の集客対策として今や欠かせないGoogleのサービス。前回は、Googleマップレビューのメリットと、ネガティブ評価によるデメリットについて説明しました。今回はレビューの削除方法に加え、名誉棄損となるケースとその対処法についても紹介していきます。

 

Googleマップの口コミ・評価は自分で削除できる?


Googleマップは、無料で使える集客ツールとして極めて優秀ですが、口コミ評価が低い場合や、誹謗中傷・悪口のような内容だったりすると、ユーザーにネガティブな印象を与えてしまうという短所もあります。

低評価や良くない投稿は削除してしまえばいいと思いがちですが、Googleのポリシーを見る限り簡単には削除できないようです。
例えば

「店員が無愛想で接客態度が悪かった」

「ラーメンの麺が伸びていてまずかった」

このような内容については、Googleが「口コミは、インターネットユーザーの重要な判断材料になるため、意図的な印象操作は認めない」と定めており、公平性を保つために削除していません。

 

但し、Googleポリシーに反する場合は削除可能


Googleが公開しているポリシーに違反する口コミであれば削除できる可能性があります。

① スパムと虚偽のコンテンツ

② 関連性のないコンテンツ

③ 制限されているコンテンツ

④ 違法なコンテンツ

⑤ テロリストのコンテンツ

⑥ 露骨な性的表現を含むコンテンツ

⑦ 不適切なコンテンツ

⑧ 危険なコンテンツおよび中傷的なコンテンツ

⑨ なりすまし

⑩ 利害に関する問題

参考:Googleマップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー(https://support.google.com/contributionpolicy/answer/7422880?hl=ja)

Googleに削除依頼を行うには、以下2つの方法があります。

①企業、店舗のオーナーとして口コミ削除依頼をする方法

Googleマイビジネスにログインして、該当口コミにアクセスします。「その他アイコン」から「不適切なコメントを報告」クリックします。不適切なコメントの種類などを記載するフォームが表示されますので、不適切だと判断した基準を選んだ上で報告します。

②口コミを見た第三者として削除依頼をする方法

削除したい口コミの右横に表示されるフラグアイコンまたは縦3点アイコンをクリックすると、「ポリシー違反を報告」画面が表示されます。自分のメールアドレスを入力、「違反の種類」を選択し、「送信」をクリックすると報告完了です。

ところが、ポリシーに違反すると思われる口コミを報告しても削除は難しいというのが現実です。オンライン上で削除依頼が認められない場合は、次のステップとして「名誉棄損」などを理由に、裁判所の「削除仮処分」手続による削除請求を行う方法があります。

では、どのような場合に「名誉棄損」と認められるのでしょうか。

 

正当なレビューと名誉毀損の違いとは?


名誉棄損とは?

公然の場で、具体的な事実をあげて、第三者の社会的評価を落とす可能性のある行為を指します。

・公然と

・事実を適示し

・人の名誉を毀損すること

口コミの内容が上記3つの要件の満たしている場合、名誉毀損になる可能性が高いでしょう。
例として

「美容師の〇〇はシャンプーの時に身体を触るなどセクハラが日常茶飯事」

「店員の〇〇は過去に犯罪歴がある」

「あの歯医者は治療ミスを隠蔽している」

など、根も葉もないことを書き込まれた場合、社会的信用の損失により、集客に影響が出たり、売上が低下したりと大きなダメージを被ることになります。最悪の場合、閉店や倒産に追い込まれるケースもあるので、放置せずしっかり対応すべきでしょう。

 

このような場合は法的措置の検討を


▼集客・売上に悪影響が出ている

▼業務に支障が生じている

▼個人情報を晒され精神的ダメージを受けている

中には、口コミの内容がSNSなどを通じて拡散・炎上したケースや、いたずら電話や嫌がらせなどが殺到し業務に支障が出たケースもあります。

Googleではポリシー違反に該当しない内容でも「名誉毀損罪」や「侮辱罪」など、法律に抵触する内容であれば弁護士を通じて削除を依頼することが可能です。また悪質な投稿が何度も繰り返される場合は、「発信者情報開示請求」の手続きが必要になるでしょう。いずれにしても一人で解決しようと思わず、信頼できる弁護士に頼ることも一つの案です。

悪質な投稿を放置しておくと、ほかのユーザーにネガティブなイメージを与えることになります。早急に対応するには、ITやネット被害の知識、経験が抱負な弁護士に任せることが賢明と言えるでしょう。「ネット中傷解決くん」には、口コミサイトや掲示板などで発生したネットトラブルに強い弁護士が揃っています。相談から解決までスピーディーかつ親身になってサポートするので安心してご相談ください。

 

さいごに


今や、ネットにおける風評被害は、店舗や企業のブランドイメージにまで影響するといっても過言ではありません。“たかが口コミ”と思われるかもしれませんが、嘘やデマの情報をそのままにしておくと、悪いイメージが一人歩きし、取返しのつかない事態にまで発展する可能性があります。大切なのは「放置せず定期的に更新する」こと。ネガティブレビューも正しく対処する姿勢が信用につながることもあるので、放置することなく適切に対応しましょう。

 

悪質なGoogleマップレビューの法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決

2020.12.18

今や、他の口コミサイトを凌ぐ勢いで利用率が拡大しているGoogleマップ。掲載料が無料かつ、検索者の活動エリアに準じた結果が表示されるため、飲食店だけではなく、美容院やクリニックなども積極的に登録しています。多くの人の目に留まりやすいというメリットがある一方、誰でも自由に口コミを投稿できることから、悪評や誹謗中傷コメントを書き込まれるケースが後を絶たず、トラブルが急増しています。中には評価を落とす目的で意図的に悪評を書き込むケースもあり、放置しておくと様々な悪影響を引きおこしかねません。今回はGoogleマップの口コミが与える影響や、ネガティブレビューへの対処方法について解説していきます。

 

Googleマップとは


米国Google社が、2005年に開始した地図サービスで、月間アクティブユーザーは約10億人以上とも言われています。地図と検索エンジンの両方で独占に近いシェアを誇っているGoogleは、これらの特性を活かし、2014年からローカル検索用の情報サービス「Google マイ ビジネス」の提供を開始。地図だけではなく、店舗情報や写真、ユーザーの口コミなども掲載可能となりました。ローカル検索とは、検索をした場所によって、検索結果が変わる仕様を指します。例えばPCやスマホでGoogleの検索窓に「カフェ」と入力するだけで、自分が今居るエリアのカフェの情報が表示されます。ユーザーは表示された複数のカフェの中から、口コミ、星の数、評価を見て行きたい店舗を選択できるようになったのです。

店舗側も高い広告費を払わずに、新規ユーザーにPRできるというメリットがあります。ローカル検索は地域密着型のビジネスをおこなっている層から新たな流入経路として期待されています。

 

Googleマップの口コミ機能について


Googleマイビジネスに登録すると、2020年11月現在下記のサービスが無料で利用できます。

・店舗の基本情報(住所、電話番号、営業時間など)を掲載できる
・店舗や商品の写真を掲載できる
・口コミの管理・返信をできる
・予約の空き時間など、リアルタイムの情報を発信できる
・分析情報を閲覧できる

中でも、ユーザーの口コミは企業や店舗側が提供する情報とは異なり、利用者のリアルな感想を知ることができるので、その効果は絶大とも言われています。良い評価の口コミは広告を出すよりも高い宣伝効果になることから、費用をかけずにPRすることが可能です。

他にも

▼  GoogleマップやGoogleのローカル検索の結果はページ上部に表示されるので、ユーザーの目に留まりやすく、新規顧客やリピーターの獲得につながる。

▼  口コミの内容から改善点・問題点を洗い出し、サービスの質向上につなげることができる。

など、さまざまな効果が期待できます。しかし、これらのメリットの陰で、Googleマップによるトラブルも急増しています。

 

Googleマップの口コミが与える影響


Googleマップは、閲覧者が自由に口コミを投稿できるため、悪評・誹謗中傷などが記載されるケースが急増しています。今や、口コミは「店舗・サービスの評価基準」の1つとなっており影響力も大きいことから、ネガティブな口コミを放置しておくと風評被害により売り上げの低下や顧客の減少などの悪影響が生じる恐れがあります。

よくある例として

①思いもよらぬ口コミが投稿される

「店員の態度が悪かった」「量が少ないし味も悪かった」など、良くない感想を書き込まれることも珍しくありません。いくら良い評価の方が多くても、ネガティブな内容の方が記憶に残りやすいということもあり、ネガティブコメントの扱いには注意が必要でしょう。

②口コミに★1つなど低評価を付けられた

コメントがなく★1つだけという評価も度々みかけます。ユーザーが軽い気持ちで投稿したものであっても企業や店舗の評価を下げる要因となります。しかし、このような口コミは、名誉毀損の成立要件である『具体的な事実を挙げている』ものではなく、あくまでも個人の感覚的な感想に過ぎないので違法行為とはなりません。そのため、法的に口コミを削除することは難しいと言えるでしょう。

誰でも批判的な書き込みを目にすると気が滅入るのは当然です。しかし、ネガティブなレビューはマイナス要因だけではありません。なぜなら、ユーザーはリアルな評価を求めており、ポジティブなレビューで埋め尽くされているより、ネガティブなレビューが混ざっているサイトをより信用する傾向にあると言われています。

お客様の声を今後のサービス改善に活かしたり、ネガティブなコメントに対して真摯に対応することは、後々「信頼感」や「安心感」へとつながっていくのでしっかり対応しましょう。

 

ネガティブな口コミへの対処法


▼ 迅速に、誠意ある返信を心がける

Googleマイビジネスには、ユーザーの口コミに返信できる機能があります。商品やサービスの内容に対して批判的な投稿があった場合は、お詫びや今後の改善について迅速に返答しましょう。誠実に対応することで、オーナー側の真摯な対応が記憶に残り、悪い口コミの拡散を防ぐ効果があります。その際、注意したいのができるだけ機械的な返信にならないようにすること。定型文のような心のこもっていない返信は逆効果になることがあります。

▼ 情報・口コミを充実させる

ネガティブな投稿、低評価があったとしても、それを上回る質の高い口コミがあれば、ユーザーの印象も変わってきます。また、来てくれたお客さまに口コミの投稿をお願いすることも良策です。お客さまとのコミュニケーションにもつながるので積極的に声かけをすると良いでしょう。但し、クチコミを投稿した人に対して、料金の割引やその他特典などのサービスを提供する事はGoogleのポリシー違反になるため注意が必要です。

 

さいごに


今回は、Googleマップのネガティブな口コミへの対処法について説明しました。そして最近増えているトラブルが、事実無根の悪評を書き込むなど、同業他社からの嫌がらせ投稿です。営業妨害にまで発展するケースも多々報告されています。次回はGoogleマップレビューの削除方法や、名誉棄損にあたる例について解説していきます。

 

悪質なGoogleマップレビューの法的対応も、「ネット中傷解決くん」で弁護士を探して解決

2020.11.17

幼い頃からモデルや子役として活躍し、3歳からはブログを9歳からはTwitterをはじめた春名風花さん。大人顔負けのつぶやきが話題になり多くのフォロワーを獲得する一方で、ネットの世界で一躍知名度を上げた“春風ちゃん”には、多くのアンチから誹謗中傷の書き込みがされるようになる。そうしたネットの誹謗中傷を巡る春名さんの長い戦いが、今年の7月16日に異例ともいえる高額での示談という形で終結。子役時代から10年以上にわたる誹謗中傷との戦いについて、春名さんに語ってもらった。

 

警察では解決できない事件


−−春名さんは小学生の頃からSNSやネットでの誹謗中傷と戦ってこられました。そうした中で、裁判をしようと決めたことにはどのようなきっかけがあったのですか?

春名:たとえばネットの掲示板に晒されてしまった実家の住所を見て、実家や通っている小中学校の近くまで来る人がいたり。所属事務所やテレビ局、出演した劇場などにクレームの電話もたくさんあって、殺害予告や爆破予告までされたり。SNSでの誹謗中傷がどんどんエスカレートして、当時は私だけなく家族や友人、お仕事で私を起用してくれる人たちも巻き込んでしまうような、大きな実害が出ていました。もちろん母親と一緒に何度も警察に相談しましたが、「相手が特定できないので難しい」「事件になっていないので」などと言われてしまって。警察の力でも難しいんだったらどうすればいいのかと考えたときに、「弁護士さんに依頼すればいいのか」と思いついたんです。ちょうど高校生になっていじめや虐待に関する報道番組やイベントでお話する機会が増えていたときで、皆さんの前で「無料で相談に乗ってくれる弁護士さんもいますからね」と話している自分が、一度も弁護士さんに相談していないなと。そんな気づきもあって、弁護士さんを探し始めたんです。

 

−−実際に怖い思いをして警察に相談をしても解決できない。そうしたことが何度もあったのに、弁護士に相談するまでは何年もかかったわけですね。

春名:弁護士さんの存在は別世界のものでしたし、警察に行けば助けてもらえると思い込んでいました。だから警察でも解決できないと知ったときはとてもショックを受けたのを覚えています。小中学生の頃の爆破予告や殺害予告などは、本来なら事件化できるケースでもあったようですが、当時は警察の方がまだTwitterを知らなかったり、そもそもネット犯罪を扱った経験がまったくないような状態でしたから。警察のなかにはとても親身になってくれる方もいましたが、「芸能人なんてやっているからじゃない」というようなことを言われたこともありました。当時はもう警察に相談しても仕方がないという気持ちになっていましたが、そうはいっても弁護士さんに相談することへのハードルも高かった。お金もどれくらいかかるかわからないし、ネットの事件に強い弁護士さんがいるとも思っていませんでした。

 

頼りになる弁護士という存在


−−そうした状況のなかで、サイバーアーツ法律事務所の田中一哉弁護士に依頼された経緯は?

春名:当時はネット関係に強い弁護士さんの情報などが少なくて苦労しましたが、インターネットを使って自分で調べて田中先生に行き着きました。海外の企業であるTwitter社と法的に戦った実績があるうえ、それを請け負ってくれる弁護士さんは、当時は日本に数人しかおられなかったように思います。

 

−−実際に田中弁護士に相談をしてみてどうでしたか?

春名:最初はメールで連絡をさせてもらったのですが、法的に何ができて何ができないか、費用はどのくらい必要かなど、わかりやすく教えていただきました。誹謗中傷の書き込みも見てもらい、どの書き込みが侮辱罪や名誉毀損罪に該当するのかも教えてもらって。田中先生からは「裁判で勝訴しても相手に支払い能力なければ費用が無駄になることもあります。それでも進めていいですか」というお話もありましたが、「裁判をする」という強い決意と先生のお話を聞いての安心感もあり、実際に依頼することを決めました。

 

−−ネット誹謗中傷での裁判は日本ではまだ少なく、ましてや芸能人となると初めてのことだったのではないかと思います。裁判に至るまでの葛藤や、ご家族や仕事関係者など周囲の方々の反応について教えてください。

春名:もちろん葛藤はありました。仕事関係では「女優業をやりたいなら色がついてしまう裁判は避けた方がいい」とアドバイスをしてくださる方もいましたし、家族の中でも父は裁判をすることがとても心配していました。でも、被害の話をするたびにアンチの人たちから「自作自演」などと言われてくやしい思いもしてきましたし、すでにクレームの電話などで仕事にも悪い影響が出ているのだから、むしろ裁判をして被害を止める方が仕事もやりやすくなるんじゃないかなと。それに、芸能人だからって意見を言わないのが当たり前という芸能界の風潮が、やっぱりおかしいんじゃないかという気持ちもあったんです。

 

−−今回の裁判では春名さんのお母さんも原告になっておられますね。

春名:母は警察に相談するときもいつも一緒でしたし、誹謗中傷で悲しい思いをしたり、仕事のチャンスを失って悔しい思いをする私の気持ちをとてもよく理解してくれていました。裁判を起こすと言っても当時はまだ高校生でしたし、今回、訴えた人から受けていた誹謗中傷が母にも関係する内容だったこともあり、一緒に原告になってくれたんです。今回の裁判では、そんな母の後押しも大きかったですね。

社会的な意義のある示談


−−春名さんが田中先生に依頼された2018年10月から、示談が成立した2020年7月16日まで、2年近い年月がかかっています。その間に大変だったことなどはありますか?

春名:特にネット関係の訴訟はスピードが大事なこともあり、田中先生とは主にメールで打ち合わせをさせてもらいました。手続きなどもすべて先生にお任せしていたので、原告としてやることというと、同意書や陳述書などいくつかの書類を書くくらい。また、警察に相談していたときとは違い、今がどういう状況でどのように手続きや裁判が進んでいくのか、田中先生からは逐一報告もしてもらえたのでとても安心感がありました。一方で、今回の裁判では2018年の12月にTwitter社からIPアドレス等の開示を受け、それをもとに3つのプロバイダーに対して契約者情報の開示を求める訴えを起こしたのですが、その裁判にほぼ1年がかかりました。いつ終わるかわからない長い裁判の結果を、ずっと待っていなくちゃいけない。そうして過ぎていく時間については辛いものがありました。

 

−−今回の裁判では、一般的な誹謗中傷による名誉毀損の損害賠償額としては高額な315万4000円という金額での示談も話題になりました。春名さんが示談に応じられた経緯や理由について教えてください、

春名:プロバイダーから契約者情報をいただいた後、こちらからは名誉毀損と侮辱ということで、民事での損害賠償請求と刑事告訴を起こしました。実は示談の申し入れは2度あって、最初は情報開示の裁判の最中に、「お金は払いませんが住所と名前を教えるので示談にして欲しい」と。それでは反省にもなっていないしもちろんそこでは裁判を継続して。その後、刑事での裁判に進むタイミングで2度目の申し入れがあったんです。私自身としては、裁判できちんと罪を認めてもらったうえで他の被害への関与も追求したいという思いもあり、示談はしたくありませんでした。とはいえ、裁判で勝ったとしても、今の法律では名誉毀損罪(3年以下の懲役もしくは罰金50万円以下)でも侮辱罪(1日以上30日未満の勾留もしくは1000円以上1万円未満の金銭の支払い)でも相手に与えられる罰は軽く、しかも今回の相手は初犯なので不起訴になる可能性すら高かった。田中先生からも「高額な金銭という目に見える罰を与えることも大事。この示談には社会的な意味もあると思います」と言っていただき、最終的に示談に応じることを決めたんです。

 

−−確かに多くの報道がされましたし、今回の春名さんの裁判が社会的に与えた影響は大きかったと思います。春名さん自身は、周囲の人たちや社会の変化を感じていますか?

春名:今回の示談をたくさん報道してもらったことで、同じように誹謗中傷に悩むたくさんの方が、InstagramのDMなどで「勇気が出ました」といったメッセージを送ってきてくれました。私の裁判だけでなく、芸能界で悲しい事件が続いたこともあり、最近ではネットでの誹謗中傷にアクションを起こす芸能人の方も増えているように思います。一般人であろうが芸能人であろうが、誰かを誹謗中傷するのはよくないこと。「有名税」で許されるような社会が少しでも変わるきっかけをつくれたのなら、裁判をやって良かったなと思います。

 

誹謗中傷で傷ついている人へ


−−今回の春名さんのように誹謗中傷の当事者になってしまった場合、どのように対処するべきなのでしょうか。ご自身の経験を踏まえてアドバイスをいただけますか。

春名:ネットなどで誰かへの誹謗中傷を書き込んでいる人は、あまり何も考えていないのかもしれません。でも、書かれた方は本当に心を抉られるような思いをしていて、絶望的な気持ちにすらなってしまいます。今回の私の経験から言えるのは、やっぱり信頼できる弁護士さんに早めに相談した方がいいということ。解決できる可能性や道筋を示してもらうだけで安心もできますし、実際に戦うことにも大きな意味があると思うんです。今回、僕の裁判がニュースになって、多くの人に「勇気をもらった」と言ってもらったように、あなたの行動が社会を変えるきっかけになるかもしれない。おかしいと思うことにみんなが声を上げることで、法律が変わったり警察が捜査しやすくなったりということもあると思うので、ぜひ行動できる人は行動して欲しい。もちろんそうは言っても、「そんなの無理だよ」という人は「戦わない」という選択をしてもいいと思います。何よりも大切なのは、現実世界の人間関係を充実させること。私の場合は何があっても「大丈夫」と言ってくれる家族や友人、仕事仲間がいましたが、そうした存在がなければ、弁護士さんに相談する前に心が折れてしまっていたかもしれません。また、誹謗中傷を受けて自信や自己肯定感を失ってしまうと、精神的なダメージを一気に受けてしまいます。だから特に誹謗中傷などで傷ついている人は、何でもないような日常の中でも、できるだけ自分で自分のことを褒めてあげて欲しいなとも思います。

 

−−方で、ネットなどで誹謗中傷を行う側の人たちに向けてメッセージはありますか?

春名:たとえばTwitterを見ていて腹が立ったとか、誹謗中傷を書く人は反射的に書き込んでいるのだと思います。でもその向こうにいる相手は人間で、その言葉はしっかりと届いてしまう。たとえば相手が有名な人であれば、あなただけではなくて何十人、何百人という人から辛辣な言葉が届くかもしれない。そうすると実際に自ら命を断ってしまう人もいるし、逆に誹謗中傷されている側が戦おうと思えば、数百の誹謗中傷を代表する一人として訴えられることもあるわけです。だから軽い気持ちで書き込んで欲しくないし、目の前の人に言えないような言葉はSNS上でも使って欲しくないと思いますね。

 

−−最近はブログやnote、YouTubeなどを中心に情報を発信されていますが、春名さんのネットやSNSとの付き合い方はどのように変化していますか?

春名:大学進学を機にTwitterの更新を止めてみて思ったのが、これまで「かなり誤解されていたんだな」ということでした。特にYouTubeでの発信を始めてからは、これまでに持たれていた尖ったイメージとのギャップもあって、みなさん優しい目で見てくださっている気がします。Twitterは発信力や人を集める力は強いけれど、その分だけ誤解が生まれて広がっていく可能性も高くなるのかもしれません。今後は色々と変わっていくかもしれませんが、今はブログやnoteのような長い文章で伝えられるツールやYouTubeを使って、自分の活動を伝えていきたいと思っています。

 

−−最後に、今後の女優としての活動について抱負などをお聞かせいただけますか。

春名:いまは大学に通いながら、学校側に届けを出して許可を受けながら芸能活動をしています。新型コロナウイルスの影響で延期されてしまったのですが、舞台への出演も決まっていますし、今後も女優として頑張っていきたいと思っています。これまでに色々とあったことは女優人生を考えるとハンディになるかもしれませんが、海外では女優さんも当たり前のように自分の意見を口にしますし、個人の意見と作品は別物とみんなが捉えています。日本もそうなればいいなと思いますし、そのために僕の経験や行動が少しでも影響を与えられると良いなとも思います。

 

ネット中傷解決くん」で弁護士を探す。

2020.11.13

ネット中傷への対処方法にはどんなものがある?


一昔前までは、「ネットに書かれたことは消せない、無視するしかない」と言われることが多くありましたが、それは正しくありません。ネットの書き込みは適切な手順を踏めば削除できる可能性があります。また、ネットには「匿名性」があるともいわれますが、プロバイダ責任制限法と呼ばれる法律を活用すれば、誹謗中傷を書き込んだ人物を特定することも不可能ではありません。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか? まずは、書き込みを消すための「削除依頼」と、書き込みした人物を特定するための「開示請求」について、説明しましょう。

  • 書き込みを消す「削除依頼」

インターネット上に自身の権利を侵害するような情報(プライバシー侵害、名誉毀損など)があった場合には、本人もしくは代理人からサイト管理者やホスティングプロバイダ(データを保管している会社)などに対して削除の依頼をすることが可能です。この手続きは、プロバイダ責任制限法のガイドラインにも定められており、「削除依頼」あるいは「送信防止措置依頼」と呼ばれます。ちなみに、削除依頼の主な対応パターンは次の3つとなります。

 

    1. オンラインフォームなどからの削除依頼

サイトの中には、オンラインフォーム、メールフォームを準備していたり、クリックするとメールソフトが立ち上がるようになっていたりするものがありますが、その場合はオンラインフォーム、メールフォームなどから削除依頼をすることができます。

 

    1. テレコムサービス協会の書式による削除依頼

テレコムサービス協会とは、情報通信に関わるインターネットサービスプロバイダ、ケーブルテレビ会社、回線事業者、コンテンツプロバイダ、ホスティングプロバイダなどの幅広い事業者が会員となっている一般社団法人です。活動の一つとして、プロバイダ責任制限法関係のガイドラインの作成・公表を行っており、そのガイドラインに従ってサイトの管理者やプロバイダに削除依頼(送信防止措置依頼)をする方法もあります。サイトの管理者やホスティングプロバイダは、書類を受け取った後に、書き込みをした人物(発信者)に対して書き込みの削除の可否を尋ねますが、7日間以内に反論がなければ書き込みが削除されるという流れが一般的です。

 

    1. 裁判(仮処分)での削除命令

削除依頼をしても削除に応じてもらえない場合、削除仮処分という裁判手続きを検討するのも一つの方法です。仮処分というのは裁判の一種ですが、通常の裁判よりも迅速な手続きで行われ、裁判所が申し立てにおおむね間違いがないと判断した場合は、一定額の担保金を供託することを条件に申し立てが認められます。

通常の裁判では数カ月から1年以上の時間がかかることが多いですが、この手続きでは1〜2カ月で結論が出ます。ただし、裁判手続きである以上、法律に基づいた主張やそれを裏付ける証拠の提出も必要となるため、誰でも簡単にできるというわけではありません。

 

  • 書き込みした人物を特定する「開示請求」

前述したように、ネットには「匿名性」があるといわれますが、ユーザーの側から見た場合は匿名でも、サイト管理者やインターネットサービスプロバイダ(インターネットへの接続サービスを提供している会社)の側には、投稿者につながる情報が保管されています。その情報を開示してもらうことで発信者が誰なのかを特定できる可能性があります。このように、サイト管理者やインターネットサービスプロバイダに対して、発信者情報の開示を請求することを「発信者情報開示請求」と呼び、その権利はプロバイダ責任制限法4条に規定されています。

なお、発信者情報開示請求では、サイト管理者とインターネットサービスプロバイダのそれぞれに開示を求める必要があります。

 

    1. サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行う

まず、サイト管理者に対して発信者情報開示請求を行いますが、サイト管理者が持っているのは、サーバにアクセスされた履歴やサイトを利用する際に登録したメールアドレス、パスワードだけです。したがって、ここではサーバにアクセスされた履歴、つまりIPアドレスやタイムスタンプといった情報の開示を求めることになります。削除依頼と同様、テレコムサービス協会のサイトには発信者情報開示請求書という書式が用意されているので、そちらを活用することも可能です。

 

    1. インターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う

サイト管理者からIPアドレスなどの情報開示を受けると、インターネットサービスプロバイダが特定できるので、次はインターネットサービスプロバイダに対して情報の開示を求めます。インターネットサービスプロバイダには、IPアドレスと結びついた契約者情報が保管されているため、ここで情報が開示されれば、匿名だった発信者の身元が明らかになるわけです。

 

ただし、発信者に関する情報は個人情報にあたり、また、通信の秘密に関するものでもあるため、サイト管理者、インターネットサービスプロバイダとも、任意に情報の開示に応じることはまずありません。そのため、①サイト管理者がIPアドレスの開示に応じてくれない場合は、裁判所に仮処分の申し立てを行い、②インターネットサービスプロバイダにプロバイダ契約者の情報を開示してもらう場合は、裁判所に発信者情報開示請求訴訟を行う、といった手順が必要になるケースがほとんどです。

削除依頼や情報開示が認められるために必要なことは?


削除依頼や開示請求の対象となるのは、具体的な権利侵害(名誉権の侵害、プライバシー権の侵害、肖像権の侵害など)がある場合です。

「A社」や「Bさん」のように、名称を伏せ字やイニシャルなどにすれば権利侵害にならないともいわれることはありますが、ペンネームやビジネスネーム、源氏名であっても、「その人」だと認識できれば、削除依頼や開示請求が認められます。

 

対処する際は、弁護士に相談したほうがいい? また、そのメリットは?


削除依頼も発信者情報の開示請求も、自分で行うことは可能です。ただ前述した通り、サイト管理者やプロバイダが任意で情報を開示してくれることはほとんどなく、裁判での対応が必要になります。また、インターネットサービスプロバイダが保管しているIPアドレスなどの保存期間は3カ月程度です。書き込みから時間が経ちすぎると、特定が難しくなってしまいます。

以上のことから、法律の専門知識がある弁護士に依頼して、できるだけスピーディに進めるのが得策でしょう。なお、弁護士に依頼することのメリットとしては、次のことが挙げられます。

    1. 法的根拠に基づいた素早い対応が可能

削除申請や情報開示を行う際は、サイトの管理者やインターネットサービスプロバイダに対して、どのような理由で、どのような権利侵害にあたるかなどを正確に伝える必要があります。弁護士を介してのやりとりであれば、法的根拠を示しながら削除依頼ができるため、早期解決の可能性が高まります。

 

    1. 複雑かつ面倒な手続きを任せられる

仮処分申請をしたり、訴訟を起こしたりといったように、法的手段によって問題を解決していくケースが多いため、自分一人で対処するにはかなりの時間と労力を要します。それを考えれば、裁判所、警察署などへの複雑な手続きを任せられるのは、大きなメリットといえるでしょう。

 

    1. 何ができて、何ができないかの判断ができる

ネット中傷に対応する際の目的は、①削除を求めたい、②投稿者を突き止めたい、③投稿者に損害賠償請求したいという3つにわけられますが、「自分のケースはどの方法をとるのがいいか」「投稿者を特定できそうか」「どのくらい時間がかかりそうか」などを自分で理解・判断するのは難しいものです。弁護士に依頼・相談することで、それらが把握できるようになることも、メリットの一つといえるのではないでしょうか。

 

 

相談する場合、前もって準備しておくことは?


 特別なことは必要ありませんが、「どこに何が書かれているのか」をしっかり伝えられる準備はしておいてください。その際、該当ページのURLを用意しておくと、弁護士が被害状況を判断しやすくなるので、対応がスムーズになるでしょう。

なお、SNSで誹謗中傷があった場合、アカウント自体を消してしまう方もいますが、それをやってしまうと、被害状況が確認できないだけでなく、証拠がなくなってしまいます。「早く削除したい」という気持ちはわかりますが、必ず削除する前に相談するようにしてください。

証拠を残す場合は、PCで印刷するほか、スクリーンショットを撮る場合は、Windowsのパソコンであれば、Alt+PrtScr(Print Screenと表示されていることもあります)。Macであれば、Command+Shift+3で保存できます。いずれの場合も、URLが明確に表示されているようにしてください。スマートフォンにもスクリーンショット機能があるものが多いですが、スマートフォンのスクリーンショットではURLがうまく表示されない場合もあるので、注意しましょう。

相談から解決までのおおまかな流れは?


おおまかな流れは、次のようになります(②と③は並行して進む場合がほとんどです)。

①法律相談で状況を伝えて、解決策を探る
②弁護士からサイト管理者への削除依頼を行う
③発信者情報開示請求を行い、加害者を特定する
④法的措置をとる

①〜③についての詳細はすでに説明した通りなので、ここでは④について説明していきましょう。

書き込みを行った人物を特定するのは「責任を追求するため」なので(中には、特定自体を目的とするケースもありますが)、③で発信者情報の開示を受けた後は、法的措置によって問題の解決を目指していきます。責任追及の方法は、大きくわけて2つ。民事責任の追及と刑事責任の追及です。

    1. 民事責任の追及

損害賠償(慰謝料)の請求などがこれにあたります。損害賠償を請求する方法としては、内容証明郵便などによる裁判外の手続きと、損害賠償訴訟という裁判上の手続きがあります。加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じての請求になるでしょう。

    1. 刑事責任の追及

書き込んだ人物に刑事罰を与えるため、名誉毀損罪などで立件してもらうことを指します。刑事責任を追及するのは国の仕事であるため、この場合は警察や検察に告訴状、被害届などを提出することになります。

損害賠償請求が認められた場合、どのくらい賠償してもらえる?


これまでのネット誹謗中傷案件をみてみると、裁判で認められる損害賠償額は、おおむね100万円が上限という印象です。ただし、相手の特定にかかった費用については、相手の負担にできる場合も。たとえば、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行った場合、その弁護士費用が損害として認められます。

とはいえ、相手を特定できれば必ず賠償してもらえるというわけではありません。裁判で反論してくるケースもあれば、相手の金銭的な事情で払われないこともありますので、その点についても覚えておいてください。

 

弁護士への依頼費用のだいたいの相場は?


弁護士への依頼費用は、依頼先や被害の内容、サイトによって変わってきます。下に紹介した金額は、弁護士によって、また量や対象によっても変わってくるためあくまで目安と考えてください。

削除依頼の代行(裁判外)    : 1~10万円
裁判(仮処分)の申し立て    :25万〜40万円
契約者情報開示請求                :25万〜40万円
損害賠償(民事訴訟)の請求 :20万円程度


弁護士への依頼は敷居が高いと思われがちですが、中には無料相談を受け付けているところもたくさんあります。そして、相談することでネット中傷が解決できる可能性も、決して低くはありません。まずは自分が置かれている被害の状況を相談するところからはじめてみてはいかがでしょうか。
 

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Profile
清水陽平
法律事務所アルシエン代表
2007 年弁護士登録、2010 月11 月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、ネット炎上に関する案件の取扱いが多く、同分野の弁護士向け講師として招かれることも。総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となっており、著書に「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル」などがある

2020.11.12

スマートフォンの機能向上により、誰でも簡単に写真や動画を撮ることができるようになりました。それに伴い増えているのが、無断掲載によるトラブルや盗撮被害です。

電車やお店の中で撮影された画像や動画が、コメント付きでインターネット掲示板にアップされ炎上したケースが多発しています。今回は、肖像権侵害にあたるケースや、被害にあったときにどうすればいいかを解説していきます。

 

 

何気なくネットにアップした画像が炎上騒ぎに


先日、タレントでモデルのローラさんが、Instagramのストーリーにアップした一枚の写真がちょっとした騒ぎになりました。

「ひさしぶりの電車」とのコメントと共に投稿された写真の背景には、一般の乗客の姿が。そもそも電車内での自撮り行為自体がマナー違反なのに加え、写り込んだ乗客の顔を一切加工せず、位置情報まで表示されていました。

ローラさんのフォロワーは、世界中で約550万人と言われており、影響力の強い彼女が、一般人の顔がはっきりと写り込んでいる写真を公開したことに対して多くの批判が寄せられました。

この事例は、ローラさんの配慮が足らなかったことが原因ですが、誰もが悪意はなくても「つい」「うっかり」やってしまいがちなNG行動でもあります。しかし一枚の写真をきっかけに犯罪に巻き込まれるケースもあることから、肖像権は決して軽視されるものではありません。では、肖像権とは一体どのようなものを指すのでしょうか。

 

肖像権とは?


肖像権とは、承諾なしに自分の容姿(顔や身体など)を撮影されたり、公表されたりすることを禁止する権利です。人格権の一つとして認められています。ただ、著作権のように明確に法律で定められたものではないため、肖像権侵害にあたるかどうかの判断が難しく、肖像権侵害それ自体では犯罪行為にはなりません。

肖像権は大きく分けて、「プライバシー権」と「パブリシティ権」2つの側面があります。後者に関しては芸能人や著名人に関する事柄なので、今回は省きますが、「プライバシー権」は一般の方にも大いに関係してくるので詳しくみていきましょう。

 

▼プライバシー権

個人の私生活に関わる事柄をみだらに公開されないようにする権利です。もともとは、アメリカで「そっとしておいてもらう権利」として定義されていました。「誰が、いつ、どこで、何をしていたか」といった個人の行動情報はプライバシーに守られるべきで、第三者はむやみにそれを侵してはならないとされています。

 

▼肖像権侵害になるケースとは?

① 被害者に断りもなく写真や動画を撮影した
② 被害者の顔や身体がハッキリ写っている(本人だと特定できる)
③ ネット・SNSなど、拡散されやすい場所で公開されている
④ 公開されたことにより、被害者が精神的ダメージを被った

これらの条件が揃った時、肖像権侵害が認められる傾向にあります。しかし、肖像権は法律上に明確な規定があるわけではないので、肖像権侵害を理由に刑事罰に問うことはできません。ただ民事上の責任は発生するので、投稿者に対して差止要求や損害賠償を請求することは可能です。

 

一般人への肖像権侵害の例 ~街の人事件~


某有名ハイブランドのTシャツを着ていた女性を、ストリートスナップのカメラマンが無断で撮影、WEBサイトに掲載したことが発端となったこの事件。女性が着ていたTシャツには胸元に大きく「SEX」という文字がデザインされていました。それを見た人が掲示板に女性を揶揄するようなコメントと共に写真をアップしたところ、誹謗中傷の書き込みが殺到。被害者の女性は友人から自分の写真がネット上に掲載された上に炎上していることを聞き、運営元である日本ファッション協会等に対して抗議をしました。

問題となった写真はすぐさまWEBサイトから削除されましたが、すでにコピーされた写真が出回っており、再び炎上することとなりました。被害者女性は、肖像権やプライバシーの侵害を理由に日本ファッション協会等に対し、330万円の損害賠償を求めました。

裁判の結果、一般の『写り込み』とは異なり、被害者の全身像に焦点を絞り込んでいることや、被害者が受けた精神的苦痛を考慮し、東京地裁は肖像権の侵害を認定。損害賠償として35万円を支払うよう命じました。
東京地裁 平成16年(ワ)第18202号(「街の人」肖像権侵害事件)

この事件のように、本人が全く気づかないうちに撮影された写真が意図せぬ形で炎上してしまう例以外にも、友人が断りなくSNSなどにアップした写真をもとに、個人情報が特定されたり、ストーカー被害にあうなどトラブルに巻き込まれる例も増加しています。

 

被害にあわないためには


① 仲間内や大多数で集まる場合は、写真をアップしてほしくないことをきちんと伝える。

例えば友人がFacebookやInstagramに友人同士の写真を沢山アップしているようであれば、自分の顔が写っている写真は避けてほしいと予め伝える。

② 電車や街中などで不審な動きをしている人がいないか注意する。

不自然にスマホをこちらに向けてきたり、あやしい動きをしている人がいれば、写らない角度に移動する、顔を見せないなどの自衛策も効果的です。

しかし、写真や動画が公開されて初めて被害に気づくことが多く、未然に防ぐのは難しいのが現状です。それでは自分の画像が悪用されていたらどうすればいいのでしょうか。

 

肖像権侵害を受けた場合の対処法


▼ 削除依頼

投稿者が知人などの身近な人であれば、削除をお願いして解決する場合もあります。しかし、投稿者が不明、あるいは削除してもらえない場合は、サイトの管理者に肖像権侵害の事実を伝え、削除要請を行います。

 

▼ 弁護士に相談

任意の削除要請に応じてもらえない場合は、弁護士を通じて法的手段をとることも選択肢の一つです。肖像権侵害は、名誉を傷つけられるだけではなく、投稿された画像を元に誹謗中傷が集まるなどの二次被害につながることがあるので、速やかに削除することが必要です。

しかし、前述のとおり肖像権侵害には明確な定義がないため、どこからが侵害なのか判断が難しいのが実情です。判断に迷った場合は一人で解決するのではなく、ITやネット被害の知識、経験が抱負な弁護士に任せることが賢明と言えるでしょう。「ネット中傷解決くん」には、ネットトラブルに精通した弁護士が揃っています。投稿者を特定する「情報開示請求」や、差し止め請求、損害賠償請求など、状況に応じたアドバイスを行います。

 

さいごに


今の時代、スマホで何気なく撮影した写真1枚にも、個人につながるさまざまな情報が含まれています。ふとしたきっかけでネットにアップされた写真をもとに個人情報がバレてストーカー被害にあう恐れもあります。自分の写真がSNSなどに無断でアップされてしまった時は放置せず、経験豊かな弁護士に相談し、速やかな解決を目指しましょう!